ミドルリーダーが創るこれからの学校

大脇康弘

ミドルリーダーが創るこれからの学校 第10回 チームマネジメントの基本

トピック教育課題

2019.07.22

ミドルリーダーが創るこれからの学校

第10回 チームマネジメントの基本
『新教育課程ライブラリ Vol.10』2016年10月

チームワークを高める

 学校は学年・教科、分掌ごとに小集団に分かれて、緩やかにつながりながら運営されている。これまで述べたように、学校は個業リンク型組織で、分散型リーダーシップが布置され、それをスクールリーダーがタテ、ヨコ、ナナメに交錯する形で担っている(マトリックス型組織)。そこでは、牽引型リーダーに傾斜する傾向がみられるが、チーム形成型リーダーの重要性を提起した。今回は、ミドルリーダーの在り方を、チームマネジメントの枠組みから論じることにする。

 学校ではチームワーク、チームプレー、協力と思いやりが強調されるが、実際には葛藤やあつれきがみられる。また、教職員の集団主義志向が弱まる一方で、個人主義志向が強まり、集団の一体感や相互協力を重視しない風潮もある。チームとして目標を共有し、課題解決に向けて取り組む中で、集団の組織力が高まり個人の成長がみられることは、実践的にも経験的にも知られている。

 チームマネジメントはスポーツ分野だけでなく、経営・医療・福祉の分野で研究されてきたが、学校経営分野では論じられていない。そこで、経営学・心理学の知見を手がかりに、学校におけるチームマネジメントについて考えることにする。

 古典となった『経営学大辞典』(中央経済社、1988年)には、「チーム・ワーク」の項目が取り上げられ、「団結心を基礎として、各メンバーが共通の目標を達成するために、各自の役割分担を明確にし、協働していく小集団の集団的行動」と定義されている。仲間意識、目標の共有、協力行動が主な要素となっている。

 組織心理学者の古川久敬は『チームマネジメント』(日経文庫、2004年)を著し、チームワークを次の3つのレベルに分けて論じている。レベル1は、メンバーが円滑に連携し、協力的な人間関係がみられる。適切な報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を通した情報共有がある。レベル2は、メンバーが自己の役割遂行とともに、その役割を超えてチームのために建設的な行動を行う。レベル3は、メンバー相互の知的刺激や交流を通して、創発的なコラボレーションが生み出される。レベル1の円滑な協力を基礎に、レベル2の役割を超えたチーム活動が行われ、さらにレベル3の創発的なコラボレーションが期待されるのである。

 スクールリーダーはチームワークを高めるために、どのようなチームマネジメントをすればよいのだろうか。

「構造づくり」と「配慮」という二軸

 チームマネジメントとは、「チームの課題や目標を、メンバーとともに確実に達成するために働きかけること」(古川久敬)である。そのヒントは、これまで蓄積されてきたリーダーシップ研究にある。

 金井壽宏の『リーダーシップ入門』(日経文庫、2005年)は、リーダーシップ研究と実践家の持論を総合的に整理した良書である。理論と実践をつなげることを基本に据えて、ティシーがいう「リーダーシップについて、自分の経験や観察を通じて、教えようと思えば、教えられる自分なりの考え、見解」(TPOV)を取り出すことを重視している。

 ここでは、多くのリーダーシップ研究の中で、世界的に有名な二つの理論を示しておく。一つは、三隅二不二(じゅうじ)が提唱した「PM理論」で、リーダーシップ行動は、目標達成機能:Performance(P)と集団維持機能:Maintenance(M)の2次元で把握できるとする。P機能は、目標設定や計画立案、メンバーへの指示などにより目標を達成する機能であり、M機能は、メンバー間の人間関係を良好に保ち、集団のまとまりを維持する機能である。リーダーシップ行動は、この二つの機能の高低によりPM型、Pm型、pM型、pm型という4類型に整理され、PとMが共に高いPM型が望ましいとする(『リーダーシップ行動の科学』有斐閣、1978年)。複雑なリーダーシップ行動を2次元で簡潔明快に把握し、振り返ることができる点で有意義である。

 もう一つは、オハイオ州立大学のリーダーシップ研究で、「LBDQ12次元様式」として知られている。オハイオ研究は、リーダー行動の測定尺度を作成することを主眼にして、リーダー行動を記述する12次元様式質問票(100項目)を用いて多様な調査を実施した。その結果、リーダー行動の半数以上は「構造づくり」と「配慮」の2つの次元に集約された。

 構造づくり(initiating structure)とは、組織が確実な成果を上げられるように、仕事の枠組みとルールをつくり、メンバーの仕事を管理する行動である。配慮(consideration)とは、メンバーを思いやり、励まし、人間関係を維持する行動である(Stogdill,R.M. 1963, Manual for the Leader Behaviour Description Questionnaire - FormⅫ)。12次元のうち2次元が基本となっていることを確認できた点で興味深い研究である。

 以上二つの理論研究を比べると、かなり類似している点が多く、PM理論のP機能が構造づくりに、M機能が配慮に関連が深く、いずれも課題と対人関係という二つの軸に関連して説明されるのである。

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特集 全国学力・学習状況調査にみるこれからの課題

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大脇康弘

大阪教育大学連合教職大学院教授

教育経営学・教師教育学専攻。大学・教育委員会の連携事業としてスクールリーダー・フォーラム事業を組織し、日本教育経営学会実践研究賞を受賞。『学校をエンパワーメントする評価』『「東アジア的教師」の今』『学校を変える授業を創る』など。

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