コラム イマドキの親子図鑑 File.6 勉強も、習い事も。学びの価値観に変化あり
トピック教育課題
2022.06.06
コラム イマドキの親子図鑑 File.6
博報堂生活総合研究所 主席研究員 夏山明美
イラスト 磯崎陽子
(『新教育ライブラリ Premier II』Vol.6 2022年3月)
勉強も、習い事も。学びの価値観に変化あり
本連載の初回(2021年4月)で、“「生活定点」調査で1992年から比較できる全項目の変化量を調査回ごとに比較すると、2018年から2020年の変化は過去20年間で最大。それぐらい生活者にとってコロナ禍のインパクトは大きい”ことに触れました。
そして今もなお、コロナ禍は続いています……。今回は初回と同様に、2018年から2020年にかけて変化した生活者の価値観をご紹介しましょう。例えば、「子どもには塾、家庭教師をつけて勉強させた方がいいと思う」は1998年(15.2%)から増加傾向にあり、2020年(25.2%)に過去最高を記録。一方、この価値観と相反する「子どもには勉強以外の習い事やスポーツをさせた方がいいと思う」は1998年(68.4%)から2018年(57.3%)にかけて減少傾向にありました。「習い事から勉強へ」というのが長年の心の向きだったわけです。しかし、2020年になると、「習い事」が増加に転じて59.7%となり、「習い事も勉強も」へと心の向きが変わりました。
これらの価値観は特に小中学生の親御さんで高く、2020年でみると「勉強」は40.8%(2018年から2.6pt増加)、「習い事」は71.6%(2018年から3.9pt増加)となっています。コロナ禍で外出がままならず、家での自由時間や親子が向きあう時間が増えたことが、こうした変化に影響しているのでしょう。
では、子どもたちの思いはどうでしょうか。5年前の2017年、当研究所は小学4年生から中学2年生を対象にした「こども調査」※を実施。そこで、欲しいものの1位に挙がったのは「いい成績」でした。また、普段の暮らしぶりを取材すると、ほぼ毎日習い事で予定がぎっしりという子どもに多く出会いました。さらに遡って40年前の1982年、当時「子どもの放課後」についてまとめた社内資料では、まるで“7時間目の授業が始まる”かのように、塾やおけいこごとに勤しむ子どもたちの様子がレポートされています。今も昔も「勉強も、習い事も」は子どもたちの本分……。そのことがコロナ禍によって再認識されたのかもしれません。
※当研究所の過去40年間の発信物は「生活者」展でご覧いただけます。
https://seikatsusoken.jp/40th/
*博報堂生活総合研究所「生活定点」調査(最新調査)
・首都40km圏・阪神30km圏
・2020年6月24日〜7月31日(1992年から偶数年に実施)
・20〜69歳男女 2,597人(うち、小中学生の子どもがいる親546人)
・訪問留置調査
・データ公開(出典明記により、どなたでもご活用可能)
https://seikatsusoken.jp/teiten/
Profile
夏山 明美 なつやま・あけみ
1984年博報堂入社。主にマーケティング部門でお得意先企業の調査業務、各種戦略立案などを担当。2007年より現職。食や家族関係、消費を中心に生活者の意識・行動の変化を研究。共著に『生活者の平成30年史〜データでよむ価値観の変化〜』(日本経済新聞出版社)など。