令和の時代のカリキュラムデザイン[第3回] 新たな協働的な学びの創出 地域社会とのつながりが生み出す学び
授業づくりと評価
2021.12.15
令和の時代のカリキュラムデザイン
[第3回]新たな協働的な学びの創出 地域社会とのつながりが生み出す学び
高知県高知市立義務教育学校土佐山学舎校長
竹﨑優子
(『新教育ライブラリ Premier II』Vol.3 2021年8月)
本校のある高知市土佐山は、市街地から車で約30分程度の高知市北部にある自然豊かな中山間地域である。高知市は平成23年に「土佐山百年構想」を打ち出し、土佐山地域の人口減少に歯止めをかけ、持続可能な地域モデルを目指した取組を進めている。本校は、この「土佐山百年構想」におけるプロジェクトの一つに位置付けられ、平成27年4月に施設一体型小中一貫教育校として開校し、その翌年には義務教育学校となった。
「土佐山百年構想」に位置付けられている大きなねらいの一つは、地域振興・地域活性化の発信源を学校が担うことであり、本校は、様々なニーズに応えるとともに、これまでにない新しい教育、他にはない魅力ある教育活動を「挑戦」として掲げている。
土佐山学の実践
本校では、1・2年生の「生活科の地域の自然や人に関わる学習」、3〜9年生の「総合的な学習の時間」を土佐山学という名称で呼んでおり、「探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成する」ことを目標に取り組んでいる。地域の豊かな資源・人材に関わる活動を学習の中心に据え、1年生から9年生まで、9年間の学びのストーリーを描くことで系統的に学習を進めている。また、育てたい資質・能力を【知識及び技能】【思考力、判断力、表現力等】【学びに向かう力、人間性等】の三つの観点で整理し、各学年ごとに「どのように学ぶのか」という子どもたちの具体的な学びの姿を明確にした全体計画を作成している。
本校では9年間を3つのブロックに分け、4−3−2制を取っている。土佐山学においても、ブロックを意識した学習内容になっており、前期ブロックでは、土佐山のよさを発見、中期ブロックは、地域の課題の発見や課題解決の方法を地域に提案、そして、後期ブロックは7年間をかけて学んできた土佐山のよさも課題も全て知ったうえで考える「土佐山貢献プロジェクト」への挑戦となっている。
学習の過程では探究のプロセスをたどらせ、将来のキャリア形成に生かすことができる資質・能力を育成することを目標にしている。子どもたちは、企業や大人たちを対象に、自分たちの考えを提案したり、プレゼンしたり、ときには交渉したりするようなコミュニケーションの力を、教科のみならず学校教育活動全般で培っている。対象が外国人になれば、英語でのコミュニケーションになるので、実用的な場面での言語使用ができる英検2級合格が本校の外国語教育のゴールである。
このように、土佐山学は単なる地域学習、ふるさと学習にとどまらず、地域理解、キャリア教育、コミュニケーション能力の育成の三つを複合的に学習しながら、広く社会で活躍できるグローバルな人材の育成を目指す学習となっている。