わたしの学校経営手帳 女性管理職の視点から[最終回] “支える人”を“支える地域の力” 子どもが育つシステムとつながり

学校マネジメント

2022.05.27

わたしの学校経営手帳
女性管理職の視点から[最終回] 

theme:地域の特色とつながりを生かした学校づくりと管理職の役割
opinion3:高知県越知町立越知小学校長 竹内 満

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.6 2022年3月

“支える人”を“支える地域の力” 子どもが育つシステムとつながり

 「私が元気をもらっているのよ」。毎朝、玄関で児童の声がけ・見守りをしていただいているボランティアさんが、にこやかに話しかけてくれます。子どもたちもその言葉に応え、「昨日歯が抜けた」と1年生。「今日は水泳があるよ」と3年生。「修学旅行に行ってきます」と6年生。また、通りかかった教員にも声をかけてくださいます。「今日も、はつらつとしちゅうね!」「○○君が○○を楽しみだって言いよったよ!」と。子どもを送ってきた保護者には、「お母さん、ようがんばりゆうねぇ」と。その場の雰囲気を気遣いながら、常に“受容と共感・応援”の言葉がけがあります。温かいまなざしが周りを包み、「私たちは、子どもを支える人を支える役割なの」と笑顔で話されます。

 新型コロナ感染症予防対策による長期休校から分散登校を経て、学校生活を取り戻そうとしていた令和2年6月。この頃から、朝の声がけ・見守りは現在も続いています。その他にも、本校では、日常生活の中に教員以外の人たちが常に当たり前のように居て、子どもたちの成長だけでなく、子どもを“支える”教員や保護者を支えてくださっています。このことは、本町・本校の“子どもが育つ”視点をもったシステムづくりと地域の人々の熱い思いや願いがあるからです。そのシステムと地域をつなぐことで地域が学校のパートナーとして機能をしています。

地域は子どもの成長を共に支えるパートナー

 越知町は、高知県の中西部に位置し、水質日本一の清流「仁淀川」、世界的な植物学者・牧野富太郎博士の研究フィールドでもある「横倉山」など、豊かな自然環境に恵まれた町です。その環境を活かし、本校は児童179名、『仁淀川のように清らかに、横倉山のようにたくましく』を学校教育目標に掲げ教育活動を進めています。

 平成26年度からのコミュニティ・スクール導入・推進を機に、ボランティア登録制度をスタートさせ「地域応援隊」の充実を図りました。「地域コーディネーター」を学校に置き、地域との連絡窓口を一本化しました。そのことにより、学校と地域との連携がスムーズになり、教員の負担も軽減され、安定かつ継続可能な協働体制が生まれました。

“子どもが育つ”学校システム

(1)3つのシステム
 めざす学校づくりの具体的な手立てとして、「新学校システム」「校内研究システム」「コミュニティ・スクール(以下、「CS」)と連携」の3つの柱を関連付けた取組を行っています。

 「新学校システム」は、“子どもと向き合う時間を生み出す”ための校務改革やOJTを進めるためのシステムです。自校で作成している「教務の手引書」の活用や、行事等実施後すぐに評価・改善を行い、次年度案を作成する「直後プラン」等で会議の縮小や業務の効率化を図っています。「校内研究システム」は、授業・学級・学校づくりを児童が主体で行うことがきるよう児童参画型の“学び”に取り組んでいます。

 この2つの取組を大きく支えるのが3本目の柱である「CSと連携」です。「CSと連携」は、学校運営協議会をはじめとする地域の組織や各専門機関、地域応援隊やSSW(スクールソーシャルワーカー)・SC(スクールカウンセラー)を中心に、学校の教育活動に参画をしていただいています。この地域の力が「チーム越知」として2つのシステムをサポートし、“子どもが育つ”学校を支えています。

(2)「チーム越知」進化へのプロセス
 これまで、総合的な学習や教科等の体験を伴う学習では、地域の方々に支援をしていただいています。内容は、お店探検、横倉山登山、昔遊び、仁淀川環境教育、読み聞かせ、ミシンや水泳の授業補助、放課後学習など、多岐にわたっています。

 そこで、この土壌を活かして、学校から手放せるものは積極的に地域住民や専門職に委ねることを考えました。教員でなければならない業務と教員でなくてもできる業務の視点で横断的に業務を見直しました。これまでの地域の「協力」を「協働」へと転換し、子どもや教員の「困り感」、パートナーとして「協働してほしいこと」を伝えていくようにしました。また、その場を学校運営協議会以外にももつようにしました。

 まず、4月の組織職員会にCS運営委員さんに参加してもらい経営方針を聞いていただきました。入学式や研究・公開授業日、講演会や参観日などの行事等にも来校していただくようにしました。また、新1年生保護者には、就学時健診を利用し民生委員さんとの対話の時間も設定しています。このように日常的に地域の方が学校に足を運んでいただくことで、家庭訪問の道案内やコロナ禍の給食配膳、朝の声がけなどをしてくださる方が現れました。放課後学習、「加力指導」等に参加してくださるボランティアの回数も増え、それまで約280人前後だったボランティアのべ人数が、令和2年度は約600人、令和3年度は約610人(1月現在)となりました。このような日常的な関わりが、コロナ禍により、マスク生活を強いられ大きく環境が変わった子どもたちの様子や変化をつぶさに感じていただくことにつながりました。その気づきが子どもや学校の困り感にさらに応えようとしてくださる地域となっています。

校長の役割〜“支える人を支えるつながりを”

 小学校教員は、もともと何でも自分で抱え込んでしまう傾向があります。自分が子どもを支えなければ、育てなければという責任を強く感じているからです。また、子育てにお困りの保護者もいます。そんな教員や保護者にとって、子どもたちの困り感や自身の頑張りを日常的に支えてくれるパートナーがいることは、これほど心強いことはありません。

 今後そのつながりをさらに紡ぐために校長としてできることは、システムをつくり組織をマネジメントしていくことです。そして、その日常の中で、もっと自然体に、もっと温かく、人と人がつながることができるようにしていくことです。

 現在、運営委員やボランティアの方が、折に触れ、子どもや教員の頑張りをSNSで伝えてくださっています。校長として今、その内容を職員連絡ツールで配信をしています。このことがきっかっけで子どもや職員と地域の方との会話の内容がさらに豊かになり、より互いを知り合いつながる機会となっています。

 「支える人を支える」。地域の方がおっしゃったこの言葉に元気をもらいながら、今日も「チーム越知」で“子どもが育つ”システムづくりとつながりをめざしていきます。

 

 

Profile
竹内 満 たけうち・みつる
 昭和42年生まれ。平成4年4月須崎市立横浪小学校から教職員生活をスタート。同市2校に勤務後、平成21年高知県教育センター指導主事・チーフ、平成28年津野町立中央小学校教頭を経て、平成30年より現職。
●大切にしていることば
 「熱くなれる何かと、共に汗を流せる仲間を」「凡事徹底・凡事一流」

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