ぎょうせい「学びのある」学校づくりへの羅針盤 スクールリーダーのための実務情報サイト

学校改革の新定石

西留安雄

学校改革の新定石 第12回 学習状況調査の数値の一致

NEWトピック教育課題

2019.07.24

学校改革の新定石 

第12回 学習状況調査の数値の一致
『新教育課程ライブラリ Vol.12』2016年12月

 全国学力・学習状況調査の結果が公表されると、この結果の数値を学校評価で分析をする学校も多い。また、その数値を保護者へ報告する学校がある。成果と課題、分析、今後の取組み等の報告が中心となるが、調査結果の概要、調査結果を基にした今後の取組み等をお知らせすることは当然のことだ。

 こうした取組みを根気強く行えば、保護者の協力も得られ、授業力や学力は確実に向上するはずだ。しかし、取組みが成果に結びつかないのはなぜだろう。質問紙の子供と教師の数値に着目し、一致させる方策を見出すとよい。

教師と子供の意識との乖離

 全国学力・学習状況調査では、児童生徒の質問紙及び学校質問紙の結果の報告も出される。毎年、感じることだが教師と生徒との数値の違いには驚かされる。一つの自治体だけではなく複数の自治体から見られる。平成27年度の全国の公立中学校のデータを分析した。

①めあてや学習課題の提示

 教師の数値は95.7、生徒は79.7、何と16.0ポイントの差がある。大きな意識のずれがある。

②話し合いや発表する学習活動の設定

 教師の数値は63.3、生徒の数値は65.7、2.4ポイントの差がある。教師と生徒との間で、授業で話し合う活動を行っていると肯定的に回答した割合と、話し合い活動を通じて、考えを深めたり、広げたりすることができると肯定的に回答する割合に大きな違いはない。

③振り返りの活動の充実

 教師の数値は90.9、生徒は59.3で、31.6の数値の開きがある。教師と生徒の意識のずれが大きく、教師が指導を行ったと考えていても生徒はそのように受け取っていない。

 出てきた数値をどのように生かすのかを吟味することが喫緊の課題ではないだろうか。教師は「行っている」と思っていても、生徒は「そうではない」と考えているからだ。

授業評価(学校評価)との連動

 授業評価は、「分かる授業」が行われているかを、学校として教師個々として多面的に評価することがねらいだ。出てきた数値を学校全体の授業改善につなげていけるかがカギとなる。どのような視点で授業改善をしていくのか、どんな手立てで改善するのか等を学校全体で共有し、授業改善を進めていかなければならない。その際重要なことは、評価の結果や問題点、改善の方法を内外に明らかにすることが重要である。

 こうした方向性は間違いないが、ここで課題が残る。「教師個々の授業評価」に視点を当てているかどうかだ。学校全体では、どうしても全体の数値しか出ず、教師個々の責任が曖昧になる。これでは教師個々の授業力の向上は望めない。どの教師がどのくらい授業力があるか、どんなところにつまずきの部分があるかを明らかにする必要がある。出てくる数値が教師の「行っている」という思い込みに歯止めをかけられる。なお、授業は児童生徒にも責任があるので、ぜひ検証してほしい。子供が「主体的・対話的で深い学び」に取り組んでいるかの自己評価をさせるのも一つの方法である。

質問紙数値の一致策

①学習課題の設定をドラマチックに

 学習課題は、教師が押し付けるものではなく、子供たちが自ら設定したり、教師との合作で設定するものだ。この趣旨は、子供たちが主体的に協働的に学習するためだ。丁寧にドラマチックに「課題の設定」をするとよい。問題を提示した後、「課題を書きますのでノートに写してください」としてはいけない。

 まず、授業の直前に次の3項目の作業をしておく。①グッズの掲示(シラバス・授業中の発表の仕方を決めた「言語わざ」グッズ、②板書する子供の名札の用意 ③ゴールを見通す□欄の設定等だ。授業に入ったら、問題(資料)を提示する。その後、子供が各自で問いをもち仲間と問いを共有し、課題設定となる。その一連の作業を丁寧にしていく。

②授業進行係りの導入

 教師主体の授業では、「子供同士が学び合い、自ら考え表現しながら本質的な学びを生み出す授業」にはならない。子供が教師を頼らず仲間と協働して創る授業ができたとき、はじめて授業は成立する。そのために授業進行係りを導入するとよい。最初は、授業進行係りに多くは望まなくてよい。司会(全体司会者・各学習段階の司会者等)が主となる。

③学んだことが実感できる振り返り

 「何が分かったか」「もっと知りたいこと」「友から学んだこと」「今日学んだキーワード」の4視点でまとめさせる。大事なことは、自分の言葉でまとめられるかどうかだ。教師がまとめない、まとめの板書を写させない、振り返りを毎時間書かせる等に留意させる。学力・学習状況調査の問題にある「時数制限や条件に合わせて書く活動」は、振り返りの活動と、密接に関連している。

 条例や学校管理運営規則等で規定されている学校評価(授業評価)を形ばかりで終えている学校も少なくない。曖昧な数値で報告書を出していたら学校も教師も何も変わらない。教師と子供の質問紙の数値が一致するような方策をとることが重要である。

 

Profile
西留安雄
にしどめ・やすお 東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。大岱小では校長在任中に当時学力困難校といわれた同校を都内トップ校に育てた。現在、高知県・熊本県など各地の学力向上の指導に当たり、授業・校務の一体改革を唱える。主著に『学びを起こす授業改革』『どの学校でもできる! 学力向上の処方箋』など。

この記事をシェアする

特集 見えてきた新学習指導要領─各教科等の検討内容

新教育課程ライブラリ Vol.122016年12月

2016/12 発売

ご購入はこちら

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

西留安雄

西留安雄

清瀬富士見幼稚園長

東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。

閉じる