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教職 その働き方を考える

高野敬三

教職 その働き方を考える[第1回]魅力ある教職とは何か

NEWトピック教育課題

2019.09.12

教職 その働き方を考える
[第1回]魅力ある教職とは何か

明海大学副学長 高野敬三

『リーダーズ・ライブラリ』 Vol.1 2018年5月

●本稿のめあて●
①教職に就くことの意味とは何か。
②子どもたちが教職を職業選択する理由や魅力は何か。
③教職に求められる役割は社会の要請によりどのように変化しているか。

教職とは

 現在、全国の国公私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に勤務している110万人の教員は、教員採用選考等で合格して、教育職員免許法上で規定されている大学における所要の科目を修得して、卒業とともに都道府県教育委員会から教育職員免許状を交付された者です。

 こうした教員は、大学を卒業するための必要な要件単位を修得することに加えて、教育原理、教育心理、教科教育法や教育実習など教職に就くために不可欠な科目を別途学修してきた者です。

 筆者はこれまで、教職志望の学生に対して、「教師論」「教育原理」「生徒指導」という科目を担当しており、教職に関する基礎的なことを教えています。多くの学生は、子どもが好きで、教員に対する憧れをもつ学生です。通例、筆者が行う授業では、職業としての教職について、教育基本法第1条を説明して、教育は、「人格の完成を目指」すことを目的としていることを教えています。

教職という仕事に対する憧れ

 東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で実施した「子どもの生活と学びに関する親子調査2015」(調査時期/2015年7~8月、小学校4年生から6年生、中学生・高校生の親子約2万1000組を調査対象に実施)では、将来どんな職業に就きたいかについて調査を行っています。それによると、中学生男子が就きたいとした職業の第1位は「学校の先生」(8.4%)であり、中学生女子では、第1位には、「保育士・幼稚園の先生」(11.1%)、第3位「学校の先生」(7.2%)となっています。本調査では、小学校4年生から小学校6年生までの小学校児童に対して同じ調査を実施していますが、小学校男子では、就きたい職業の第7位(2.8%)、小学校女子でも同順位の7位(5.1%)となっています。単純比較は難しいところですが、ベネッセ教育総合研究所が2009年に単独で実施した「第2回子ども生活実態基本調査」でも、「なりたい職業」に関する調査を実施しています。その結果においても、小学校男子・女子、中学校男子・女子は、「学校の先生」という職業を上位(小学校男子13位、小学校女子9位、中学校男子4位、中学校女子9位)に挙げています。つまり、10年以上前から、子どもたちが、将来就きたいとした職業に「学校の先生」は、かなり上位に入っていることが分かります。2015年といえば、学校の「いじめ問題」や「体罰問題」が大きな社会問題となった後であり、教員に対する「バッシング旋風」が大きく、教員に対する社会的評価が著しく低くなった時期以降に当たります。

他の職業にはない魅力

 現在では、学校の教員について、勤務時間があってないような状況であり、「教職はブラック」であるなどといった報道があるようですが、それでは、前述の調査結果をどのように見たらいいのでしょうか。

 子どもたちは、学校の先生と関わる時間が長く、先生の言葉・態度を含めた教育指導の好影響を大きく受けていると考えられます。学校では、学級担任、教科指導、特別活動(学校行事など)、部活指導の先生が一人ひとりの児童生徒に対して、朝登校後から下校時まで、本当に熱心に手厚い指導をしています。その絶対的時間数は、家庭における保護者のそれをはるかに上回っています。

 時間数だけではなく、その内容についても、保護者が容易に教えることができるものは少なく、専門的教育を受けてきた教員にしかできない場合が多いのです。「あのとき、あの先生のおかげで、現在の自分がある」「私の人生において、一番影響を与えてくださったのは小学校のときの担任の先生である」「自分がこの道を目指したのは、中学校のときの理科の先生のおかげである」などといった発言は、様々な分野で活躍している方々から、よく聞かれるものです。

 教職の魅力は、何といっても、子どもの人間形成に深く関わることができる面白さです。子どもの全人的な発達をサポートする職業に就き、教員も日々成長できることにあります。仕事を通して様々な子どもと関わり、その子どもの成長に尽くすことの喜びです。一人の教員が子どもの成長に関わり、子どもの喜怒哀楽を共有する喜びです。教員は、とかく、受け持ちの子どもについて、土日といった休業日でも考えているものです。こうしたことは、他の職業にはないものであり、だからこそ、ベネッセの調査結果にも表れていると思います。

教職に求められる役割

 日本型教育という言葉があります。それは、知識・技能の伝達者としての役割と人間形成への援助者としての役割を担うことが期待されている我が国の教員が実践してきた教育システムと言えましょう。人格の完成を目指す我が国の学校では、教員は教科指導を通して教科の基礎的・基本的な知識や技能を教えるとともに、基本的な生活指導、人間としての生き方・在り方、社会規範や道徳性などを教えることが求められています。

 しかしながら、教えるべき知識・技能や人間形成の援助の在り方というものは、社会の変化や時代の進展とともに必然的に変化していきます。近代日本の教育制度が確立された後も、教育の在り方・教職に求められる役割は、その見直しが図られました。具体的には、中教審答申、臨時教育審議会答申(第1次答申:1985年、以降4次にわたる答申)や教育職員養成審議会答申(1987年、以降3次にわたる答申)などにより、教育の内容やその在り方が、その都度、改善されていきます。直近では、2015年12月に出された中教審答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」他二つの答申と2016年12月の学習指導要領の改善に関する中教審答申があります。

 こうしたことから、教員は社会の要請に応えることが日々求められており、絶えず研究と修養に努めなければならないことは当然なことと言えます。

 

[参考文献]「子どもの生活と学びに関する親子調査2015」結果(東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所)

 

Profile
明海大学副学長
高野敬三
たかの・けいぞう 昭和29年新潟県生まれ。東京都立京橋高校教諭、東京都教育庁指導部高等学校教育指導課長、都立飛鳥高等学校長、東京都教育庁指導部長、東京都教育監・東京都教職員研修センター所長を歴任。平成27年から明海大学教授(教職課程担当)、平成28年度から現職、平成30年より明海大学外国語学部長、明海大学教職課程センター長、明海大学地域学校教育センター長を兼ねる。「不登校に関する調査研究協力者会議」委員、「教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会議」委員、「中央教育審議会教員養成部会」委員(以上、文部科学省)を歴任。

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