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「考え、議論する」道徳科 授業づくりのポイント

NEWトピック教育課題

2019.09.13

考え、議論するための言語活動

 先に道徳的価値を教える点が変わらないと述べたが、小学校および中学校の『学習指導要領解説』には、「道徳教育の本来の使命に鑑みれば、特定の価値観を押し付けたり、主体性をもたず言われるままに行動するように指導したりすることは、道徳教育が目指す方向の対極にあるものと言わなければならない」と記されており、また、「いかに生きるべきかを自ら考え続ける姿勢こそ道徳教育が求めるもの」とも記されている。したがって、道徳授業では、単に道徳的価値を教え込むのではなく、むしろ、対立する場合もある多様な価値観について、児童生徒が、考え、議論し、道徳的諸価値について理解することが求められる。

 こうした点で重要なのが、言語活動である。「国語科では言葉に関わる基本的な能力が培われるが、道徳科は、このような能力を基本に、教材や体験などから感じたこと、考えたことをまとめ、発表し合ったり、話合いなどにより異なる感じ方、考え方に接し、協同的に議論したりする」(『小学校学習指導要領解説』)と示されている。

 近年では、PISA型読解力の必要性が主張されている。PISA型読解力とは、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」である。単に書かれていることから正確な情報を取り出すだけではなく、利用したり、熟考したりすることが求められている。

 道徳授業における言語活動にかかわる具体的な手立てとしては、「ア児童が問題意識をもち、意欲的に考え、主体的に話し合うことができるよう、ねらい、児童の実態、教材や学習指導過程などに応じて、発問、話合い、書く活動、表現活動などを工夫する」ことや、「イ教材や体験などから感じたこと、考えたことをまとめ、発表し合ったり、話合いなどにより異なる考えに接し、多面的・多角的に考え、協同的に議論したりするなどの工夫をする」こと、「ウ道徳的諸価値に関わる様々な課題について議論を行い自分との関わりで考察できるような工夫をする」ことがあげられている(『小学校学習指導要領解説』)。道徳の学習指導要領や『学習指導要領解説』には、PISA型読解力という語は使われてはいないが、しかし、内実としては、道徳科授業でも、いや、道徳科授業だからこそ、PISA型読解力が必要であり、そうした能力を身につける授業展開が望まれると言えるだろう。

情報モラル

 近年の生徒指導上の問題として、ICT機器にかかわる問題が多発している。いじめをめぐる問題に関してもSNSでのやり取りがきっかけになったというような事例がいくつもある。こうした問題を未然に防ぐ上でも、情報モラルは重要であり、道徳科でもそれを取り上げる必要がある。

 道徳科は、一方で、道徳的価値に関わる学習を行うわけだが、それを踏まえつつも、「指導に際しては、情報モラルに関わる題材を生かして話合いを深めたり、コンピュータによる疑似体験を授業の一部に取り入れたりするなど、創意ある多様な工夫が生み出されることが期待される」(『中学校学習指導要領解説』)。情報教育と連動させつつ、情報モラルを教える工夫を凝らしたい。

道徳科授業とカリキュラム・マネジメント

 道徳科で教える道徳的諸価値は、現代社会の様々な問題にかかわっている。だからこそ、他教科や他領域でも、その教科や領域の特質に応じて道徳教育を行うことが、学習指導要領に記されている。また『中学校学習指導要領解説』にも「例えば、食育、健康教育、消費者教育、防災教育、福祉に関する教育、法教育、社会参画に関する教育、伝統文化教育、国際理解教育、キャリア教育など、学校の特色を生かして取り組んでいる教育課題については、関連する内容項目の学習を踏まえた上で、各教科、総合的な学習の時間及び特別活動などにおける学習と関連付け、それらの教育課題を主題とした教材を活用するなどして、様々な道徳的な価値の視点で学習を深め、生徒自身がこれらの学習を発展させたりして、人として他者と共によりよく生きる上で大切なものとは何か、自分はどのように生きていくべきかなどについて、考えを深めていくことができるような取組が求められる」(小学校版にも同趣旨の文章がある)と記され、学習指導要領にも記載されているカリキュラム・マネジメント的な視点で、他者と共によりよく生きることや自分がどう生きていくかについて考えを深めることなどに取り組むことが大切だと言える。

 道徳科授業を要としてカリキュラム・マネジメントを試みるというような学校管理の在り方も、今後、実践されていくことになるだろう。

 

Profile
上越教育大学副学長
林泰成

はやし・やすなり 福井県生まれ。同志社大学大学院文学研究科博士課程満期退学。文学修士。1996年上越教育大学助教授、2007年同大学大学院学校教育研究科教授、2009年より2年間、附属小学校校長。2013年より現職。日本道徳教育方法学会副会長。日本道徳教育学会理事。日本道徳性発達実践学会常任理事。主な著書『モラルスキルトレーニング スタートブック』(明治図書)、『人間としての在り方生き方をどう教えるか』(教育出版)。

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