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「考え、議論する」道徳科 授業づくりのポイント

NEWトピック教育課題

2019.09.13

「考え、議論する」道徳科 授業づくりのポイント

上越教育大学副学長 林泰成

新教育課程ライブラリII Vol.8 2017年8月

 「特別の教科道徳」の設置は「考え、議論する」道徳への転換であると、文部科学省によって位置づけられている。では、道徳科授業は、具体的にはどのように変わるのだろうか。小中学校の学習指導要領や『学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』(以下『学習指導要領解説』と略記)に基づいてみていこう。

年間指導計画の作成

 道徳が教科として実践されるようになっても、道徳教育の全体計画に基づき、道徳科の年間指導計画を作成するということは変わらない。校長のリーダーシップのもとで示された道徳教育の方針に基づき、道徳教育推進教師が中心となって全教員が協力しながら、道徳教育の全体計画に基づく年間指導計画を作成することが求められる。

 年間指導計画とは、「道徳科の指導が、道徳教育の全体計画に基づき、児童の発達の段階に即して計画的、発展的に行われるように組織された全学年にわたる年間の指導計画である」(『小学校学習指導要領解説』)。そこには、「各学年の基本方針」と「各学年の年間にわたる指導の概要」を記すことになる。指導の概要には、「指導の時期」「主題名」(ねらいと教材を含むもの)「ねらい」「教材」「主題構成の理由」「学習指導過程と指導方法」「他の教育活動における道徳教育との関連」などを記す。

 今回の教科化によって道徳でも教科書が使用されることになるが、小学校および中学校の『学習指導要領解説』には、「教科用図書やその他、授業において用いる副読本等の中から、指導で用いる教材の題名を記述する。なお、その出典等を併記する」と記されており、主たる教材として教科書を用いることは言うまでもないが、教科書以外の副読本などに掲載の教材を用いることも許されていると解することができる。

 年間指導計画は、「不用意な変更や修正が行われるべきではない」とされているが、変更する場合には「より大きな効果を期待できるという判断を前提として、学年などによる検討を経て校長の了解を得ること」(『学習指導要領解説』)が求められる。

道徳科の指導方法

 教科化後も、道徳的価値を教えるという点は変わらない。ただし、改訂された学習指導要領では、「道徳的諸価値についての理解」という文言が使用されており、道徳的価値が複数形で表現されることになった。従来、道徳授業では1時間の授業では1つの価値に焦点化して実施するのが望ましいと言われてきた。しかし、今回は、複数の価値が対立し、葛藤が生じることもありうるということが前提となっている。そうしたことを教える授業もまた求められるということである。

 そこで、指導方法としては従来型の授業に加えて、「問題解決的な学習」や「道徳的行為に関する体験的な学習」などを取り入れることが学習指導要領にも記載されている。

 「問題解決的な学習」とは、「ねらいとする道徳的諸価値について自己を見つめ、これからの生き方に生かしていくことを見通しながら、実現するための問題を見付け、どうしてそのような問題が生まれるのかを調べたり、他者の感じ方や考え方を確かめたりと物事を多面的・多角的に考えながら課題解決に向けて話し合うこと」(『小学校学習指導要領解説』)であり、「生徒が学習主題として何らかの問題を自覚し、その解決法についても主体的・能動的に取り組み、考えていくことにより学んでいく学習方法」(『中学校学習指導要領解説』)である。

 「問題解決的な学習」に関しては、ときに、問題を解決するところまで、つまり合意形成まで指導しないといけないかのように説明されることがある。しかし、上記の『学習指導要領解説』の説明文を読むかぎりは、そこに向けて学習を進めることが求められているのであって、モラルジレンマ授業のようにオープンエンドで終わる授業も否定されてはいない。モラルジレンマ授業は、道徳的な判断や理由付けの訓練、あるいは、議論の仕方の訓練と考えれば、むしろ、資質・能力としての道徳性を身につけるための方法として有効だと言えるだろう。

 また、「道徳的行為に関する体験的な学習」に関しては、「道徳的諸価値を理解したり、自分との関わりで多面的、多角的に考えたりするためには、例えば、実際に挨拶や丁寧な言葉遣いなど具体的な道徳的行為をして、礼儀のよさや作法の難しさなどを考えたり、相手に思いやりのある言葉を掛けたり、手助けをして親切についての考えを深めたりするような道徳的行為に関する体験的な学習を取り入れることが考えられる。さらに、読み物教材等を活用した場合には、その教材に登場する人物等の言動を即興的に演技して考える役割演技など疑似体験的な表現活動を取り入れた学習も考えられる」(『小学校学習指導要領』)と述べられている。前半部分で言及されているのは、ソーシャルスキルトレーニングやライフスキル教育、モラルスキルトレーニングなどのようなやり方を導入した指導である。後半では、文字通り、役割演技の導入が主張されている。いずれにしても、道徳的諸価値についての理解を促すなど、ねらいに即した指導過程でなければならない。

 また、「体験的な学習」という用語は、体験活動と混同されることがあって、たとえば、自然体験活動や職場体験活動などのような学外での体験的な学びを推奨しているかのように思われるかもしれない。しかし、「体験的な学習」は、授業における指導方法としての体験的な学習であって、そうした体験活動とは異なっている。

 もちろん、特別活動などで行われている多様な体験活動や実践活動なども道徳教育の学びの場面として有効であるから、そこでの児童生徒の体験を道徳授業に生かすことにも大きな意味がある。

 表は、文部科学省に設置された「道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議」の報告書に記載された指導方法を抜き書きしたものである。最初と最後の×を付けた2つは、望ましくないものとして挙げられている。授業で設定された道徳的価値に自分事としてかかわるところまで指導しないといけないということであろう。望ましいのは〇の付された3つである。しかし、この表には註が付けられていて、これらは「多様な指導法の一例」であり、「それぞれが独立した指導の「型」を示しているわけではない」とされ、「例えば読み物教材を活用しつつ問題解決的な学習を取り入れるなど、それぞれの要素を組み合わせた指導を行うことも考えられる」と記されている。これら3つのみを望ましいものとして示しているわけではないということである。

 学習指導要領は法的拘束力があるとされているが、それだけでは細かな部分はわからない。『学習指導要領解説』や専門家会議の報告書なども合わせ読むことで、「問題解決的な学習」や「道徳的行為に関する体験的な学習」についての位置づけが明確になり、これまで以上に、指導方法の多様性が認められていることが見て取れるのである。

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