コラム イマドキの親子図鑑 File.4 「かまわない」ママと「すべき」パパ
トピック教育課題
2022.01.24
コラム イマドキの親子図鑑 File.4
博報堂生活総合研究所 主席研究員 夏山明美
イラスト 磯崎陽子
(『新教育ライブラリ Premier II』Vol.4 2021年11月)
「かまわない」ママと「すべき」パパ
博報堂生活総合研究所の「生活定点」調査には様々な価値観について、「〇〇してもかまわない」と思うか、「〇〇すべき」と思うかを問う質問が多々あります。
具体例を挙げると、「充実した人生のためには、何度結婚してもかまわない」、「結婚は若いうち、できれば30歳までにすべき」と思うかどうか。前者の回答は質問開始以降、ほぼ横ばいでしたが、2018年から上昇し、2020年には28.3%で過去最高を記録。一方、2014年から質問を開始した後者は下降が続き、2020年は26.9%で過去最低となりました。
これらの回答を小中学生の親御さんに限って分析すると、さらなる発見がありました。「充実した人生のためには、何度結婚してもかまわない」と思う人、言うなれば結婚観の革新派は小中学生の母で多く、約4割(38.9%)。父(21.1%)を17.8ptも上回ります。逆に、「結婚は若いうち、できれば30歳までにすべき」と思う保守派は父(36.1%)で多く、母(21.4%)を14.7ptを上回ります。
さらに、他の「してもかまわない」と「すべき」も見てみました。「同性同士で結婚する人がいてもかまわない」(母 65.0%>父 44.0%。21.0pt差)、「年の差が大きく離れた結婚でもかまわない」(母 58.2%>父 45.5%。12.7pt差)、「夫婦が別の姓を名のってもかまわない」(母 48.9%>父 23.7%。25.2pt差)…。同性婚、年の差婚、夫婦別姓といった新しい結婚観の受容性は、いずれもママたちで高くなっていました。
ちなみに、パパたちがママたちより高かったのは、「デートの時の勘定は男が払うべき」(母 15.7%<父 31.2%。15.5pt差)。今や共働き世帯(1240万世帯)は専業主婦世帯(571万世帯)の2.2倍(総務省「労働力調査」2020年)、男性も女性も働くのが当たり前です。しかし、パパたちには「経済面で女性を支えるのは男性の役目」という意識が根強くあるのかもしれません。
時代の移り変わりやコロナ禍によって、従来の普通や常識に加えて、新たな価値観やライフスタイルが生まれています。あなたは、新しさを受け容れて「〇〇してもかまわない」と思いますか。それとも、従来型を踏襲して「〇〇すべき」と思いますか。
*博報堂生活総合研究所「生活定点」調査(最新調査)
・首都40km圏・阪神30km圏
・2020年6月24日〜7月31日(1992年から偶数年に実施)
・20〜69歳男女2,597人(うち、小中学生の父266人、小中学生の母280人)
・訪問留置調査
・データ公開(出典明記により、どなたでもご活用可能)
https://seikatsusoken.jp/teiten/
Profile
夏山 明美 なつやま・あけみ
1984年博報堂入社。主にマーケティング部門でお得意先企業の調査業務、各種戦略立案などを担当。2007年より現職。食や家族関係、消費を中心に生活者の意識・行動の変化を研究。共著に『生活者の平成30年史〜データでよむ価値観の変化〜』(日本経済新聞出版社)など。