ユーモア詩でつづる学級歳時記
ユーモア詩でつづる学級歳時記[第6回]
特別支援教育・生徒指導
2020.10.21
ユーモア詩でつづる学級歳時記[第6回]
白梅学園大学教授 増田修治
(『学校教育・実践ライブラリ』Vol.6 2019年10月)
笑顔で子どもを育てる秘訣が満載!『子どものココロが見えるユーモア詩の世界 親・保護者・教師のための子ども理解ガイド』(ぎょうせい、2020年9月刊)の著者 増田修治氏が、埼玉県の小学校教諭時代から長年取り組んできた「ユーモア詩」。珠玉の75編と増田氏の的を射たアドバイスは、笑いながら子どもの思い・願い・成長が理解でき、今日からの子育て、保育、教育に生かせること請け合いです。ここでは、『学校教育・実践ライブラリ』(2019-2020年)の連載「ユーモア詩でつづる学級歳時記」をご紹介します。(編集部)
■今月の「ユーモア詩」
水風船
田中 智弘(6年)
野本和也君と中島君とぼくで
公園で水風船で遊んだ。
水風船の中に
大きいのが二つ入っていた。
それを二つ持って
和也君が水道に走っていった。
ぼくが中島君に、
「かず、絶対
『オッパイ、ボボヨーン』って
やるよね。」
と言ったら
「おれもそう思う。」
と言った。
和也君を見ていたら
二つの水風船をつなげてきて
「オッパイ、ボボヨーン!」
とやった。
ぼくと中島君は大笑いした。
近くにいた赤ちゃんづれの人まで
笑っていた。
はずかしかった。
■余裕をもって見守る
夏の暑い日に、水を入れた風船をぶつけ合う。「水風船」という題を見たときは、そんなイメージでした。
ところが、智弘たちの遊びは、水風船を二つつなげて「オッパイ、ボボヨーン!」だというのです。
思わず、大笑いしてしまいました。
それだけではありません。
3人がテレパシーでつながっているような言葉のやりとりにも感心していました。
和也君が水風船を二つ持って水道に走っていったときです。
「かず、絶対、『オッパイ、ボボヨーン』ってやるよね。」(智弘)
「おれもそう思う。」(中島君)
二人の予想どおり、ドンピシャリ当たり。和也君は風船を二つつなげて「オッパイ、ボボヨーン」とやったのです。
心と体が大人に向かって大きく変わる6年生ですから、異性への関心が高まるのはごく自然なこと。この時期だからこそ生まれた作品と言ってもいいでしょう。
「近くにいた赤ちゃんづれの人まで笑っていた。」
「はずかしかった。」
智弘は顔から火が出るほど恥ずかしかったのでしょうが、大人から見れば、何ともほほえましい光景です。
異性のことが気になるのも、自立に向かって順調に育っている証拠です。余裕をもって見守りたいものです。
■月の学級づくり・学級経営のポイント
男女のトラブルを、学級の学びに変える
小学校の高学年になると、男女のトラブルが増えます。私が6年生を担任したときに、「告白ごっこ」が流行りました。「誰にも言わないから、好きな人を教えて!」と言って、好きな人の名前を言い合っておきながら、他の人に言ってしまうのです。
しかも、ある男子が好きな女子の名前を言ったときに、その女子に「A君が好きだそうだけど、あなたはどう思ってるの?」と言って、その女子に好きな男子の名前を言わせるのです。また、名前のあがった男子に、「Bさんが好きな人は、C君だって」と言ったりするのです。
こうしたことが学年全体で起きたため、学年全体の男女間だけでなく、友人関係までおかしくなってしまったのです。
学年の担任同士で話し合い、どうやってこの問題を解決していくかを考え合いました。お互いが異性を好きになるのは、当然のことだし、成長の証しと考えてよい。むしろ、このことを通して、「『人を好きになるとはどうすることか?』を考える機会にしよう!」ということになりました。
学年総会を開き、「今回のトラブルを、一人一人がどう考えるか?」ということをていねいに聴き取っていきました。「面白いから、やってしまった」「人の秘密をバラすのが楽しくて、ついついやってしまった」などの意見が出てきました。
その後、「人を好きになるのは、とても素敵なことだから、もっと大切にしてほしいこと」「好きな人のことを思うのはとても素敵なことだから、それは誰にでも簡単に話すべきではないし、自分の心の中で大切にしてほしい秘密だと思うこと」などを伝えていきました。
また、「人を好きになるのは、とても素敵なことだけど、同時に素敵だなと思われる自分になっていくことが大切であること」などを伝えていきました。
子どもは、比較的小さいときから「なんとなく○○ちゃんがいいなと思う」という感情をもつものですが、中学年から高学年に向けて「相手のことを思うと、落ち着かなくなるし、心の中でいつも相手のことを考えるようになる」のです。
大事なことは、「人を好きになるだけでなく、魅力的な人になる努力をすること」なのです。2学期になると男女のトラブルが起きやすくなります。それを成長の機会として捉えていくことが大事なのです。
Profile
増田修治 ますだ・しゅうじ
1980年埼玉大学教育学部卒。子育てや教育にもっとユーモアを!と提唱し、小学校でユーモア詩の実践にチャレンジ。メディアからも注目され、『徹子の部屋』にも出演。著書に『話を聞いてよ。お父さん!比べないでね、お母さん!』『笑って伸ばす子どもの力』(主婦の友社)、『ユーモアいっぱい!小学生の笑える話』(PHP研究所)、『子どもが伸びる!親のユーモア練習帳』(新紀元社)、『「ホンネ」が響き合う教室』(ミネルヴァ書房)他多数。