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渡辺敦司

教育Insight 「義務教育9年間」で教員配置や免許を検討へ

NEWトピック教育課題

2019.08.29

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「義務教育9年間」で教員配置や免許を検討へ

教育ジャーナリスト 渡辺敦司

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.2 2019年6月

 柴山昌彦文部科学相は4月17日、第10期中央教育審議会(会長=渡邉光一郎・第一生命ホールディングス会長)に「新しい時代の初等中等教育の在り方について」を諮問した。1月25日の答申「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」で積み残された課題(第7章3「今後更に検討を要する事項」)を引き継ぐとともに、その抜本的改革を進めるためには、教職員配置や教育課程、教員養成も含めた初中教育の総合的な見直しが必要だと判断したものとみられる。

 5月8日に開催された初等中等教育分科会(分科会長=荒瀬克己・大谷大学教授)では、同分科会の下に「新しい時代の学校の在り方特別部会」を設置することも決まった。諮問事項全体を横断的に議論して初中分科会に上げるとともに、教育課程部会や教員養成部会からの報告も受ける。新学習指導要領の審議(14年11月~16年12月)で教育課程企画特別部会(教育課程部会の下に設置)が果たしたような“司令塔”の役割が期待されているようだ。

高校なども含めた“包括諮問”

 初中教育の在り方に関する総合的な諮問としては、2003年5月の「今後の初等中等教育改革の推進方策について」以来だという。ただし、この時は①初等中等教育の教育課程及び指導の充実・改善方策について②義務教育など学校教育に係る諸制度の在り方について―という二つの事項が示され、このうち①は学習指導要領の一部改訂(03年10月に「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」を答申、同12月に一部改訂)、②は存廃論議が焦点化していた義務教育費国庫負担制度を堅持することが主眼だった(05年10月に「新しい時代の義務教育を創造する」を答申)。

 今回の諮問は、政府の教育再生実行会議(座長=鎌田薫・前早稲田大学総長)の第11次提言(5月17日)でも挙げられた高校教育の在り方や、改正入国管理法の施行に伴って一層の増加が見込まれる外国人児童生徒等への教育も含めた初中教育全般の“包括諮問”となっているのが特徴だ。

 包括諮問の形式は、高等教育で前例が幾つかある。とりわけ08年9月の諮問「中長期的な大学教育の在り方について」は、12年8月の答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」をまとめる過程で高大接続改革の必要性が浮上し、中教審総会で答申直後に「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」が諮問されることにもつながった経緯がある。

標準時数の在り方も課題

 柴山文科相から要請のあった審議事項の概要は以下のとおり。

 ①新時代に対応した義務教育の在り方…基礎的読解力などの基盤的な学力の確実な定着に向けた方策▽義務教育9年間を見通した児童生徒の発達の段階に応じた学級担任制と教科担任制の在り方や、習熟度別指導の在り方など今後の指導体制の在り方▽年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方を含む教育課程の在り方▽障害のある者を含む特別な配慮を要する児童生徒に対する指導及び支援の在り方など、児童生徒一人一人の能力、適性等に応じた指導の在り方

 ②新時代に対応した高等学校教育の在り方…普通科改革など各学科の在り方▽文系・理系にかかわらず様々な科目を学ぶことや、STEAM教育の推進▽時代の変化・役割の変化に応じた定時制・通信制課程の在り方▽地域社会や高等教育機関との協働による教育の在り方

 ③増加する外国人児童生徒等への教育の在り方…外国人児童生徒等の就学機会の確保、教育相談等の包括的支援の在り方▽公立学校における外国人児童生徒等に対する指導体制の確保▽日本の生活や文化に関する教育、母語の指導、異文化理解や多文化共生の考え方に基づく教育の在り方

 ④これからの時代に応じた教師の在り方や教育環境の整備等…児童生徒等に求められる資質・能力を育成することができる教師の在り方▽義務教育9年間を学級担任制を重視する段階と教科担任制を重視する段階に捉え直すことのできる教職員配置や教員免許制度の在り方▽教員養成・免許・採用・研修・勤務環境・人事計画等の在り方▽免許更新講習と研修等の位置付けの在り方など教員免許更新制の実質化▽多様な背景を持つ人材によって教職員組織を構成できるようにするための免許制度や教員の養成・採用・研修・勤務環境の在り方▽特別な配慮を要する児童生徒等への指導など特定の課題に関する教師の専門性向上のための仕組みの構築▽幼児教育の無償化を踏まえた幼児教育の質の向上▽義務教育をすべての児童生徒等に実質的に保障するための方策▽いじめの重大事態、虐待事案に適切に対応するための方策▽学校の小規模化を踏まえた自治体間の連携等を含めた学校運営の在り方▽教職員や専門的人材の配置、ICT環境や先端技術の活用を含む条件整備の在り方

 新聞報道などでは小学校に教科担任制を導入することに注目が集まっているが、それだけにとどまらないようだ。「義務教育9年間」という言葉が①の学級担任制・教科担任制に掛かっているだけでなく、④にも使われている。中学校も含めて教職員配置の在り方を見直すとともに、小・中両方の免許を取得しやすくするような免許制度と教員養成の在り方も課題になるとみられる。

 「年間授業時数や標準的な授業時間等」をめぐっては17年度、平均で小学校第5学年1040.2時間(標準授業980時間)、中学校第1学年1061.3時間(同1015時間)と大幅に上回っている実態が明らかになっており、文科省は3月29日付の初等中等教育局長通知で「教師が崇高な使命を持って授業を実施されたことを示すものにほかならない」としながらも、「各学校の指導体制を整えないまま標準授業時数を大きく上回った授業時数を実施することは教師の負担増加に直結するものである」として、各学校の指導体制に見合った授業時数を設定するよう求めていた。結果的に標準時数を下回った場合なども含めた運用の在り方も議論になりそうだ。

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