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文部科学省

スクールリーダーの資料室 自ら学ぶ力を育てる初等・中等教育の実現に向けて 〜将来を生き抜く力を身に付けるために〜 2019年4月3日 公益社団法人 経済同友会

NEWトピック教育課題

2020.02.19

2.テクノロジーを活用し、学びの質を高めるための規制・制度改革

 子供たちの学びの質を高めるためには、テクノロジーの活用による、学びの効率化と教員の働き方改革が不可欠である。しかしながら、学校におけるICT環境の整備とテクノロジーの活用は、社会全般に比して大きく遅れている。

(1)年齢主義から修得主義への転換
 従来は、一人ひとりの進度・理解度に応じた学びを提供するには途方もないマンパワーが必要だったが、テクノロジーを活用することで、一定の領域においては、指導の個別化と子供たちの学びの効率化を図れるようになり、いずれは一人ひとりに最適なカリキュラムをAIが導き出すようになる。また、例えば歴史の年号等、暗記しなくとも検索すれば直ちに調べられる情報も多くなった半面、自分が関心を持った情報にしかアクセスせず、その真偽や大局的な観点からの検証を経ないまま、信じてしまうという問題が生じている。

 こうした中、自ら適切にゴールを設定するための基礎的な知識構造と読解力の重要性がこれまで以上に高まっている。また、AIの普及が加速する中、革新の進む技術を適切に活用するための倫理観や、AIに代替されない能力を発揮するためのリベラル・アーツにつながる全人的な教育の基礎も義務教育課程において身につける必要がある。

 

 学校教育法第17条は、義務教育の範囲を年齢で定め、同施行規則は別表において、各教科等それぞれの授業時数や各学年におけるこれらの総授業時数の標準を定めているが、スタディ・ログの活用により、一人ひとりの進度・理解度をより精緻に把握することが可能になった現在、こうした一律の定めは撤廃すべきである。また、将来にわたり個々人の能力を最大限発揮させる観点から、文部科学省は、いわゆる飛び級の制度化や原級留置の運用についても改めて検討し、本人の修得レベルに応じた教育を提供すべきである。

 2016年に制定された義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律は、附則において、「施行後三年以内にこの法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づき、教育機会の確保等の在り方の見直しを含め、必要な措置を講ずる」としている。同条項に基づく見直しに際しては、年齢主義に基づき、16歳以上を「学齢期を経過した者」として区分するのではなく、小学校高学年以降、修得した基礎学力の状況に応じた学年に在籍し学習の機会を得られるようにすることで、人生を通じて一人ひとりがその能力を最大限発揮するための礎となる義務教育制度へと変革すべきである。

(2)遠隔教育に関する規制の緩和とICT環境の整備
 現行制度は、遠隔授業を「合同授業型」「教師支援型」「教科・科目充実型」の3つの類型に分けており、「合同授業型」および「教師支援型」においては、受信側の教室に、免許外教科担任を含む当該教科の免許状を保有する教師が立ち会うことを前提としている。一方「教科・科目充実型」は、当該教科の免許状の有無を問わず当該学校の教師が立ち会っていれば実施可能で、生徒の多様な科目選択を可能とすることなどを目的に、高等学校においてのみ認められている。

 しかしながら、免許外教科担任の教科別の許可件数を見ると、所有免許状教科と関連が深く、相応に専門性のある教科を担当しているとは言えない。こうした状況を踏まえれば、免許外教科担任が立ち会っていることと、当該教科の免許状を有しない当該学校の教師が立ち会っていることの間に合理的な差は認められない。

 文部科学省は、中学校においてプログラミングの内容が倍増される2021年度に先立ち、2020年度までに遠隔教育の推進に向けた施策方針を見直し、高等学校同様、小・中学校においても、ニーズに柔軟に対応して「教科・科目充実型」の遠隔授業を実施可能にすべきである。

 また、学校におけるICT環境の整備については、2014〜2017年度は毎年1,678億円(総額6,712億円)、2018年度からは同1,805億円の地方財政措置を講じてきたが、地方公共団体においては社会保障等の支出が優先され、教育現場のICT化は進んでいない。こうした現状を踏まえ、文部科学省は、総務省と連携し、生徒の所有するICT機器等も活用しながら(BYOD)、学習者用端末1人1台かつWi-Fi接続を可能にするとともに、互換性、価格等を考慮した標準仕様や効率的な機器の調達方法等を示すべきである(図表1、2)。なお、企業は、ICT支援員等の人材供給に協力する。

(3)オンライン結合制限規定等の見直し
 行政機関個人情報保護法はオンライン結合を禁止していないにもかかわらず、多くの地方公共団体ではオンライン結合が制限されていることから、総務省は、『個人情報保護条例の見直し等について(通知)』(平成29年5月19日)において、地方公共団体においても、同法の趣旨を踏まえて個人情報保護条例の見直しを行うなど適切に判断することを求めている。しかしながら、市区町村等において同条項の抹消が進んでおらず、学校現場におけるクラウドサービスの利用を抑制している。

 総務省は、条例改正が進まない理由を調査し、改めて適切な対応を行うべきである。また、文部科学省は、2019年度中に行うとしている教育情報セキュリティポリシーガイドラインの見直しを前倒しするとともに、免許状更新講習規則第4条を改正し、同内容を研修の必修項目とすべきである。

(4)教科書制度の改革
 2019年4月の改正学校教育法等の施行により、検定済教科書の内容を電磁的に記録したデジタル教科書がある場合には、教育課程の一部において、紙の教科書に代えて使用できることとなったが、あくまで紙の教科書が主で、必要に応じてデジタル教科書を併用するという位置づけである。

 教育の情報化に対応するとともに、学習の質を高める観点から、教科書制度の本質的な見直しが必要である。その第一段階として、紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用できるのは、各学年における各教科等の授業時数の2分の1未満であるとした告示(平成30年文部科学省第237号)を直ちに撤廃するとともに、デジタル教科書の活用に関するエビデンスの蓄積と並行して、デジタル教科書単体での発行を可能にする検定等のあり方についても検討を急ぎ、早期に結論を得るべきである。同時に、多様な主体の創意工夫を通じ、教員と子供たちに多くの選択肢を提示する観点から、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令を見直し、発行主体の資本金および役員要件を緩和すべきである。また、自然科学や史実等、「真実」とされる内容が刻々と変化する中にあって、4年という教科書の最低使用期間にかかる規制も撤廃すべきである。加えて、学校教育法の定める教科用図書採択地区制度の見直しや、教科用図書検定調査審議会の委員を教育のデジタル化を踏まえた構成とする等の改革も進めるべきである。

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