わたしの学校経営手帳 女性管理職の視点から[第2回] 教職員の働きがいと働き方改革
学校マネジメント
2021.11.03
わたしの学校経営手帳
女性管理職の視点から[第2回]
theme:わが校の“時短術” ちいさな知恵と工夫、管理職の役割
opinion3:長崎県壱岐市立石田小学校長 松田裕見子
(『新教育ライブラリ Premier II』Vol.2 2021年6月)
教職員の働きがいと働き方改革
久しぶりの学校現場で感じたこと
6年ぶりに学校に復帰し、2か月が過ぎようとしています。子どもたちに、教職員に、保護者に、地域の方々に直接かかわれることの喜びをかみしめ、心躍る思いで日々を送っています。私の学校経営と語れるほどの実践は持ち合わせていませんが、この2か月で感じたことと少しばかりの実践をしたためます。
私が復帰して感じたことの一つ目、それは、先生方は本当によく頑張っていらっしゃるということです。常に子どもたちのために懸命に頑張る姿に感謝の日々です。
二つ目は、学校の教職員の世代交代が加速化していることです。現在本校の平均年齢は、40歳代前半です。毎年初任者が配置され、教職1年目から4年目までの先生が日々奮闘しています。初任者の育成やミドルリーダーの育成は学校経営の核となっています。「育つ・育てる」ことが、学校の活性化、働き方改革の推進につながると感じています。
三つ目は、働き方改革は、待ったなしで進めなければならない喫緊の課題でありながら、この改革に特効薬や近道はなく、地道で創造的な取組を進めていくことが大事であると実感しています。
我が校の働き方改革
我が校の働き方改革に関する取組をまだ道半ばですが、いくつか紹介します。
一つ目は、校務分掌に「働き方改革委員会」を設置し、先生方の意見や気付きを聞き、手立てとして取り入れられるものは取り入れるようにしています。働き方改革の実現のためには、先生方が知恵とアイディアを出し合うことが大事であることを伝えています。実際の取組としては、「印刷お助けボックス」や「学期末事務処理の日」の実施です。お助けボックスの中に印刷してほしいプリントを入れておくと、期日までに印刷ができるシステムです。このように教職員自らが学校をよりよくするための工夫や改善点を発信することにより、自身の働き方改革の意識を高めることにつなげています。
二つ目は、会議の時間短縮です。会議の提案文書は、全て電子データで確認します。時間短縮のための共通理解事項は、職員会議までに必ず各自が提案文書をしっかり読み込んでおくこと、説明者はポイントを絞って、簡潔に説明することです。また、担当は、行事等終了後、反省を生かした次年度の実施計画案の作成を行うようにしています。次年度につながる働き方改革です。また、起案意識及び学校運営への参画意識も高まってきます。
三つ目は、タイムマネジメント力の育成です。時間外勤務45時間を超えない働き方として、日々及び月の時間外勤務時間を意識して仕事をするように促しています。各月の半ばでは、時間外勤務状況を個別に示し、自己コントロールしていく力の育成を図ります。
四つ目は、「少ない労力で最大の効果を上げる」ための仕事の仕方についてです。学校の働き方改革につながる改善策は、校長室通信を通して発信します。例えば、仕事に優先順位を付けること、自分の仕事をルーティン化すること、提出物は先送りしないこと、相手を意識した働き方が、相手の、そして自分の負担を減らすことにもつながっていること等です。教室の掲示についても、掲示用に掲示物をわざわざ作成するのではなく、授業で使った教材や子どもの作品や学習の足跡等を効果的に掲示すること、見栄えより、教育効果を上げることに重きを置いています。
五つ目は「よき休みを取ることが、よき仕事につながる」、このことをしっかり伝え、数値指標として最低年間年休取得15日間を推進しています。また、出産や子育てまっただ中の先生方が多い本校においては、休暇の紹介や取得の奨励等、校長自ら発信し、子どものために休みを取りやすい環境づくりを心がけています。
六つ目は、新型コロナウイルス感染症対策により、これまでの教育活動の内容や運営等を見直す中で気付かされたことも多く、目標値の置き方や子どもの主体性を育成する工夫、内容等で見直したことを教育活動に生かしていくようにしています。
七つ目は、今年度立ち上がった学校運営協議会を軌道に乗せ、熟議を重ねながら、学校や家庭、地域との連携を推進することで、学校教育、家庭教育、社会教育の充実を図っていくことです。
教員の働きがい
また、別の視点から働き方改革を見ると、働きがいを感じること、これも働き方改革の大事なポイントと感じます。働きがいを感じる職場づくりが、先生方のポテンシャルを高め、元気にし、子どもの教育によりよく働くと考えます。働きがいを感じるためには、まずは、健康で、生活の土台である家庭生活が充実していることが大事です。私自身も子育てをしながら仕事をしてきた経験を思い起こし、健康面や家族のことを話題にしながら、ワークライフバランスのライフの部分を大事にするように働きかけています。家庭が安定してくると先生方の表情が明るくなるのを感じます。
次に、何より教師の働きがいは、目の前にいる子どものよき変容と捉えます。子どもをよき変容に導く学校教育、その核は授業であることを先生方と共有しています。「よい授業」をすると、「よい子ども」が育ち、「よい学級・よい学校」ができる。このことは、私が教えていただいた教訓であり、学校経営の中心に据えていることです。
校長と教職員が目指す授業を共有する学校
先生方が日々働きがいをもてる職場にするために、気軽に授業を見せ合い、語り合う雰囲気があること、そして、校長と教職員の間で「授業」を共有できる学校を理想としています。そのための方策の一つとして、目標管理制度における面談(6月・11月)の際には、事前に全ての先生方の授業を見て、評価シートを作成し、それをもとに面談を行うようにしています。評価シートは、学校が進める校内研究と整合がとれるように工夫しています。理想とする授業を校長と教職員が共有し、追い求めながら、同じ目標に向かって授業改善を進めること、そのような体制が、先生方の働きがいや、やりがいにつながることを期待しています。
まだまだ課題ばかりですが、働き方改革に向かう中で、教職員一人一人が働きがいを感じることができる学校経営をめざし、教職員と共に頑張っていきます。
Profile
松田 裕見子 まつだ・ゆみこ
壱岐市立石田小学校から教職人生をスタート。現在、初任校である壱岐市立石田小学校に校長として勤務。その間、長崎県公立小学校(教諭、教頭、校長)、壱岐市教育委員会学校教育課(指導主事、課長)、長崎県教育庁義務教育課(管理主事、参事、人事管理監)で勤務。
●大切にしていることば
昨日から学び、今日を生き、明日に期待しよう。