わたしの学校経営手帳 女性管理職の視点から[最終回] 地域に根ざした教育の推進 本校の学びに誇りを持って

学校マネジメント

2022.06.03

わたしの学校経営手帳
女性管理職の視点から[最終回] 

theme:地域の特色とつながりを生かした学校づくりと管理職の役割
opinion1:広島県福山市立常金中学校長 内海智子

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.6 2022年3月

地域に根ざした教育の推進 本校の学びに誇りを持って

地域・保護者・生徒の思いからスタート

 本校に赴任して3年になります。赴任時、前校長から「3年後の2021年度末をもって常金中学校は閉校し、6km離れた中規模校と新しい学校として再編する話が持ち上がっている」と話を伺いました。

 これから始まるスタート時に、閉校する話に併せ、それに伴い地域・保護者・生徒が、これからの生活に不安を抱いていることを聞き、驚いたことと、地域・保護者・生徒の思いに寄り添った学校づくりを進めることを、決意したことを思い出します。その後、2022年4月に再編することが確定し、現在を迎えています。

豊かな教育環境を活かした学校づくり

 本校がある常金丸地区は、福山市北部に位置し、美しい山々に囲まれ、豊かな自然と穏やかな風景が広がっています。古くは菊の育種が盛んで、最盛期には、菊の苗の生産が全国シェア75%を占めるなど、「菊の里」として知られていました。しかし、現在は、菊の生産者はほとんどおらず、高齢化が進み、過疎化の一途をたどっています。今年度、全校生徒39名です。

 赴任後は、学校教育目標「立志・貢献・郷土愛」を引き継ぎ、教職員とともに地域に根ざした学校づくりを進めてきました。

醸成する学校風土

 次の4点を学校経営のミッションとして位置付け、生徒の実態から具体的な重点課題を明らかにし、育成すべき力を定め、取組を進めてきました。

1 学力向上に挑戦し続ける学校風土
  小規模校の良さを学びに生かそう
2 規律と温もりのある学校風土
  生徒の人間関係の確立と個の自立を支援しよう
3 教育研究に真摯に取り組む学校風土
  パフォーマンス課題の設定とルーブリック評価による単元づくりに挑戦しよう
4 地域とともにある学校風土
  地域・社会の未来に向け、行動しよう

生徒や教職員の“やってみたい”を支援

 4月には教職員の人事異動があり、新入生が入学し、新たな気持ちで毎年スタートしますが、前年度を踏襲したことを良しとして物事を進めることが多々あります。本校の生徒は、一小一中の校区で、ほぼ9年間生徒集団に変化がありません。そこに、教職員の「去年と同じ」という意識が働けば、子どもの新たな可能性を引き出すことができませんし、我々教職員の成長にもつながりません。常に新たな自分発見、生徒発見につなるがるよう、みんなで新たなことに挑戦し、学校生活を楽しみたいと考え、教育活動を進めてきました。

 在職期間の3年間、大きく学校経営構想は変更しませんでしたが、その年の教育意識におけるキーワードを定め、事あるごとにキーワードを伝え、生徒や教職員を支援しました。

1年目 【継続・進化
    継続しながら、新しいことを模索する。
2年目 【挑戦
    失敗を恐れず、やってみたいことに立ち向かう。
3年目 【躍動
    生き生きと活動する。

 “前年や前回と同じ”ではなく、今、何が必要なのか、何をすべきなのか考えながら行動していくことを求めました。コロナ禍も相まって、変更を余儀なくされたこともたくさんありましたが、ピンチがチャンスとなり、様々な教育活動を教職員も生徒も初心に立ち戻り、見直すことができました。

 特に、今年度は、本校最後の年、生徒も教職員も共に常金中学校の生活を満喫するために、言われたことをやっておけばよいではなく、発想を変え、自分でやりたいことを見つけ、とことんやってみようと生徒と教職員に伝えてきました。校長が言うだけではなく、言いやすい、行動しやすい雰囲気をつくり、一緒に考えて行動しています。教職員は、生徒のやりたいという声を拾い、可能な限り、生徒が行動できるように一緒に考え、最終的には生徒の主体的な活動を支援してきました。

ひと・もの・ことを力に

 地域に根ざした学校づくりに向け、子どもたちの可能性を導き出すために、地域の力を活用しています。生徒や教職員の一生懸命さに、地域の方は心を動かし、力を貸してくださいます。

 「総合的な学習の時間」には、学年を越え、全校で地域探究学習を行っています。ふるさとである常金丸、さらには自分自身の生き方や在り方を見つめ、未来について考え、創造していく力を育む場として「総合的な学習の時間」を位置付けています。生徒は、地域の実態や課題を把握し、また、地域の方の願いを知り、地域のために自分たちに何ができるのか、何をするのか、自分でテーマを決めて探究し、地域の方に提言しました。昨年度は、「空き家・空き地の活用方法」「地域の特産物を利用した商品化」「地域の歴史の継承」「環境問題」などSDGsの視点を取り入れた学習活動を展開しました。今年度は、それらの学習を深化させ、広い視野で未来を創造し、地域に提言しています。

明るく前向きに

 学校経営にあたり、時代の変化や生徒の実態に応じ、臨機応変に対応する力と創造性を活かし、変化を追い風に挑戦し続ける力を身に付け、発揮させたいと考えてきました。

 本年度3月、本校は75年の歴史に幕を閉じ、新しい学校として再編します。本校に集った全ての生徒が、本校での学びに誇りを持って、巣立ってくれることを願っています。

 

 

Profile
内海智子 うつみ・ともこ
 広島県生まれ。専門は国語科。平成元年広島県三原市立鷺浦中学校にて教員生活をスタート。平成7年より尾道市内の3校の中学校に勤務した後、平成28年より福山市内の中学校で主幹教諭、教頭を経て、平成31年4月より現職。
●大切にしていることば
 自分らしく前向きに笑顔で

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

特集:誰一人取り残さない“スクールネット”の構築

最新号

新教育ライブラリ Premier IIVol.6

2022/3 発売

ご購入はこちら

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中