教頭・副校長のための時間が増える! 仕事のワザ[第5回] PTAに主体性をもたせることで時間を生み出すワザ

学校マネジメント

2022.03.23

教頭・副校長のための時間が増える! 仕事のワザ
[第5回]PTAに主体性をもたせることで時間を生み出すワザ

岐阜聖徳学園大学教授 
玉置 崇

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.5 2022年1月

 今回は、教頭・副校長の仕事として、かなり時間がかかるPTA対応への時間を削減させるワザをお伝えします。ポイントはPTAに主体性をもたせることです。

PTAをお客様扱いしない

 ほとんどの学校では、PTA活動を推進する学校代表は教頭・副校長だと思います。PTA会議前に、会議室や文書の準備、お茶の用意などで、時間がとられている方はありませんか。様々な業務を抱えている教頭・副校長ですから、準備の時間を確保するだけでも大変なことです。

 私が教頭となり、前教頭から引き継いだときに、PTA会議準備をこれほど丁寧にしているのか!と驚きました。そのとき心に浮かんだのは、PTAの皆さん、特にPTA役員をお客様扱いしすぎていないかということでした。懇切丁寧に接することは納得できますが、学校がすべてお膳立てしてお待ちしています、といった感じをもちました。このような姿勢であれば、保護者と学校が協力し合って学校を創っていこうとする雰囲気は生まれません。「これだけ丁寧に対応しているのだから、学校からのお願いには従ってください」といった下心があるように感じる人がいるのではと思いました。

 そこで、私は次のようにしました。会議室の鍵は開けますが、レイアウト変更はPTA役員に任せました。文書は印刷しておきますが、綴じる作業は役員に任せました。役員に印刷まで任せてもよいと思えたときには、印刷機の使い方をレクチャーして文書印刷から綴じて配布する作業まで依頼しました。

 実はPTA役員が印刷することで、教職員と交わる機会が生まれることを狙ったのです。「教頭先生から印刷機の使い方を教わったのですけど、忘れてしまいました。教えていただけませんか」と教職員に声をかけ、その機会にさりげない会話をしている役員を見ることができました。

 気が利く教職員は、「お疲れ様です。いつもありがとうございます」と、PTA役員を慰労する声をかけます。実はこうしたことが大切なのです。たったこれだけで「〇〇先生は、とても良い先生」という評判が立つものです。教頭・副校長にとっては、印刷する手間が省かれ、教職員とPTA役員との交流を生み出すことができるのですから、まさにお勧めのワザです。

「報告」より「相談」

 PTA役員に些細なことでも任せることは主体的になってもらうことにつながります。会議前に部屋や文書の準備をしなければならないと思えば、ご自身で来校する時刻を判断してもらえます。会議開始5分前ほどに到着される場合と比較すると、会議への参加意識はかなり異なり、自分たちでPTA活動を運営していく意識をもってもらえます。

 さらに私は「報告」より「相談」に心掛けました。できるだけ主体性をもってもらうためです。例えば、来年度の「体育大会」の日程について相談したことがあります。「えっ、そんなことまで相談していただけるのですか!」と驚きの声が上がりました。「保護者に見ていただくことを願って開催するのですから、当事者に聞くことが大切だと思ってのことです」と補足すると納得され、「小学校の運動会開催日と間隔をあけてもらえるといい」といった声が上がりました。

 こういう過程を経て日程を決めると、進んで仕事の調整をして、PTA役員として大会運営に協力していただけます。私たちが要望して決定されたのだから、欠席するわけにはいかないという意識をもっていただくことができるのです。

 このことに気づいてから、些細なことも、「報告」より「相談」を心掛けました。学校評価に関わる保護者アンケートも、役員に相談して質問項目を作ってもらいました。保護者目線での質問項目となり、回収率も高くなりました。アンケート結果にも関心をもっていただけました。これまで保護者からアンケート結果が聞きたいという声をもらったことがありませんでしたから、つくづく相談することはよいことだと認識しました。アンケートを行う学校の意図が伝わり、作成時間も削減できたのですから、PTAには「報告」より「相談」することをお勧めします。

授業参観時に「PTAサロン」の運営を任せる

 私からPTA役員に意識して「相談」するようにしたら、「私たちからも相談させてください」という声が上がるようになりました。もちろん嬉しい出来事です。

 相談の一つは、授業参観日における新企画「PTAサロン」の設定がありました。参観日に久しぶりに会った人とは、授業の邪魔にならないところで話したいという本音を吐かれ、PTAとして、そのような場所を提供したいとの思いから、「PTAサロン」の設営を考えたいという相談でした。

 授業参観の目的からやや離れていると思いつつ、サロン設営で参観者は増えるという予測や、場所の設営やコーヒーや紅茶などの飲み物提供すべてをPTAでやります、と言われれば、賛成せざるを得ません。やってみたところ、授業参観は想像以上の賑わいとなりました。PTAが主体的になり、動いてもらうことの効用をつくづく感じた出来事でした。

 

 

Profile
玉置 崇 たまおき・たかし
 1956年生まれ。愛知県公立小中学校教諭、愛知教育大学附属名古屋中学校教官、教頭、校長、愛知県教育委員会主査、教育事務所長などを経験。文部科学省「統合型校務支援システム導入実証研究事業委員長」「新時代の学びにおける先端技術導入実証事業委員」などを歴任。「学校経営」「ミドルリーダー」「授業づくり」などの講演多数。著書:『先生と先生を目指す人の最強バイブルまるごと教師論』(EDUCOM・2020年)、『先生のための話し方の技術』(明治図書・2021年)など多数。

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