学校改革の新定石

西留安雄

学校改革の新定石 第10回 新学習指導要領の授業時数増に対応する(前)

トピック教育課題

2019.07.16

学校改革の新定石

第10回 新学習指導要領の授業時数増に対応する(前)
『新教育課程ライブラリ Vol.10』2016年10月

 中央教育審議会が新学習指導要領に向けた審議のまとめを公表した。小学校高学年の「外国語活動」が教科に格上げされ、年間の授業時数は70コマ分に倍増する。他教科と合わせると総時間数は、1015コマとなる。研究会に参加すると、「小学校で児童の負担などから週28コマ(年間980コマ分)を超える授業時数が必要であるので何らかの対応が必要」との発言があった。こうした課題に、「夏休みを短縮して対応」「朝の時間を英語にし、15分×3日=1コマ分と換算」「下校を繰り下げる」等の方策があることも聞いた。

 どうしてこうした対応策しか出てこないのだろう。週28コマを超えると子どもに負担がかかるのだろうか。安易に下校を繰り下げたり、夏休みを短縮してよいのだろうか。第8回でも書いたが、週29コマで年間1083コマを当たり前のようにこなしてきた元勤務校の実態からすると、予想される年間1015コマは、そんなに気にする授業数ではない。

週時程を子ども・保護者目線から見た課題

 学校改革を進める際、職員と「週時程から見える学校の疑問」のワークショップを行ったことがある。その折に職員から出された付箋の内容だ。

①教師には多忙感があるが、朝の活動内容を変えたがらない。
②職員間を優先するため、職員朝会が当たり前となっている。
③運動会や卒業式等は特別時程を組み、練習、練習、本番としている。
④家庭訪問や個人面談を長期休業中に行わず、普段の日に行い授業カットをしている。
⑤毎日、朝の活動内容が変わり、落ち着いて学習ができない。
⑥行事を1日の真ん中の時間に実施するため、次の授業に影響がある。
⑦研究会や職員会議を理由に授業カットをすることは、保護者に通じるだろうか。
⑧1校時の始まりが遅いため、冬は暗い中で下校している。
⑨A時程、B時程など、子どもにとって複雑な週時程となっている。

 新たな教科の時数増に対応するためには、「子どもに迷惑をかけない」という学校や教師の意識が必要だ。対策に従来の学校観を重ねてはならない。こうした考えのもと、元勤務校は、次のような週時程を開発した。

学校の在り方が問われる週時程編成

 週時程を設定する時、子ども目線から考えてみたらどうだろう。6時間目が遅くなることで帰りは大丈夫だろうか。午前中の時程や活動内容が微妙に変わったりすることで戸惑いや多忙感はないだろうか。こうした視点に立つと、いくつかの対策が出た。

①授業カットは絶対にしない。
②職員会議等は、行わないか長期休業中に行う。
③下校時刻を3時前にする(子どもは下校してからも遊びという尊い活動がある)。
④行事や会は時間が伸びても授業時間には影響しないために6校時に行う。
⑤1校時を早く始めるため、職員朝会を行わない。
⑥午前中は時程を変えない。
⑦5分休みとする(東京では当たり前)。
⑧時間短縮と発達段階に合わせるために給食・清掃・昼休みは区切らない。
⑨研究授業は、授業時数の確保のため6校時に行う。
⑩始業式の翌日から6時間授業を行う。
⑪できれば2学期制を行い、授業時数を確保する。
⑫特別時程を組まない。
⑬午前授業のみの時は、5時間授業とする。
⑭短縮授業はしない。
⑮校務改革を進め、子どもや教師にゆとりをもたせる。
⑯最大限、週30コマを予定する。
⑰個人面談や家庭訪問は、長期休業日に行う。

 授業時数増は、学校の在り方を問いている。これまで当たり前としてきたことを見直せば、対応策が出てくるはずだ。子ども目線、保護者目線こそがヒントになる。

 

Profile
西留安雄
にしどめ・やすお 東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。大岱小では校長在任中に当時学力困難校といわれた同校を都内トップ校に育てた。現在、高知県・熊本県など各地の学力向上の指導に当たり、授業・校務の一体改革を唱える。主著に『学びを起こす授業改革』『どの学校でもできる! 学力向上の処方箋』など。

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清瀬富士見幼稚園長

東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。

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