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特集 2021年 学校教育の論点 theme2 ●授業づくり 新課程が小・中学校全面実施で授業づくりの正念場 「主・対・深」をどう実現するか

NEW授業づくりと評価

2021.03.09

目次

    特集 2021年 学校教育の論点 theme2
    ●授業づくり
    新課程が小・中学校全面実施で授業づくりの正念場
    「主・対・深」をどう実現するか

    島根県立大学教授
    高知県教育委員会事務局学力向上総括専門官
    齊藤一弥

    『新教育ライブラリPremier』Vol.5 2021年2月

     昨年4月、学習指導要領全面実施にもかかわらず、全国の小学校はコロナ禍で十全なスタートを切ることができないまま、新しい様式における教育を試行錯誤し続けた1年が終わろうとしている。このような中、中学校の全面実施に当たる令和3年度は、小学校もリスタートを切って小中同時全面実施の年と言えるであろう。コロナ禍で内容をこなすことに腐心した小学校にとっても、また新課程での授業をスタートさせる中学校にとっても、次年度は授業づくりの正念場でもある。with & postコロナも踏まえた上で、今回の学習指導要領が目指す「主体的・対話的で深い学び」の実現へ向けて取り組むべきことを整理しておきたい。

    端的に目指す方向を決める

    教科目標の柱書の実現

     学習指導要領の告示・改訂以降、新課程が目指す「主体的・対話的で深い学び」の実現へ向けて、様々な授業づくりの取組が行われてきている。意図の解釈、教科ごとの指導方法の開発、子供への支援と見取り方法の工夫など、多岐にわたる視点から実践研究が進められてきた。しかし、その一方で、解釈や教科独自の問題意識の違いおよびそれから派生する多様な実践の方向などによって、新課程の理念が授業づくりに的確に反映されているとは言い難いという状況も見受けられる。この4月を小・中学校同時に全面実施するという授業づくりのチャンスと捉えて、ここで改めて「主体的・対話的で深い学び」の基本を端的に確認していくことが大切であろう。

     いかに解釈したらよいかである。この答えは、「教科等の目標にある柱書を実現すること」ではないだろうか。柱書には、教科の本質と言える「見方・考え方」を働かせ、教科ならではの「学習活動」を充実させて、教科として身に付けたい「資質・能力」を育成するという授業づくりの方針が示されている。この柱書を実現することが「主体的・対話的で深い学び」が目指していることであり、教科等を越えてこれを共有していくことが新課程の授業づくりに期待されていることである。

    年度末に見えてくるもの

    評価・評定の根拠

     この時期、年度末の評価・評定に向けて学びの成果の確認に関心が高い。特に、小学校においては新課程に基づく1年間の教育実践の成果を測るわけである。評価規準に基づいて客観性・妥当性のある目標準拠評価で子供の評価をしていくわけだが、その裏側では目標に対応した資質・能力ベイスの授業が行われてきたのかが問われることになる。つまり、今年度はコロナ禍での様々な対応に明け暮れたわけだが、評価・評定すべき資質・能力の育成を目指す学びが確実に実践されてきたのか、その評価・評定の前提を確認することが求められているわけである。

     評価・評定に取り組むことで、改めて今年1年の自らの授業づくりの批判的な振り返りと冷静な分析によって、子供に身に付ける資質・能力から「学習活動」の質や子供の「見方・考え方」の成長をも確認することが必要なのである。つまり、教科目標の柱書を逆読みするようにこの1年の実践を見直して、次年度の授業づくりで大切にすべき視点を明確にしていくことが大切になる。もちろん、中学校においても移行期間中の授業づくりを同様に確認することは言うまでもない。

    子供の姿から再度新課程を確認する

    目指すゴールとは

     昨年4月の新課程のスタート時、この1年間での「主体的・対話的で深い学び」によって子供にどのような成長を期待してきたのであろうか。新課程では「単元や主題のまとまり」で授業づくりを進めていくことを重視している。「見方・考え方」を基盤に据えた学びによって、そのまとまりの終わりでは「何ができるようになるか」を考えながら授業づくりを推し進めてきたはずである。

     図1は、国語科学習指導案の指導計画(高知市立潮江東小学校1年 書くこと 「おはなしをかこう」)である。生活科での幼児との交流体験の学習との関連を図り、「入学してくる新1年生に昔話を基にしたお話を書いて、紹介する」という言語活動を組織したものである。

     単元の終了時に期待する三つの柱の資質・能力に加えて、「書くこと」の学習活動における「題材設定」「情報収集」「内容検討」「考えの形成・記述」、そして「共有」といった教科ならでは学びの過程を推し進める力や「見方・考え方」を働かせている子供の姿が示されており、単元のまとまりを通して、子供がどのようなことができるようになるのかが示されている。

     このようなゴールを意識することで、教師はまず単元を描くこと、または教科書の単元構成の意図を読み解くことの重要性を確認することになる。ゴールに向けてどのような学びの過程が求められているのか、その過程を作り上げていくためには何が必要になるのかを考えることになる。そして、教師は単元を描くためには、教材の選定や子供と材との出合わせ方、さらには教科書の活用の仕方などの重要性を実感することになる。

     このように、「主体的・対話的で深い学び」の実現には、学びのゴールを明確にするとともに単元のまとまりを創ることが大切であり、これらは新課程が目指す資質・能力を基盤に据えて学びを描くという基本があることを再確認することが大切である。

    単元をいかに描くか

    新教科書の読み方

     では、単元のまとまりを描くためにどのようなことに留意すべきなのだろうか。

     多くの教師は教科書を用いて授業を進めている。当然のことながら教科書に示されている教材単元にそって授業を進めていくことになる。このこと自体決して間違ってはいないし、これまでの実践での経験を基に洗練された単元を積極的に活用していくことは望ましい。しかし、そこで大切なことは、教科書に示された意図を学習指導要領や解説などと突き合わせながら丁寧に読み解き、その趣旨を反映させて単元のまとまりの指導をしていくことである。

     図2は、今回の学習指導要領に示された目標・内容等を、教科書の内容を分析する視点として学びの成果(能力)と学びの過程(方法)の両面からコード化し、それらが教科書(A社)にどのように反映されているかを整理したものである。分析した内容は、小学校算数科の中でも指導が難しいとされている「割合(小学校5年)」である。

     まず、新教科書は、これまでの教科書に比べて明らかに分量が増えていることがわかる。そして、その要因として、「振り返り(132)」「活用(133)」や「数学化(221)」「統合・発展(224)」など、新課程ににおいて期待されている能力や学習方法への対応ということもわかる。しかし、それらの一部には時数が配当されておらず、その取扱いは教師に委ねられていることが読み取れる。このように新教科書は、内容ベイスによる構成の大枠は維持したまま、新たに書き加えることで期待されている資質・能力の育成を目指そうとしているわけである。つまり、このまま教科書の全ての紙面をこれまでと同じように指導していくとなるとカリキュラム・オーバーロードに直面し、時間数不足などの問題は避けて通れないことになる。

     一方で、子供が見方・考え方を働かせるために、単元導入時のイントロダクションでそれらを顕在化させようとしたりキャラクターなどで常に事象と関わりを意識させようとしたりするなど、「主体的・対話的で深い学び」の実現へ向けた工夫も多い。選択と集中といった視点から新教科書を読み解くことで、資質・能力ベイスで単元のまとまりを描いていくことが必要になるわけである。

    見方・考え方の成長

    子供によるカリマネの推進

     昨年の年度初めには、コロナ禍による長期休業によって「教科書が終わらない」「内容を取り戻すのに時間がない」などと学習進度が大きな問題になった。内容ベイスのとらえ方で教科書の内容を一つ一つ丁寧にこなしていかねばならないと考えているためであろう。

     しかし、全てのことを等しくやるのではなく、子供が見方・考え方を働かせるようにすれば、次第に時間的な余裕が生まれてくるはずである。

     例えば、小学校3年生の理科の学習では、昆虫の体のつくりについて学んだり、電気の回路や天気の様子について学んだりする。それらの学習を全く別のものととらえるのではなく、比較および関係付けという見方・考え方からとらえると、似ていることを学習していると認識できる子供に育てることが大切である。クモとバッタを比較すると足の数や足が付いているところが異なることが気になるし、また電池であれば直列と並列での豆電球の明るさを比較すると両者の違いを発見する、さらに日なたと日陰の比較では気温差に関心が向くといった具合に、子供が理科の見方・考え方を働かせていけば、全てを教師がお膳立てすることなく学びを切り拓いていくことができるはずである。これが資質・能力ベイスの学びが目指す「Less is more」(少なく教えて豊かに学ぶ)の考え方である。

     このように教科独特の眼鏡をかけて学習対象を見つめ、教科らしく対象に内在する問題を追究していく姿勢をもつようになれば、子供が自らの学習活動のあり様について関心をもち、自身の学びをメタ認知するようにもなっていく。このことが新課程が目指す「主体的・対話的で深い学び」に取り組む子供の姿であり、その実現に向けて、今、改めて柱書の実現を目指す授業づくりが必要なのである。

    [参考文献]

    • 齊藤一弥監修「『主体的・対話的で深い』教師の授業づくり講座」『教育技術 小三小四』小学館、2020年

    • 齊藤一弥「見方・考え方を基盤とした小学校算数のカリキュラム開発の考え方─カリキュラム・オーバーロードの要因─」日本個性個性化教育学会 第13回全国大会 分科会発表資料、2020年

     

    Profile
    さいとう・かずや

    横浜国立大学大学院修了。横浜市教育委員会首席指導主事、指導部指導主事室長、横浜市立小学校長を経て、平成29年度より高知県教育委員会事務局学力向上総括専門官、30年10月より現職。文部科学省中央教育審議会教育課程部会算数・数学ワーキンググループ委員。近著に『新教育課程を活かす能力ベイスの授業づくり』。

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