わたしの学校経営手帳 女性管理職の視点から[第3回] 学び合い高め合う学校経営 豊かに響くハーモニーをめざして
学校マネジメント
2021.12.20
わたしの学校経営手帳
女性管理職の視点から[第3回]
theme:よさとチーム力を生かし高める学校づくりと管理職の役割
opinion2:鹿児島県霧島市立牧園中学校長 米森孝代
(『新教育ライブラリ Premier II』Vol.3 2021年8月)
学び合い高め合う学校経営
豊かに響くハーモニーをめざして
教育目標に込めた願いと具現化に向けて
「学び合い高め合う生徒の育成」。これは、生徒一人一人の個性が輝き、互いの価値観を大切にしながら成長してほしいという願いを込めた教育目標です。
日頃の教育活動のあらゆる場面で、生徒や職員が振り返ることができるように、グランドデザインにチェック項目として次のように示しています(表1)。
豊かな教育環境を生かして
校歌にも歌われる霧島連山、世界に誇る国際音楽ホール(みやまコンセール)や霧島自然ふれあいセンター等の素晴らしい教育環境に恵まれている本校です。純朴な生徒たちの笑顔と歌声には毎日パワーをもらっています。
6小学校から入学した生徒たちは、互いの個性や価値観を認め合い、温かい絆で結ばれていきます。
高め合う場をつくる教師の姿
本校では鹿児島県「学びの組織活性化推進プロジェクト」の取組や霧島市「授業連動型家庭学習」研究協力校としての研究公開などに取り組むことで、チームとしての研修体制を構築してきました。当初、小規模校で2つの研究を同時に推進していくことができるだろうかとの思いもありましたが、ねらいは「学力向上」一つ。そのためにできることをさまざまな観点から研究しているのだという前向きな職員の姿がありました。自ら高め合う集団となってくれたことを本当に嬉しく思いました。学力向上への取組は年間を通してつながっており、それを意識し、見通しをもって進めていけるようサイクルをまとめています(図1)。
カリキュラム・オーバーロードの解消に向けて
どの学校でも教科以外に環境教育・人権教育・国際理解教育・食育など、多くの領域を学ばせています。それは学校教育に寄せられている「期待」として、社会の課題や要請に応じたものであり、大切な学びではあるものの、限られた授業日数・時数の中ではもう飽和状態ではないかという思いをもっていました。このようなカリキュラム・オーバーロードを解消するために研究を推進している学校もあるようです。
学習指導要領の前文を読み、「予測できないような大きな社会的変化を乗り越えて多様な人々と協働しながら持続可能な社会の創り手になってほしい」という願いは、カリキュラムを見直す中で、最も大事にしたい理念だと感じました。
令和2年度、コロナ禍により実施できなくなった総合的な学習の時間の配分を見直し「SDGsの理念を生徒たちと共有する時間」に切り替えました。SDGsについて専門的な知識をもった職員はいませんでしたので、夏季休業中にさまざまな資料や実践例・理解を助けるスタートブックなどを研究したり、専門家を招聘して研修を行ったりして準備を進め、2学期の授業を構築しました。結果的にはカリキュラム・オーバーロードの解消に向けた小さな一歩が踏み出せたような実感を得ました。
SDGsの理念を知ると「○○教育」で扱っていたさまざまな課題には関連性があることに気付きます。それらを整理統合していくような視点でカリキュラムを見直していきたいと思います。SDGsの目標テーマは17個ありますが、生徒一人一人が興味・関心のある分野から探究していく中で、さまざまな課題は関連があると気付くことでしょう。やがて社会の担い手として、自分の行動をしっかりと選択できる資質が育まれると思います。
SDGsの学びから数か月後、目標13の「気候変動に具体的な対策を」に興味をもった生徒たちが新たなボランティアチームを結成し、緑化環境づくりの実践を始めました。グリーンカーテンは校舎2階まで成長しています。SDGs関連の校内展示も充実してきました(写真1、2)。
学校経営の中で感じていることは、職員・生徒・保護者や地域の方々それぞれのよさ・個性・価値観をいかに組み合わせ、全体のバランスを調整していくかということ。その過程は音楽づくりと似ていると感じます。どのような響きをめざしているのか、自分の思いが明確でなければ方向性が定まらないと考えます。時には客席から聴いてみるような感覚で全体を捉えつつ、より豊かな響きをめざしていきたいと思います。
女性教員へのメッセージ
「何をするか」より「誰とするか」はとても大切なポイントではないでしょうか。
困難だと思われる場面でも、共に汗を流し、笑い合える仲間たちの存在に支えられました。「あの人とだったら一緒に頑張りたい」と感じてもらえるよう、人間力を磨き、充実した日々にしたいものです。夫も行政職や中学校長職にありましたので、別居生活は17年。一番の理解者、職業人としての先輩に恵まれたことを感謝しています。
Profile
米森孝代 よねもり・たかよ
昭和36年生まれ。鹿児島大学卒、専門は音楽科。平成17年薩摩川内市立高江中学校教頭、平成25年薩摩川内市教育委員会指導主事、平成28年霧島市立溝辺中学校長を経て、平成31年4月より現職。二人娘の母、孫四人。趣味はフラワーガーデン作り。夫と畑を開墾し、養蜂・養鶏・自給自足への道を邁進中。
●大切にしていることば
できない理由よりできる方法を考えよう