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自己との対話で惑わない生き方を

NEWトピック教育課題

2019.07.26

教育は200年の大系

■いのちをつなぐということ

─法話を通して感じたり考えたりしたことは。

 私は、東日本大震災が起こってからずっと被災地を巡って法話をしてきたのですが、被災地を目の前にすると、私がそれまで説いてきたことは、実は平和の時だけの、机の上だけの学びだったのではないかと思い始めたんです。そう思いながら自分の法話を振り返ってみたら、なんだか自分の話が単なる自慢話に聞こえてきたんですね。そんな時、学校法話の最中に、校長先生や教頭先生の下には若い先生たちがいる、若い先生たちの前には子どもたちがいて、子どもたちの先には、彼らから生まれてくる新しいいのちがあると気がつきました。そうすると自慢話なんかしている場合じゃない、いのちをつなぐこと、生き方の大事さを伝えなければと思ったんです。

─いのちをつなぐということの意味は。

 こんな話があります。今度孫が生まれてくるというお婆さんがナポレオンのところに来て「何歳から教育を始めたらいいでしょう」と尋ねたところ、ナポレオンは、「今度生まれてくる子から数えて7代前から教育を始めなければならない」と言いました。そこで、「それでは手遅れではないか」とお婆さんが反論したら彼は、「あなた自身が7代前と思って学んだならば、7代先の子はきっとよくなるだろう」と言ったそうです。1代が30年くらいとすると、200年先の子のことを考えよ、ということです。同じ例ですが、アメリカン・ネイティブのイロコイ族は、会議をするときには7代先の子どもたちのことを考えて議論をするといいます。私たちは、自分たちの祖父母の名前は言えても、曽祖父母になるとあやしくなり、その前の代の名前となると、ほとんどの人が言えないし、存在感も感じられないでしょう。今生きている我々も代が下っていくと存在さえもなくなっていくのです。つまり、個のいのちには限界があるということです。

 しかし、自分の信念や生き方はつないでいくことができます。例えば、ある時、師匠と共に参加した会で、有名な男優さんが「私の信条は、『かたよらない心・こだわらない心・とらわれない心、ひろくひろくもっとひろく』です」と言いました。彼はそれが師匠の言葉とは知らずに師匠の前で語ったんです。そして、その言葉を自分の信条として子どもや孫に伝えていくわけです。言葉が信条となって次の時代に継がれていくことで、何代も先の子へつないでいける。だからこそ、自分の子どもや教え子など直接会える人たちを通して、大切なことは何かということを伝えていくことが、これからの教育の本質的なあり方ではないかと考えているのです。つまり、教育を200年の大系として捉え直していくことが、今こそ大事なことではないでしょうか。

自分らしさを大切に

■自分の道探し

─よりよく生きるための視点を教えてください。

 いのちを自分のために使いましょうということです。最近あるライフプランナーの方にお会いしました。彼は、一流大学から一流企業といわれる会社に勤めたのですが、30歳を超えて転職した人物です。その彼が言うには、みんなが大学に行くから行き、みんなが就職するから会社に行き、仕事が与えられるから一所懸命に仕事をして地位も得たけれど、心の中で何かが違うと思っていたそうです。自分は、実は人と直接会う仕事が好きだということに気付いた時に、ライフプランナーの仕事に出合い、迷いなく転職を決めたと言います。最初の2、3年は食べられない時期もあったそうですが、好きな仕事だったので、めきめき力をつけて今は一流と言われる評価を得ています。

─自分の生き方を見つけるということですね。

 そうです。結局はそこが一番大事なのではないでしょうか。早くから一本道に入るのもいいとは思いますが、選択肢はたくさん見て、徐々に整理していって、自分がいいと思ったところを残していくという生き方がいいのではないかと思います。もちろん、一つの仕事に打ち込んでいても同じ。いろいろ迷いがある時に、どれが自分らしい道かを自問して決めていけばいい。自分との対話を通して自分らしい生き方を見つけていければいいですね。

(取材・構成/編集部 萩原和夫)


有限な自分のいのちを無限な未来のために、
大切なものを大切につなぎ伝える。
それが大事。

 

Profile
大谷徹奘
おおたに・てつじょう 1963 年4月16 日、東京都江東区にある浄土宗の重願寺(じゅうがんじ)住職の大谷旭雄(おおたにきょくゆう)の二男として生まれる。芝学園高等学校在学中17 歳の時、故・高田好胤薬師寺住職に師事、薬師寺の僧侶となる 龍谷大学文学部仏教学科卒業、同大学院修士課程修了。1999 年春から全国各地で「心を耕そう」をスローガンに法話行脚。2003 年8月16 日、薬師寺執事就任、現在に至る。

 

 

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