わたしの学校経営手帳 女性管理職の視点から[第4回] 教職員の資質向上と組織体制づくり 高め合い、つながる組織に

学校マネジメント

2022.01.21

わたしの学校経営手帳
女性管理職の視点から[第4回] 

theme:教職員の人材育成を核とした学校づくり
opinion1:宮崎県延岡市立旭小学校長 大﨑陽子

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.4 2021年11月

教職員の資質向上と組織体制づくり
高め合い、つながる組織に

 学校運営が円滑になされるためには、一人一人の職員が必然的に動く組織体制づくりが重要であり、そのことが人材育成につながると考えています。
「みんなで学校運営を」―知恵を出し合い、協力し合い、高め合う組織・チームとなることをめざしています。

組織体制づくりの実際

①基本的な職務遂行能力の育成と「初期研修メンターチーム制」
 日常的に学び合い、高め合う体制づくりとして、初期研修はメンターチーム制で取り組んでいます。意図的なチームで、計画的、継続的な研修を行うことで、多くの職員を初任者に関わらせ、「つながりづくり」と「指導技術の継承」を図り、初任者と初任者に関わる職員の資質向上をめざしています。

 メンターチームは、①基本研メンターと②学年メンターの大きく2つに分かれています。基本研メンターでは、「学級経営」「特別支援教育」「生徒指導」「保健管理」など6つのメンターで構成し、各分野のベテラン職員がリーダーとなります。学年メンターでは、学年主任がリーダーとなり、初任者は授業づくりや学級事務の進め方等を学びます。このメンターチームにより、初任者はもとより、ベテラン職員や各チームに所属する職員全てが、先輩という立場で初任者を指導支援することで、自らを高める意識をもつことを期待しています。

 ポイントは、初任者を全職員で育んでいくことを明確に示すために、職員一人一人の役割を見える化することです。

②授業力の育成と「主題研究体制」
 昨年度、次年度の学校経営方針を考えていた時期に、「学力向上のために必要なこと」を全職員で考えました。その過程で、授業力向上をめざすために、各自の授業改善を図る主題研究に変更してはどうかという意見が出されました。「お互いの授業を見合い、各自の課題を探り、その改善を図る授業づくりに取り組もう」という方向性に固まりました。その意志を強くもっていた職員の一人を、本年度の研究主任に置き、各自の授業改善により授業力向上を図り、学力向上をめざしています。

 ポイントは、職員のモチベーションをいかに高めるかです。校長は、方針とその解決に向けた必須条件(職員の意見を集約)を示しながらも、具体的な手立てや進め方については、職員に考えさせるようにしました。

③役割達成能力の育成と「若手職員を部長とする校務分掌体制」
 ここ数年、本校は、20代から30代の若手職員の割合が増えています。そこで、校務の分担と資質向上とをねらって、校務分掌部長に若手職員を置き、副部長にベテラン職員を置くという体制をとっています。若手職員は、意欲をもって取り組みますが、学校内の状況について、よいこと・課題への気付きや課題解決のためにどう働きかけるかについてのノウハウが未熟です。その点をベテラン職員がカバーし、部長と副部長とで全体の計画や他の職員への指示を行うようにしています。部長である若手職員は、自ら先輩職員に相談したり、先輩職員からの指摘を受けたりしながら、自覚と責任をもって取り組んでいく中で、ノウハウを身に付けることになります。

 さらに、この体制により、若手職員を支えようという職員の意識が出てくることで、組織としての結束力を高めることにつながっています。

④問題解決対応能力の育成と「チーム対応」
 子どもに関する諸問題に対応するときには、必ず、チームで対応します。問題の内容によって、学年主任や生徒指導主事や特別支援教育コーディネーター、養護教諭などでチームとなり、情報を共有し、一人で抱え込まない体制をとっています。悩みを分かち合い、みんなで知恵を出し合い、そして、励まし合うことで、何よりも、安心感をもつことができます。私は、困難なときほど、「みんなで」という意識を高めることで、一人ではないみんなで取り組む協働感を味わうことができると考えています。結果がよければ、満足感や達成感を複数の職員で分かち合うことができます。思わしくない方向に行ったとしても、再度、チームで考えながら、大変さをも分かち合うことができます。その過程を踏むことが、職員の問題解決対応能力を高めることにつながると考えます。何よりも重要なことは、チームで対応することは、職員の心を救うことにつながるということです。

コミュニケーションで円滑に

 組織が機能するためになくてはならないものが、コミュニケーションです。コミュニケーションは潤滑油であり、職員同士という横のコミュニケーション、管理職と主任や部長・副部長という縦のコミュニケーションが円滑になされたとき、組織は動きます。組織が動けば、一人一人の知恵が生まれ、生かされ、学校が活性化します。校長は、日頃から職員に声をかけ、表情を見ながら、適時に課題を与えたり、気付きを促したり、よさを認めたりすることが重要で、その声かけで、職員は安心感を得るのです。人材育成を図るためには、校長として、職員との信頼関係を構築する歩みを続けていくことが大切です。

職員の成長を何で見るか

 職員の姿を見て、話を聞いて、記録を残していくことが大切であり、何と言っても子どもたちの成長が見えたときに、職員の成長があったと言えるのではないかと思います。学校経営方針に沿った評価の在り方について、工夫しながら実践を重ねているところです。

自分らしくある

 学校経営は、その校長らしさが見えるものです。自分の経験や価値観を信じて、一校長として自信をもって取り組むことが大切であり、そうすることが、女性としての持ち味を生かした学校経営につながると信じています。

 

 

Profile
大﨑陽子 おおさき・ようこ
 宮崎大学大学院教育学研究科卒業。昭和59年4月宮崎市立潮見小学校から教職生活をスタートし、現在、延岡市立旭小学校長として勤務。その間、公立小学校(教諭、教頭、校長)、宮崎県教育研修センター(指導主事)で勤務。令和3年度宮崎県女性管理職研究会会長。
●大切にしていることば
 教育は人なり 自分らしくできることをする

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