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『学校教育・実践ライブラリ』Vol.9 2019年12月配本 特別活動における「主体的・対話的で深い学び」の推進とは 愛媛大学大学院教授 白松 賢

NEWトピック教育課題

2019.12.25

学校教育・実践ライブラリ』Vol.9 2019年12月配本

特別活動における「主体的・対話的で深い学び」の推進とは

特集 特別活動のアクティブ・ラーニング
愛媛大学大学院教授 白松 賢

集団や社会の形成者としての見方・考え方を働かす

 平成29年30年告示学習指導要領では、「アクティブ・ラーニング」という用語は「主体的・対話的で深い学び」として表現されるようになった。特別活動において「主体的・対話的で深い学び」を実現するためには、「『集団や社会の形成者としての見方・考え方』を働かせる」活動を展開することが求められている。具体的に「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編」(以下、「解説」)では、「各教科等の見方・考え方を総合的に働かせながら、自己及び集団や社会の問題を捉え、よりよい人間関係の形成、よりよい集団生活の構築や社会への参画及び自己の実現に向けた実践に結び付けること」と示されている。すなわち、「集団や社会の形成者」として学級や学校の活動に参画し、よりよい人間関係の形成と自己実現を図る実践的活動が、求められているのである。
 学級や学校は、家庭とともに児童生徒にとって最も身近な社会(人と人が関わり合う場)である。そのため、学校で生活することは、集団や社会の形成者としての生活に他ならない。しかしながら、「学級や学校に適応させる」という生徒指導観に表されるように、児童生徒を、能動的な形成者よりも受動的な存在と捉える向きは少なくない。そのため、特別活動の学級活動が、「学校行事の準備(教師の指示に従った作業の時間)」や「しつけの時間」となっているという問題はしばしば指摘されてきた。
 平成29年30年告示の学習指導要領では、学級や学校に適応される受動的な存在ではなく、学級や学校での生活をよりよくすることに能動的に参加する存在として児童生徒を捉え、自分のみならず他者にとってもよりよい生活になるように働きかける活動の重要性が改めて強調された。もともと特別活動は、能動的で民主的な教育活動を行うため、自発的活動や自治的活動という言葉に代表されるように、児童生徒の「自主的・実践的活動」を重視してきた。「主体的・対話的で深い学びの実現」に向けた授業改善の推進では、「これまでの学校教育の蓄積を生かし、学習の質を一層高める授業改善の取組を活性化していくこと」が求められている。本稿では、特別活動が大切にしてきた自主的・実践的な集団活動に着目し、三つの視点から「主体的・対話的で深い学びの実現」に向けた授業改善の具体的な方向性を示したい。

「話合い活動」の充実 自主的・実践的な集団活動①

 主体的・対話的で深い学びに向けた授業改善の視点の一つに、「学習活動(言語活動、観察・実験、 問題解決的な学習など)の質を向上させること」が示されている(解説)。特別活動では、学級や学校の生活上の「問題の発見・共有と解決」のための「話合い活動」が多く行われる。例えば、学級活動や児童会・生徒会活動では、児童生徒の司会を中心とした民主的な話合い活動が伝統的にも求められてきた。近年、選挙の投票率の問題に代表されるように、主権者教育やシティズンシップ教育の求められる社会状況において、集団や社会に主体的に参画するための資質・能力の育成が改めて重要となっている。この資質・能力の育成のためには、特別活動の様々な場面において、児童生徒による自主的・実践的な集団活動として「話合い活動」を組織し、促進することが求められる。
 「話合い活動」を充実させるためには、話合いの手順や方法、合意形成や意思決定の手順や方法などを多様に学習し、実践して児童生徒に身に付けさせ、高めさせる指導が重要である。理想的には、学年・学校段階が上がるたびに、自主的・実践的な話合い活動のよりよい充実が求められる。しかしながら、この話合い活動の経験が必ずしも積み上げられているとは限らない。そのため、①学校全体で話合い活動の手順や方法を共有したり、②学級において1 年間を見通した話合い活動のマニュアルや指導手順の確立や習得のための指導を行ったりする必要がある。ただし、マニュアルや手順が、児童生徒の話合い活動を型にはめるものとならないように留意する必要がある。 「守(教えを守る段階)・破(教えからよりよい改善を図る段階)・離(教えを基礎として、独自の境地を拓く段階)」という「道」の考え方がある。特別活動では、「改善(よりよく)」を大切にすることで、私たちの想定を超えて成長する能動的な存在として児童生徒を捉えることが常に求められる。そのため、国語科をはじめとする各教科等での言語活動と関連させた指導により、「話合い活動」の質を高める工夫が常に求められる。なお、「話合い活動」の充実は、次の二つの視点とも関わっており、それぞれに関連して述べたい。

自発的、自治的活動の充実 自主的・実践的な集団活動②

 学級活動(1)「学級や学校における生活づくりへの参画」、児童会・生徒会活動、クラブ活動(小学校)では、自主的・実践的な集団活動として、自発的、自治的活動が求められている。そこでは、「問題の発見・確認(提案理由の理解)」→「解決方法等の話合い」→「解決方法の決定(集団での合意形成)」→「決めたことの実践(集団)」→「振り返り」の学習過程が重視される。自発的、自治的活動を活性化するためには、学習過程の繰り返しによる「集団や自己の生活、人間関係の課題」を発見し、共有する方法や具体的な手立ての工夫が重要である。しばしば「児童会・生徒会での話合い活動がなかなか活性化しない」「学級の問題が共有されにくい」という声を聞く。こういった学級や学校では、話し合う問題や課題、実施する活動について教師による押し付けがしばしば観察される。例えば、学級や学校の生活上の課題として、「言葉遣いが悪い」といった「教師が児童生徒に答えてほしい問題」を答えるように仕向ける場合がそれに当たる。また、「掃除のときに私語をしたりふざけたりする人がいる」という問題をもとに、「一部の児童生徒」を改心させようとする学級活動を時折見かける。このような話合い活動は、「児童生徒の問題を指摘する場(断罪する場)」となることで、児童生徒には「言わされている」「やらされている」気分を醸成する。
 また活動の押し付けの問題を考えてみたい。例えば、児童会・生徒会活動では、「あいさつ運動」のように、児童生徒に教師がしてほしい活動をさせるために「話合い活動」をさせる場合がある。「右側通行運動」といった活動を教師から代表委員会に提案させることなどもある。自分たちで学校をよりよくするという動機に基づくものではないため、この結果、多くの児童生徒には「やらされる活動」という負担感を感じるものとなっている場合がある。
 「押し付ける課題や活動」ではなく、多様な人が同じ場で「教育を受ける権利」を享受するために、どのような工夫や決まりごと等が必要かを、みんなで考えて創り上げ、決めたことを実践して試しながら、よりよくしていく、という学習過程を保障することが重要である。そして、学習過程の繰り返しにより、自発的、自治的活動を充実するように展開することが重要である。「学級生活の充実と向上を目指して、児童自らが話し合い、計画するだけなく、決まったことを実際に実践するなど児童が自主的、実践的に取り組む時間が必要となる」(解説)。話し合う内容の大枠を教師が定め、「自治の範囲(児童生徒が自由に決めてよい内容や時間等)」をあらかじめ設定しておく。その上で「何のために(理由)」「何を(活動や決まり)」「どのようにするか(活動や準備の手順や時間、役割分担等)」について、児童生徒の提案をもとに話合い活動を行うことが必要である(白松2017)。特に、児童生徒が決めた内容に対して後出しで制限をかけたり、否定したりすることがあると、「結局話し合っても先生に否定される」という自発的、自治的活動の減退につながる。

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