学校改革の新定石
学校改革の新定石 第5回 12月決算の教育課程
トピック教育課題
2019.07.10
学校改革の新定石
第5回 12月決算の教育課程
(『新教育課程ライブラリ Vol.5』2016年5月)
12月決算とは
多くの学校でPDCAサイクルの教育課程を実施しているが、そのほとんどが1年で終了するシステムとなっており、年度で切れ目が生じている。このシステムは、果たしてよいだろうか。本来の教育活動は、切れ目があってはならないものである。「今日、教育活動を実施すれば、即座に評価し、明日は新しいプランで実施する」のが、本来の教育活動の在り方ではないだろうか。1年サイクルの教育課程など本来ないはずだ。だが、これが学校の常識となっている。
これを変える一つとして、かつての勤務校では「12月決算」を実施した。12月決算とは、これまでの4月から3月までの教育課程を、内規として1月から12月にしたことだ。
学校システムの課題と背景
3月・4月は会議が多くなることで子どもと向き合うことができない、毎年、年度末や新年度は年度替りで春先は忙しい、というのが学校の常識だ。そのため、以下のような様々な弊害が出る。
①年度末は、学習のまとめをする時期だが、行事に追われ、教師や子どもにゆとりがない。
②年度末は、会議を行うことが当たり前となっており、子どもに早帰りをさせている。
③学校評価や新年度計画を行う時期で、アンケート回収や分析に追われている。
④4月当初は、新年度組織の構築に追われ、子どもと十分に接することができない。
⑤春先は研究授業がないことが常識であり、授業の腕を磨ききれない月となっている。
担任する子どもとの新しい出会いで、子どもと一番触れ合いが必要な時期にそれができない。教師は子どもと触れ合いたいのに、3月・4月の“学校常識”のため、教師の言葉は、「あとで」となる。こうした常識はどこからきているのだろう。
①年度替わりに、例年と同じように教育課程の編成を行うのが当たり前という学校常識
②年度始めは、会議をすることが当たり前であると思い込む学校常識
③年度末評価や新年度計画の時期であるので、多忙が当たり前という学校認識
4月から3月の教育課程サイクルの常識を崩す
教育課程編成や、学級の諸事務が3月から4月に集中し、教師に過度の負担がかかる。そのことが、子どもの成長にまで影響する。そこで、12月までに学校評価と新年度計画を終えるようにした。学校独自で1月より新年度の教育課程を新しい学校運営組織で行うように改めた。そのため、教師の多忙感はまったくなくなった。
特長的なことは、3月・4月の会議がまったくないため、子どもや教師にゆとりができたことだ。転任してきた教師が以前の学校との違いに驚くとともに、学級事務のみに専念できることを喜んでいた。校務分掌も1月から実施するため、4月になっても変わらない。転任者があれば、新しい職員がその分掌を引き継ぐことになる。多くの学校にありがちな4月の組織編成会議もない。3月・4月も普通の月と変わらないため、研究授業も行う。これが、本来の学校常識だ。多忙な3月・4月をいつまでも続けてはならない。