●特集 コロナ禍での自治体業務イノベーション
コロナ禍における国・自治体間の法的、分権的な問題は別にして、報道では接種の遅れやトラブルなどが強調されがちだったワクチン接種について、自治体は国からの無理難題に近い要請や情報不足、さらに猫の目のように変わる状況に対応し、かなりのスピードで実施してきた。また、このコロナ禍の中では、ほかにも特別定額給付金の配布をはじめ、感染防止対策や地域産業への支援、困窮者等への対応など、現場の知恵と工夫を凝らした自治体施策が生まれ、その共有も進んでいる。もちろん背景には社会全体のデジタル化の進展などもあるが、それを活かしながら、業務改革や官民連携、市民協働、自治体間連携などを進め、イノベーションを起こしているようにも見える。今回はこうした動きを考えてみたい。
■コロナ禍を契機にデジタル活用の市民主導型公共価値創造が進む
──DXを成功に導くカギ/奥村裕一
奥村裕一 元東京大学公共政策大学院客員教授
(一社)オープンガバナンスネットワーク代表理事
新型コロナ禍によって世界的にもデジタル化やイノベーションが進んだ。日本国内では多くの課題が指摘されているが、自治体レベルでは創意工夫も見られる。ぜひ市民主導型の公共の新しい価値を創造するパブリックサービストランスフォーメーション(PX)を進めて欲しい。
■コンセンサスデザインとEBPM
──科学的根拠は政策コミュニケーションの重要な媒体に/西尾真治
■シビックテックで加速する自治体イノベーション/関 治之
■コロナ禍で起きた自治体間のイノベーション──オンライン市役所での試み
「新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保に関する情報交換会」/長井伸晃
〈取材リポート〉
◆首都圏自治体はワクチン接種にどう対応したか
/東京都墨田区・小金井市、埼玉県戸田市
◆県境を越えた共同接種など多様な自治体間連携でワクチン接種を促進/鳥取県
◆第三者認証制度“山梨モデル”で感染防止と経済の両立を図る/山梨県
◆共通投票所や投票所混雑状況配信でコロナ禍の知事選投票率向上を図る/兵庫県播磨町
【キャリアサポート面】
キャリサポ特集:伝わる動画のつくり方誰でも手軽に動画をつくり、インターネットで広く公開できる時代。 ■伝わる動画をつくるための基礎と実践/家子史穂 〈取材リポート〉
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巻頭グラビア
□自治・地域のミライ
小林常良・神奈川県厚木市長
「市民協働と現地対話主義」を信念に「日本一のまちづくり」を目指す
□童童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝 隆景家から頼家への転生(二) 四角・円・三角の兄弟模様
取材リポート
●取材リポート
□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
高齢避難者と若手定住者が共に生きる【11年目の課題・復興公営住宅】
原発事故、続く模索
地域から隔絶されて、寂しい高齢避難者の団地と化しつつある復興公営住宅。ところが中には責任を持って団地の将来像を模索している受け入れ自治体がある。福島県桑折町だ。空きが出た住宅を子育て世帯の定住のために転用し、高齢化が進む避難者との共生を仕掛けようとしているのだ。団地建設を進めてきた県や、避難者を受け入れた市などの顔が見えなくなりつつある今、その対極のような施策が進む。
□現場発!自治体の「政策開発」
企業・求人情報専用サイトで地元で働く魅力を発信
──「ジョブ・ナビIZUMO」(島根県出雲市)
島根県出雲市は、市内の経済団体や企業とともに協議会を組織し、雇用促進・人材確保に努めている。その一環として、地元の企業・求人情報のサイトを開設し、市内の企業情報や求人情報をはじめ、出雲の魅力を発信。コロナ禍での対応では特設掲示板を設け、離職者と喫緊に人材を必要とする事業者のマッチングを図っている。また、職業相談員を配置した窓口を設けてUIターン就職支援に力を入れているのも特徴だ。コロナ禍での地方回帰を好機と捉え、UIターン就職を促進している。
□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
「コロナ+災害」に議会はどう立ち向かうか
──輝け議会?対話による地方議会活性化フォーラム
九州の地方議会活性化を目指し、セミナー等を開催している「輝け議会?対話による地方議会活性化フォーラム」(代表=盛泰子・佐賀県伊万里市議)は8月7日、「コロナ+災害に、どう応える?地方議会」をテーマにオンラインフォーラムを開催した。フォーラムではコロナ禍の災害時に議会としてどう立ち向かうのかを議論。あらゆる災害に議会は備える必要があることなどが強調された。
●Governance Focus
□静岡DWAT、知られざる活躍と課題
──熱海市伊豆山の土石流災害、避難所派遣の福祉支援チーム/葉上太郎
●Governance Topics
□行政ドックを通じて、分権時代に求められる適正・適法な行政手続を
──シンポジウム「行政ドックを通した分権推進戦略」
□なぜ「ケアラー支援条例」が必要なのか
──オンラインシンポジウム「全国初!埼玉県・栗山町“ケアラー支援条例”の成立と施策」
連載
□ザ・キーノート/清水真人
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□今からはじめる!自治体マーケティング/岩永洋平
□生きづらさの中で/玉木達也
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□From the Cinema その映画から世界が見える
『ミッドナイト・トラベラー』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『自治体の滞納整理術』岡元譲史]
カラーグラビア
□技・匠/大西暢夫
親子で紡ぐ浄法寺塗りの技と伝統
──塗師・岩舘隆さん、巧さん(岩手県二戸市浄法寺町)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ
山から海までの豊かな自然に歴史と文化が詰まった「羊羹」のまち/佐賀県小城市
□山・海・暮・人/芥川 仁
家族の歴史を乗せている漁船──鳥取市青谷町夏泊漁港
□生業が育む情景~先人の知恵が息づく農業遺産
人と自然が生み出す“循環”の景色
──水稲・たまねぎ・畜産の生産循環システム(兵庫県南あわじ地域)
□人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ/シメッチャ(福岡県志免町)
□クローズ・アップ
「なまこ壁」を残した文化意識──静岡県松崎町。景観条例制定で守り、発信する