新課程を生かす 単元づくり・授業づくりの実際―私の問題意識 これまでの国語授業(筑波大学附属小学校教諭 弥延浩史)

授業づくりと評価

2019.12.11

新課程を生かす 単元づくり・授業づくりの実際

筑波大学附属小学校教諭
弥延浩史

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.6

私の問題意識 これまでの国語授業

 今回、単元づくりや授業づくりについて紹介させていただくことになったが、まずは私の国語授業における問題意識について述べさせていただきたい。

 新学習指導要領の全面実施を見据えたとき、「言葉による見方・考え方を働かせる」という点が大変重要になってくることは言わずもがなである。これまで、国語科の学習では次のようなことが問題として挙げられていた。例えば、「昨日は二場面の〇〇の気持ちを考えたので、今日は三場面の〇〇の気持ちを考えましょう」「昨日は7段落まで読んだので、今日は8段落から読んでいきます」というように、機械的に場面ごとや段落ごとに区切って進んでいく授業である。これでは、書かれていることの表面だけをなぞる授業になり、学びのつながりも不透明だ。学びのつながりとは、既習を生かした学習活動を展開したり、その単元で身に付けた力が別の単元などで生かされていったりするということである。何より、このような学習課題の出され方では、子供たちにとって学びの必要感は生まれるだろうか。

 私は、子供たちにとって、「考えてみたい!」とか「やってみたい!」と思えるような教材との出合わせ方が重要であると考える。さらに言えば、このような授業展開では系統的、段階的に言葉の力を身に付けさせていくことは難しいため、その単元でどのような言葉の力が身に付いたのかということが、子供たちにとって自覚できるものである必要があると考える。単元づくりや授業づくりには、このような視点が大切なのではないだろうか。

文学的文章の授業をつくる 「お手紙」を例に

 ここからは、実際に単元づくり・授業づくりについて、「お手紙(アーノルド・ローベル作)」について述べていく。現在採択されている国語科の教科書では、2年生もしくは1年生に掲載されている物語である。それぞれの教科書を比較すると、おおむね、「人物がしたことやそのときの様子について読み取ること」「想像を広げながら読むこと」などが挙げられ、単元のゴールとしては「音読劇にして表す」「がまくんやかえるくんなど登場人物に手紙を書く」「同一作家の本を読み、感想などを交流し合う」というような言語活動が設定されている。

 大事にしたいのが、子供たちにとって必要感のある、学びの必然性がある教材との出合わせ方をするという点だ。はじめに物語を一読した段階で、子供たちは既習事項と結び付けながら「時・場所・人物の設定」を捉えたり、あらすじを捉えたりすることをしていく。しかし、その段階での読みは独善的なものであると言えるだろう。

 そこで、子供たち同士の考えの違いを浮き彫りにする工夫を取り入れる。そうすることで、「なぜ、あの子はそういう風に考えたのかな」とか、「わたしはこう思うけれど、果たしてそれは妥当なのだろうか」と、さらに物語を深く読もうとする姿を引き出していく。

 これまでの学びとのつながりを想起させることも、意欲を喚起するという点で効果があるだけでなく、系統的に言葉の力を身に付けさせていくことができるだろう。子供たちは、1年生のときに物語には人物の変容が書かれることがあることを捉え、物語を通して最も大きく変容した人物が中心人物であると確認している。そこで、これまでの学習を生かし、「お手紙」では大きく変わった人物は誰なのかを決めて、自分の立場を明らかにするところから学習を始めることにした。そうすることによって、そこで見えてきた互いの考えの違いから、物語を詳しく読む必要感をもたせようとしたのである。以下、単元づくりについて紹介する。

単元づくりについて 学びのつながりと付けたい力を意識して

 単元のねらいとしては、大きく次の三つを設定した。

〇場面の展開を意識して読み、叙述に即して中心人物の心情を捉えることができる。
〇人物が「なぜ」「どのように」変容したのかについてまとめることができる。
〇がまくんとかえるくんのシリーズ作品を読み、人の人物像についてまとめ、感想を伝え合うことができる。

このように考えると、単元の評価規準は次のようになる。

【知識・技能】
・文の中における主語と述語との関係に気付いている。(1)カ

【思考力・判断力・表現力等】
・場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像している。C(1)エ
・文章の内容と自分の体験とを結び付けて、感想をもっている。C(1)オ
・語と語や文と文との続き方に注意しながら、内容のまとまりが分かるように書き表し方を工夫している。B(1)ウ

 また、主体的に取り組む態度として、次のことが言えるのではないだろうか。
・これまでに学習したことを振り返って学習課題を明確にし、学習の見通しをもち、進んで物語の人物の気持ちについて想像を広げながら物語を読んで感想をもとうとしている。

●単元の指導計画(全12時間)

第一次 短い話の読み聞かせを聞き、人物の変容についてまとめる (2時間)
第二次 「お手紙」を読み、人物の変容や人物像についてまとめる (7時間)
第三次 シリーズ作品を読み、二人の人物像を読み比べながら感想を紹介し合う (3時間)

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