学校改革の新定石

西留安雄

学校改革の新定石 第11回 新学習指導要領の授業時数増に対応する(後)

トピック教育課題

2019.07.24

学校改革の新定石 

第11回 新学習指導要領の授業時数増に対応する(後)
『新教育課程ライブラリ Vol.11』2016年11月

学力向上の基本的な考え方

 私は、全国の学校へ、子供が自ら課題を発見して学習課題を解決する「アクティブ・ラーニング」を強く指導してきた。その結果、多くの学校が授業に取り入れ、全国学力・学習状況調査でよい結果が出た。確実に学力の数値が伸びているところをみると、アクティブ・ラーニングの指導方法は間違いないと思われる。

 これまでの学力向上策は、学力向上だけに視点を置く対症療法ではなかっただろうか。各種調査のデータの分析から学力向上プランを作成しても、学力が向上しなかったのはそうしたことが原因である。

 そこで、学力向上を本質論から考えるとよい。まず、何年かけて伸ばすのか、時間の確保をどうするか、どんな組織で向上させるのか、どのような方策でいくのか等の視点に立つことが重要だ。また、授業時間カットは絶対にしない、標準時数より多くの授業時数を保つ、小中高で縦系列の指導方法を統一する、講義調から子供同士の対話的な学びの授業へ変える等の考え方を大事にする、などということである。

具体策にどう取り組むのか

 では、学力向上のためにはどのように取り組めばよいのか。以下の手順で考えてみるとよい。

①アクティブ・ラーニングによる授業改善

 子供が学習課題を受け止め、考え、仲間と伝え合い、まとめ、定着問題にチャレンジし、学習を振り返る等の学習過程の授業だ。次の学習指導要領が示す「主体的・協働的」な授業である。具体的には、課題解決学習、問題解決学習、グループ学習、ディスカッション、教科での話し合い等のアクティブ・ラーニングである。一斉授業だけでなくペアで意見交換、ホワイトボードでの話し合い、付箋を使った話し合い等だ。

②問題解決的な授業の推進

 対話的な学びは、事象を「共有」することがポイントとなる(表参照)。①「問題提示」で気付いたことを出し合う場面、②「問いの共有」で解決の見通しを仲間で共有する場面、③「集団解決」でペアや班で教えたり教わったりする場面、④「価値の共有」で仲間のまとめたことを共有する場面、⑤「振り返り」で仲間から学んだことを共有する場面等が主となる。

③朝(夕)学習の工夫

 全学年、朝(夕)学習年間計画表を作成する。A・B問題の年間計画表を作成し、担任任せ、学年任せにはしない。取り組む内容は、A問題とB問題をバランスよく設定する。朝(夕)学習として、月は国語A、火は算数A、水は国語B、木は算数B、金は他教科を行う方法がある。昼学習も朝と同様にA・B問題を1日おきに行う。

④調査結果の検証とサイクルの構築

 学力の調査結果を、即、分析し事後指導することで学力の向上へつなげる。まず、学力の調査結果で課題が見つかれば、翌日には対処する。4月全国学テ実施・即座の自己採点、5月課題の分析、6月~11月具体策検討・実施、12月県版の学テの実施、1月~3月具体策検討・実施等のサイクルを構築する。

⑤書く活動の充実

 自分の考えを書く時間を授業(自力解決、友達の考え、振り返り等)の中に位置付ける。毎月1回、作文の時間(行事・教科等)を設定する。文を繰り返し推敲させ、清書することを取り入れる。字数制限など条件に合わせて書く活動、定期テストに記述式問題を取り入れる等を工夫する。これにより無答が減る。

⑥個別指導の充実

 放課後、分かるまで再テストを繰り返す。きめ細かに指導する。担任だけでなく、全教師が協力して指導する。

⑦家庭学習の充実

 「家庭学習の手引き」を配布し、家庭と学習方法について共有する。「授業→家庭学習→次の日の学習」のサイクルを重視し、学習意欲をもたせる。

⑧サマースクール

 教師に負担がかからないようにボランティア制度を整えるとよい。中学生が小学生の採点、高校生が中学生の採点等が考えられる。地域ぐるみで取り組む制度ができると学校や地域が活性化する。

⑨校長が授業を知り尽くす

 高知県教育委員会が進める「高知県授業づくりBasicガイドブック」を丁寧に読みこなし、教職員と実践し、一つの授業スタイルを獲得した校長がいる。現在では、校長自身が学校一番の授業改善の実践者となっている。校長が授業を知り尽くし語れるようになると、教職員は頼ってくる。「授業は研究主任だけに任せる」のではなく、校長自身が率先して学ぶことが重要である。

 

Profile
西留安雄
にしどめ・やすお 東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。大岱小では校長在任中に当時学力困難校といわれた同校を都内トップ校に育てた。現在、高知県・熊本県など各地の学力向上の指導に当たり、授業・校務の一体改革を唱える。主著に『学びを起こす授業改革』『どの学校でもできる! 学力向上の処方箋』など。

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

特集 「社会に開かれた教育課程」を考える

新教育課程ライブラリ Vol.112016年11月

2016/11 発売

ご購入はこちら

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

西留安雄

西留安雄

清瀬富士見幼稚園長

東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。

閉じる