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ミドルリーダーが創るこれからの学校

大脇康弘

ミドルリーダーが創るこれからの学校 第5回 多様なミドルリーダー

NEW学校マネジメント

2019.07.09

ミドルリーダーが創るこれからの学校

第5回 多様なミドルリーダー
『新教育課程ライブラリ Vol.5』2016年5月

「新たな職」の設置

 今回はミドルリーダーの種類と職務について総合的に整理したい。連載第1回で、ミドルリーダーとは「学校づくりを最前線で担うチームリーダー」であり、「トップとローワーを結ぶ連結ピン」として、「校長・教頭の補助、担当校務の企画運営、関係教員の連絡調整・支援を行う」と定義した。具体的な職種として、主幹教諭・指導教諭、教務主任・研究主任・生徒指導主事・進路指導主事、学年主任などがある。ミドルリーダーは担当校務によって役割は多様であり、加えて学校規模、教員構成、学校文化、地域によってその役割と活動は多種多様である。

 学校は校長・教頭の管理職を除くと多数の教員から構成されるという時代が長く続いた。教員横並びの「なべぶた型組織」といわれ、その同僚性や階層性の強弱と関わって組織運営の功罪が論じられてきた。ここで留意しておきたいことは、学校には多種類の人々が勤務し、教員の教育活動、学校運営を支えてきたことである。主な教職員に、養護教諭、事務職員、学校用務員、技術職員、実習助手などがいる。

 ところが、ここ10年前後で「新たな職」が創設され、学校組織の様相は大きく変化してきた。学校教育法の改正(2007)により、副校長、主幹教諭、指導教諭が創設された(学校教育法第37条)。

 副校長は、校長を助け、命を受けて校務をつかさどると規定され、校長と教頭の間に置かれる職で、任意設置とされた。主幹教諭は、校長および教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、並びに児童・生徒の教育をつかさどるとされた。指導教諭は、児童・生徒の教育をつかさどり、並びに教諭その他の職員に対して、教育指導の改善および充実のために必要な指導および助言を行うとされた。

 この中で副校長と主幹教諭は管理職か教諭かの違いはあるが、学校のライン系列を強化するものである。ただし、その設置状況は各県、各市町村によって多様であり、実際の役割・機能の違いは大きい。主幹教諭に先立って設置された同種の職に、兵庫県の「主幹教諭」、東京都の「主幹」、大阪府の「首席」がある。さらに、東京都では「統括校長」が、大阪府では「准校長」が校長職の一種として設置されるなど、地域ごとに異なる。

 近年になると、雇用形態が正規雇用、講師(常勤、非常勤)、再任用などと多様化し、教職員の役割と働き方の違いが大きくなり、学校の教員文化は「なべぶた型」と異なる様相を呈してきている。

多様な主任層

 次に、ミドルリーダーの代表である主任職をみよう。学校には従来から多様な主任が存在していた。主任の制度化(1976)は、学校経営組織を全国的に標準化し共通化することによって、学校管理体制の強化をめざすものであった。文部省は中教審「四六答申」(1971)に即して、教務・生活・保健の三部長を中間管理職として省令化する構想をもっていたが、自民党文教部会から批判されて断念した後、教育指導職として主任の制度化を強行することとなった。そこでは、主任の職務を上司として指示命令を発するのではなく、指導助言や連絡調整に当たることと規定した。省令化する主任の種類は、かなりの学校で慣習法的に設置されてきた主任を制度化するという方針で臨んだ。しかし、この妥協策は主任の性格、選任方法、主任手当・処遇をめぐって多様性を認めるとともに曖昧さを持ち込むこととなった。そして、主任制や主任手当をめぐる反対闘争が重ねられる中で、主任の役割と活動は都道府県、市町村、学校ごとに実態が異なってきたのである。

 さて、主任として文部省令(当時)で規定されたのは、教務主任、学年主任、保健主事、生徒指導主事、進路指導主事などである。その他の主任としては、校務主任、研究主任、教科主任、人権教育主任、学校安全主任、防災主任などがある。

 主任の役割は、学校教育法施行規則第44条に校長の監督を受け、それぞれ担当する校務に関する事項について、学校内における連絡調整および関係教職員に対する指導、助言に当たると規定されている。学年主任の職務をみると、先の省令を受けた施行通達の留意事項に次のように記されている。

学年主任:校長の監督を受け、学年の経営方針の設定、学年行事の計画・実施等当該学年の教育活動に関する事項について、当該学年の学級担任及び他の学年主任、教務主任、生徒指導主事等との連絡調整に当たるとともに、当該学年の学級担任に対する指導、助言に当たるものであること。

 

主任制をめぐる課題

 日本教育経営学会科研委員会(代表・堀内孜〈現・兵庫教育大学特任教授〉)が全国質問紙調査と事例調査を行い、『学校組織・教職員勤務の実態と改革課題』(多賀出版、2001)を刊行したが、そこで筆者は主任制度について調査報告した。当時の主任制の実態を要約すると、次のようになる。

 主任の役割遂行度については、全般的に予想以上に高い評価がなされていた。各学年主任、教務主任、生徒指導主事(中学校)のいずれにおいても連絡調整機能は極めてよく遂行されている。これに対して、指導助言機能はある程度遂行されているが、厳しい評価をすれば、十分に遂行されているとはいえない。また、校長・教頭の補佐機能は各学年主任では遂行度は低く、教務主任と生徒指導主事ではある程度遂行されている。他方、事例調査では、主任の機能は連絡調整活動に終始しがちで、指導助言活動は極めて不十分であるとされており、質問紙調査とのずれが小さくなかった。

 同じころに出された中教審答申(1998)は、主任制は時間を要したが概ね定着した一方で、「主任制が形骸化している例」がみられ、主任制の種類や設置を全国共通なものと各地域・各学校ごとに置くものに再編すべきと提起している。先の「新しい職」の設置は、この主任制の形骸化、標準化を再編成する一環ともいえる。主幹教諭の職務規定が「他の教諭等に対して指示することができる」としている点に留意したい。ただし、主幹教諭と教務主任を兼ねるなどの事例をみると、独自な職種として位置づくのは容易ではない。

 学校経営の自律性を高め機動的な学校運営を進めるためには、各種主任が組織運営の要としてチームをまとめ課題解決に取り組むことが求められる。そうした観点から、各種主任が担うべき機能を整理すると、担当校務に関して校長・教頭の補助、企画運営、連絡調整、育成支援、課題解決など多様である。ミドルリーダーへの役割期待は、今後とも大きくなると考えられる。

 

Profile
大阪教育大学連合教職大学院教授
大脇康弘
おおわき・やすひろ 教育経営学・教師教育学専攻。大学・教育委員会の連携事業としてスクールリーダー・フォーラム事業を組織し、日本教育経営学会実践研究賞を受賞。『学校をエンパワーメントする評価』『「東アジア的教師」の今』『学校を変える授業を創る』など。

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大阪教育大学連合教職大学院教授

教育経営学・教師教育学専攻。大学・教育委員会の連携事業としてスクールリーダー・フォーラム事業を組織し、日本教育経営学会実践研究賞を受賞。『学校をエンパワーメントする評価』『「東アジア的教師」の今』『学校を変える授業を創る』など。

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