Q&A どうなる! どうする? GIGAスクール[第5回] 日常的なタブレット端末活用のすゝめ

トピック教育課題

2022.03.25

Q&A どうなる! どうする? GIGAスクール[第5回]
日常的なタブレット端末活用のすゝめ

[回答者]愛媛県松山市立椿小学校教諭 石田年保

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.5 2022年1月

 

Q

授業外で日常的にどのようにタブレット端末を活用していけばよいのでしょうか?また、日常的な活用を行う必要性について教えてください。

 

A

 タブレット端末の授業以外での活用場面は、たくさんあります。学校生活の場面では、委員会活動・学級活動での活用が考えられます。さらに、タブレット端末の持ち帰り等を考えると、家庭での活用も考えられます。今回は、学校生活の中での4つの活用場面を、具体的な事例をもとに紹介していきたいと思います。

①朝の時間帯「学級での活用」

 子どもたちは、プレゼンテーションソフトを使い、写真を提示しながら聞き手の興味を引くスピーチをしたり、生き物クイズを出したりしています。係活動では、撮影した写真を使って問題点を示しながら、傘をきれいに並べられるように呼び掛けをしています。また、アンケート機能を活用して、昼休みのクラス遊びの内容を決定しています。

 朝の自主学習では、日本語入力技能を高めるためにタイピング検定サイトを利用して、タイピングの練習をしています。また、NHK for Schoolの番組視聴をしたり、体育のマット運動などで記録した技の出来栄えを確認したりしています。さらに、デジタルノートを活用して、自分の技の成果と課題をまとめ、次の学習に生かす取組をしている学級もあります。デジタルノートの活用は、家庭や次学年へと学びを繋げるツールになると考えます。

②昼休み「委員会での活用」

 昼休みには、委員会が作成した楽しいクイズイベントが行われています。各学級にQRコードを配布し、子どもたちがそれぞれの端末でアンケートフォームから回答する仕組みになっています。また、同様の仕組みで、全校に「〇〇小の人気ランキング」に関するアンケート調査も行われています。以前はイベントを行う際には、時間や場所の制約がありました。1人1台端末の環境では、時間や場所の制約を受けず、児童の発想を生かした活動の企画が実現しやすくなりました。特別活動では、楽しく豊かな学校文化をつくる実践的な活動が求められています。タブレット端末は、子どもたちが発展的に新しい活動を生み出すことを促す強力なツールになると考えます。

③雨の日の昼休み「表現力を培うクリエイティブな活用」

 雨の日には、子どもたちは教室で自分の興味に応じてクリエイティブにタブレット端末を活用しています。これはおそらく子どもたちにとっては「遊び」の感覚です。Scratch(プログラミングソフト)を使ってプログラミングに没頭する子、ペイントソフトを使ってお絵描きをする子、動画編集ソフトを使って動画編集を楽しむ子、プレゼンテーションソフトを使って物語を作る子、さらには、授業支援ソフトの共同編集機能で、町やそこに住むキャラクターを描き、町をどんどん拡張させている子どもたちもいます。子どもたちはこれらの遊びを通して、タブレット端末での表現力を培っているのです。

 例えば、言葉は理解語彙と表現語彙に分けられ、表現語彙にまで高めないと実生活で生かされることはありません。理解語彙は、日々の生活でのコミュニケーションの中で鍛えられて、表現語彙にまで高められます。言葉以外にも、絵・音楽・ダンス等様々な表現方法があり、言葉同様に何度も使う(練習を重ねていく)ことで、鍛えられていきます。このように考えると、タブレット端末を使って表現する経験(練習)を積み重ねていかなければ、子どもたちはタブレット端末を表現ツールとして生かすことはできないのです。OECDの「PISA 2018」の調査では、日常的に情報機器を使って創作物を発信している日本の15歳の生徒は、1割にも満たないことが報告されています。タブレット端末を活用した表現力を高めるためにも、活用する場と機会の設定が求められます。ただし、教師と子どもたちで、創造的な活動の範囲で使用するというルールの確認は必要だと考えます。

④帰りの会「児童理解のための活用」

 1人1台のタブレット端末は、生徒指導的な側面でも活用できます。本市はoffice365の環境が整備されています。その核となるコミュニケーションツールTeamsには、Reflect(こころの天気)という子どもたちの心の状態を投稿・収集するアプリが用意されています(図1)。これにより、日々の子どもの心の状態や変化を教師は俯瞰することができます。また、子どもたちに対して称賛のメッセージを送る機能もあります(office365以外の環境の学校も、アンケート機能等で同様のことが可能です)。このような新しい仕組みを利用することで、子どもたちへの理解や信頼関係を深めることができます。


図1 こころの天気(児童端末操作画面)

 家庭への持ち帰りが本格化していくと、日常的な活用のウエイトがさらに大きくなっていきます。教師と子どもたちの心の繋がりを深めるため、そして、学校生活をより豊かにするための表現ツールとして使いこなすことができるように、日常的なタブレット端末の活用をお勧めします。

 

 

Profile
愛媛県松山市立椿小学校教諭
石田 年保 いしだ・としやす
 放送大学大学院文化科学研究科博士後期課程情報学プログラムに在籍し、マルチモーダル・テクスト「フォトポエム」の研究を行っている。NHK教育番組『デジタルメディア時代の授業術』で電子黒板を活用した授業が紹介される。また、文部科学省内の講堂で電子黒板活用の模擬授業を行うなど、ICTを活用した授業研究を行っている。NHK for School×タブレット端末活用研究会のメンバーとして、NHKの教育番組活用研究も行っている。

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