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ミドルリーダーが創るこれからの学校

大脇康弘

ミドルリーダーが創るこれからの学校 第6回 分散型リーダーシップの布置[小学校]

NEWトピック教育課題

2019.07.10

ミドルリーダーが創るこれからの学校

第6回 分散型リーダーシップの布置[小学校]
『新教育課程ライブラリ Vol.6』2016年6月

分散型リーダーシップ

 今回は、ミドルリーダーの属性と配置状況について小学校の事例をみていきたい。

 学校経営の様式は、教職員の合意形成を重視した集団協議型が後退し、校長主導の企画展開型が強まってきた。特に、学校経営計画書を作成し、校長が教育委員会とすりあわせを行う地域や、公募型学校裁量予算(GP予算)を設けている地域では、その変化が顕著である。学校組織は「なべぶた型」から「階層型」へと転換し、ミドルリーダーの役割はトップとローワーをつなぐ「連結ピン」として重要な役割を担うこととなった。ミドルリーダーは、学校全体の目標や課題を意識して担当校務を企画運営すると共に、関係する教員の力量や意識に即してチームづくりを行うことが求められる。そこでは、タテの階層性とヨコの同僚性、さらにナナメの支援性との関係の中で、対立や葛藤を含む複雑な役割を遂行することになる。そのため、ミドルリーダーの立ち位置や認識によって、その役割と活動は多様となる。

 連載第2回で「ミドル・アップダウン型組織づくり」を提起したが、そこでは組織リーダーと教育リーダーの2頭立てとし、多様なミドルリーダーがタテ・ヨコ・ナナメの関係で連携して教育活動を組織することを基本としている。つまり、校長主導の学校経営というより、ミドルリーダーを含めた多様なリーダーシップが交換されるダイナミズムがみられるのである。

 アメリカでも校長主導の学校経営が基本であったが、2000年代には「分散型リーダーシップ」(distributed leadership)がノースウエスタン大学のスピラーン(Spillane, J.P.)等によって提言されている。彼らは、授業実践や教育課程の改善を促進する教育リーダーシップ実践を探究し、校長や有能な教師のリーダーシップをみるのではなく「リーダー・フォロワー・状況の構成物」として形成されるものとして認識すべきだとする。そして、三者の相互作用を促進するのは、課題意識の共有、学習チームの形成などとしている。この「分散型リーダーシップ」論は「ミドル・アップダウン型組織」論と極めて親和的である。多様なミドルリーダーによる分散型リーダーシップと校長による統括型リーダーシップの連関が実践課題となる。

ミドルリーダーの育成

 さて、実際の学校で、どのような属性をもつミドルリーダーがどのように役割を担っているのか、組織運営上の工夫と課題をみていく。今回は小学校について小規模校と大規模校の事例を取り上げる。これは典型例ではなく、ミドルリーダーの多様な実態を考える素材として選定したものである。なお、学校名は仮称で、データは概数とし、それぞれのミドルリーダーの記述は補整を行っている。

 第1の事例は、A県O小学校である。兼業農家が多い農村地域にある学校で、児童数80名で6クラスの小規模校である。教員数は11名で、年齢構成(人)は、20代2、30代3、40代2、50代4である。年長教員が多い一方で、この学校が初任校である若手教員が3人いる。中堅層で力量あるミドルリーダーが見当たらない。学校の組織運営はこれまでのやり方を守り、新たな取組みに抵抗感をもつ教員が多かった。

 ミドルリーダーとしては、教務主任と研究主任が位置付けられている。教務主任は50代半ばのベテランで女性である。学年担任を兼務しており、教頭が分担する校務も少なくない。研究主任は30代初めの経験年数は10年に満たない男性で、意識的に育成し登用した人材である。校長と教頭が相談して、次期の研究主任として登用することを言い含めて「研究副主任」として仕事を経験させ、教頭がそのメンターとなって指導助言、相談支援した。1年後に研究主任になると、他校の公開研究会への参加、授業研究会の実施、研修Newsletterの作成など、校内研究の推進役として取り組んだ。そのため慣行重視の学校文化に風穴が開き、新たな取組みが教員の間に広まっていくこととなった。校長・教頭は、彼らがリードして率先垂範したとしても、学校文化は変えることは難しかったであろうと振り返っている。

ミドルリーダーの布置

 第2の事例は、B県P小学校である。大都市中心部のマンションが多い住宅街に位置する学校で、研究推進校の役割と実績をもつ伝統校である。児童数900名で28クラスの大規模校で、児童数は近年増加している。教員数40名強で、正規教員の年齢構成(人)は、20代9、30代17、40代4、50代4である。若手教員が多く、産休・育休の代替第2の事例は、B県P小学校である。大都市中心部のマンションが多い住宅街に位置する学校で、研究推進校の役割と実績をもつ伝統校である。児童数900名で28クラスの大規模校で、児童数は近年増加している。教員数40名強で、正規教員の年齢構成(人)は、20代9、30代17、40代4、50代4である。若手教員が多く、産休・育休の代替教員が数名いること、研究推進校として転入・転出がかなり多いことが常態であり、人材配置・人材育成は大きな課題となっている。

 研究校推進校として「ICTの教育活用」をはじめ三つの研究テーマを掲げて、多面的に研究開発に取り組んでいる。教員は多忙ではあるがやりがいをもって挑戦する文化が根付いており、教員集団のつながりが支えとなっている。校長は、教員人事において校務分掌と各学年を関連付けること、一人が複数の役割を担うことを避けるよう留意している。

 この学校には多様なミドルリーダーが存在し、連携協力して大規模校の運営を担っている。具体的には、首席(主幹教諭)は40代前半の男性で、研究実践が豊富であり、研究主任と6学年主任を兼務している。指導教諭は50代後半の女性で教員の世話役となり、1学年主任を兼務している。教務主任は30代半ばの男性の中堅教員で、人材登用している。各学年主任(各学年4~5クラス、人)は30代1、40代4、50代1である。また、若手の自主研究会が組織され、教職経験10年未満の教員がメンターとなって若手教員をまとめ育成している。校長・教頭が教員の力量・適性・キャリアを見定めながら、人材配置・人材登用に工夫を凝らしている。

 大規模校にもかかわらず、こうした教員人事の工夫がなされる中、学校の研究文化が継承され、若手教員が経験を積み学習を重ねて力量を高めている。学校として多様な課題を克服しながら研究開発に取り組み、個人として集団として力量を高めているのである。

 以上、小学校では教務主任と並んで研究主任の役割が大きいこと、大規模校では学年主任の配置も重要であることがわかる。校種、学校規模、教員集団、地域によってミドルリーダーの実相は異なり、校長は制約条件において人材配置・人材登用に取り組んでいるのである。

 

Profile
大阪教育大学連合教職大学院教授
大脇康弘
おおわき・やすひろ 教育経営学・教師教育学専攻。大学・教育委員会の連携事業としてスクールリーダー・フォーラム事業を組織し、日本教育経営学会実践研究賞を受賞。『学校をエンパワーメントする評価』『「東アジア的教師」の今』『学校を変える授業を創る』など。

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大脇康弘

大阪教育大学連合教職大学院教授

教育経営学・教師教育学専攻。大学・教育委員会の連携事業としてスクールリーダー・フォーラム事業を組織し、日本教育経営学会実践研究賞を受賞。『学校をエンパワーメントする評価』『「東アジア的教師」の今』『学校を変える授業を創る』など。

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