【図書案内】『若手教師を育てるマネジメント─新たなライフコースを創る指導と支援─』(ぎょうせい)大脇康弘(関西福祉科学大学教授、大阪教育大学名誉教授)編著
新刊書のご案内
2019.06.27
大量採用時代における若手教師育成
このたび、若手教師の成長を願い、教育実践者として確かな基盤を形成することを願って、『若手教師を育てるマネジメント』を編集しました。
大量採用時代になって、学校には20代、30代前半の若手教師が半数を超えるようになりました。教師が世代交代して若返る一方で、教育実践と学校づくりの経験の継承が難しくなり、日常的な問題対応は増えてきています。校長・教頭は、学年編成・学級担任配置の工夫をはじめ、若手教師の授業実践、学級づくり、保護者対応について目配りし、必要に応じて指導助言、育成支援を心掛けています。
今日の学校は、新学習指導要領の「社会に開かれた教育課程」をはじめ、三つの中央教育審議会答申「チームとしての学校」「コミュニティ・スクール」「教員の資質能力向上」で提起された教育課題に対応することを求められています。若手教師は即戦力となるだけでなく、新たな教育課題を担う未来人材として期待されています。
さらに、教員育成協議会によって教員育成指標が作成され、教師のライフステージを見通した教員研修計画が実施されようとしています。
若手教師を育成する枠組み・戦略を提案
本書は、こうした変革期において校長・教頭が、若手教師を育成する枠組み・戦略と具体的方法を提案します。特に、教師のライフコース(教職経験の軌跡と生き方)というロングスパンの視野をもちながら、若手教師が成長する道筋を見定め、その育成と支援を考えていきます。その際、教職経験を指標に若手教師を1~3年の初任教師、3~5年の若手教師、5~10年の若手教師の三つに焦点を当てて、「初任」「3年目」「ミドルに向かう時期」に分けて論じています。
教師の実践力については、「学級経営力」「授業を創る力」「保護者対応力」の3領域に分けて(第3章、第4章、第5章)扱っています。これらは、教職経験豊富で若手育成に実績をもつスクールリーダーが担当し、リアルで具体的な内容になっています。
若手教師を育てる視点と戦略について、教師のライフコース、教師文化、カリキュラム・マネジメントの視点から(第1章、第2章、第6章)扱っています。これは、学校現場に関わりが深い研究者が担当し、理論と実践を関係付けながら論じています。
第7章では、各学校、各地域における若手教師育成の取組をスクールリーダーが報告し、研究者がその意義と特徴をまとめています。
第8章では、ケースメソッド(ケース討議法)の実践を報告し、スクールリーダーが実践事例に即して当事者としていかに意思決定するかの学習法を論じています。ケース教材として「新任教師の育成」を掲載しています。
『若手教師を育てるマネジメント』のポイント
本書の特徴と独自性は次の点にあります。
1.教師のライフコース研究を踏まえて、若手教師の育成について「初任」「3年目」「ミドルに向かう時期」に分けて述べます。
2.若手教師の実践力について、「学級経営力」「授業を創る力」「保護者対応力」の3領域に分けて論じます。
3.学校マネジメント研究を踏まえて、学校経営、教師文化、校内研修体制という広がりにおいて若手教師の育成を考察します。
4.若手教師の育成について、特色ある学校、地域、教育委員会などの事例を報告します。
5.ケースメソッド学習法を紹介し、スクールリーダーの意思決定力を高める教育法を提起します。
これらは、若手教師の育成について校長・教頭の実践指針となり、具体的方法について示唆するところが大きいと考えます。また、若手教師自身にとっても自らのライフコースを考える上で、参照すべき点が多いと思います。
編著者 大脇康弘
おおわき・やすひろ (関西福祉科学大学教授、大阪教育大学名誉教授)