教頭・副校長のための時間が増える! 仕事のワザ[最終回]トラブル対応に多くの時間を奪われないためのワザ

学校マネジメント

2022.05.18

教頭・副校長のための時間が増える! 仕事のワザ
[最終回]トラブル対応に多くの時間を奪われないためのワザ

岐阜聖徳学園大学教授 
玉置 崇

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.6 2022年3月

 教頭・副校長は、様々な苦情を受けることがあるでしょう。その対応に時間がとられてしまうことが多々あります。貴重な時間を奪われないための仕事のワザをお伝えします。

トラブル対応に当たるときの本音

 「教頭・副校長として、精神的に一番しんどい仕事は何でしょうか?」と問われたら、多くの方は「トラブル対応」と答えるのではないでしょうか。

 教頭・副校長がトラブルを起こすことはまずありません。自分が起こしたトラブルであれば、それに対応するのは当たり前ですが、100%と言ってもいいほど他人が引き起こしたトラブルです。なぜ、そのトラブルに神経をすり減らして対応しなければならないのか!と、腹が立つことが必ずあります。管理職だから致し方ないわけですが、怒りを覚えることはあってもいいのです。こう示しておくと、少しは留飲が下がると思い、教頭職を6年間務めた経験から書かせてもらいました。

トラブルを次のための学びととらえる

 同じことに遭遇しても、プラスにとらえるか、マイナスにとらえるかで、その後の展開や学びが大きく異なってきます。トラブル対応もプラスにとらえ、その対応を整理しておくと、次に同じようなことが発生したときに役立ちます。比較的短時間で対応が済むものです。校長となったときには、トラブルを少なくするための教訓として話すことができます。ここでは、自分が対応したトラブルを紹介し、校長となったときに教職員に伝えていたことを紹介します。

〇「上から目線の物言いが許せない」という保護者

 解決までに3か月ほどかかったトラブルです。保護者の主張は「自分の子どもが悪いのはわかっている。しかし、担任の、上から目線の物言いは許せない。あの教員は辞めさせろ」というものでした。

 担任に確認してみると、保護者に強く言い過ぎたところはあるというのです。保護者は、子どもを前にして若い教師から怒られた、つまりプライドをとても傷つけられたと感じたのでしょう。「我が職員の言葉は適切ではありませんでした。お許しください」と伝えたところで、感情的になっていますので、振り上げた拳を下ろすことをしてくれないのです。

 「私が、担任とともにご家庭を訪問して、直接お詫びをさせてください」と、電話で伝えても、「会う必要はない。あの教員を辞めさせればいい」という一点張りです。その保護者は教育委員会にも同様な主張をするようになりました。

 これ以上、このトラブル対応に時間がとられることは、精神的にも自分の仕事を停滞させると考え、相手の合意を得ることなく、担任と家庭訪問をしました。会ってもらえないことや、玄関先で長時間立っていなければならないことを覚悟しての訪問です。チャイムを鳴らしたところ、ドアの向こうから声がしたので名乗りました。「帰れ!」の一言でした。

 会えるまで帰らないという覚悟をしていましたので、その後、2時間ほど立っていました。すると、ドアが少し開いて「わかった。もういい」という声がしました。すっきりした解決ではありませんでしたが、これでトラブル対応は終了となりました。駄目元で動いてみたことが良かったのです。

 担任が期せずして言いました。「保護者には負けてはいけないと思いますが、勝ちすぎてはいけませんね」と。まさに反省の弁です。校長となったときには、保護者対応のポイントとして、「保護者に非があるときは、保護者に負けてはいかん。しかし勝ちすぎてもいかん」という言葉を提示して、相手の心境をとらえての言葉かけに十分に留意してほしいと伝えました。

〇「道一杯に広がって歩いている。なんとかしろ!」という地域の方

 生徒が登下校中に道一杯に広がって歩き、通行人の歩行の邪魔をしていると、苦情電話をいただくことが幾度かありました。その中で、定期的に電話をかけてくる方がおられました。そろそろ電話がありそうだなと思うと、不思議と「教頭を電話口に出せ」という電話があるのです。

 学校ほど真摯に電話を受けるところはないと思っています。電話をすると、まず話を聞いてくれる、話し相手になってくれるといった感覚を持っておられる地域の方があります。定期的に電話をかけてくる方も、そのような方でした。「何度言ったらわかるんだ。どういう指導をしているんだ」と怒鳴り、しばらく話を聞いた後、「大変申し訳ありません」と謝罪すると、怒りが収まるのでしょう。電話が切れるのです。

 しかし、いつも朝の忙しいときに15分間ほど電話対応しなければなりません。15分間が2倍や3倍にも感じるのです。なんとかこの時間を無くしたいと考えました。電話の主は匿名で、本当に登下校の様子を見ているとは限りません。ストレス解消先として学校を選んでいる可能性があります。そこで、「学校で指導が十分にできないので警察に相談したところ、その方の名前と住所を教えてほしいと言われた」と嘘をつきました。それ以後、ピタリと電話は止みました。

 大切な時間を奪われないように、こうした嘘があってもいいと思います。この経験は、校長となったときに苦情対応例話「嘘も方便」として、教職員に話すことができました。

 

Profile
玉置 崇 たまおき・たかし
 1956年生まれ。愛知県公立小中学校教諭、愛知教育大学附属名古屋中学校教官、教頭、校長、愛知県教育委員会主査、教育事務所長などを経験。文部科学省「統合型校務支援システム導入実証研究事業委員長」「新時代の学びにおける先端技術導入実証事業委員」などを歴任。「学校経営」「ミドルリーダー」「授業づくり」などの講演多数。著書:『先生と先生を目指す人の最強バイブルまるごと教師論』(EDUCOM・2020年)、『先生のための話し方の技術』(明治図書・2021年)など多数。

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