わたしの学校経営手帳 女性管理職の視点から[第1回] キャリアに応じた組織運営参画の実践力の向上と管理職の役割

学校マネジメント

2021.09.23

わたしの学校経営手帳
女性管理職の視点から[第1回]

theme:学び合う教師集団づくりと管理職の役割
opinion1:福岡市立長丘小学校長 松尾友子

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.1 2021年4月

キャリアに応じた組織運営参画の実践力の向上と管理職の役割
生徒指導目標の共有と共通実践を通して

前任校での実践

 前任校は、児童数120人の小規模校で、個業的な組織体制でした。しかし、全職員で児童を育てる協働の取組ができないかと考え、生徒指導目標を児童と職員が共有する実践に取り組みました。

 まず、校長と生徒指導部長とで5つの合言葉を決め「スタンダード」と名付けて掲示物を作成(写真1)。生徒指導部長に、児童が振り返るしくみをつくるよう指導。さらに主幹教諭には、職員評価で振り返りと改善の協議を行うよう、教頭には、実態を把握し、評価と価値づけを行うよう指導しました。

 1年たつ頃には校外でも靴をそろえる態度が見られ、児童と職員の口から「スタンダード」という言葉がよく出るようになりました。共通実践の一体感を、だんだんと生み出すことができたと思います。

現在校での実践

 現在の勤務校は、児童数740人の学校です。令和2年度はコロナ禍にあり、児童と職員が、学校生活に停滞感や不達成感を感じて終わってしまうことを強く懸念しました。そこで、前任校と同様の取組を考えました。中規模校なので、前任校とは違う推進が必要です。まず、以下のように方針を示しました。

 コロナ禍にあっても、児童と職員が成長の実感をもてる1年間にするために、

・生徒指導目標をシンプルな言葉で見える化し、児童と職員とで共有して共通実践を行う。
・「福岡市教員育成指標(表1)」をもとに、職員のキャリアに応じた学校運営参画の実践力向上を目指して、組織を機能化・活性化させる。

 さらに、以下のことを指導しました。

〇教頭(発展期②)・主幹教諭(発展期①)
・職員同士のコミュニケーションを活発にし、自発的な創意工夫を引き出して、組織を活性化させる。
・職員のキャリアに応じて、指導助言をする。

〇学年主任(充実期)
・学年内で、課題解決に向けた改善を進める。
・(基礎期・深化期)にあたる職員に助言する。〇生徒指導部長(深化期)
・児童の実態を把握し、課題を明確化する。
・意見を集約して、目標をシンプルに合言葉で表す。
・見える化を図り、共有を進める工夫をする。
・部会内で、職員(基礎期)に考えを求め、活発に議論し挑戦する。

〇全職員
・自分の立場で、児童の姿として表すために何ができるか考え、共通実践する。

 この方針を受け止め、だんだんと職員から主体的な実践が生まれてきました。

 まず、生徒指導部長(深化期)が、職員の意見を集約して合言葉を4つ(挨拶、掃除、名札着用、靴そろえ)に決め「長丘スタンダード」と名付けて掲示物を作成(写真2)。部内でこの4つを推進する担当者(基礎期)をそれぞれにおき、進捗状況を確認しながら助言しました。児童アンケートを実施して結果を放送や掲示で知らせ、児童が学級で話し合うきっかけをつくりました(写真3)。

 (充実期)に当たる職員は、学年会で振り返りと課題解決について話し合う時間をつくり、「掃除中は担任が分担して廊下に立つ」「他のクラスにも声をかける」等の学年の実践を進めました。

 推進担当者(基礎期)は、「そろっている靴箱の写真をとって掲示する」「よいクラスを放送で発表する」等の手立てを考え、生徒指導部長や先輩教員に助言を求めながら推進しました。

 担任は学級で児童に考えさせ、「靴箱の前で落ち着いて3秒数える」「上手にできたら名前をボードにはる」等のアイディアを引き出していました。

 教頭は、取組が停滞したときに、部会でチェック機能を働かせて新たな取組を始めることを助言。主幹教諭も、生徒指導部長に「(基礎期)の職員に分担して担当させてはどうか」と組織的な推進の仕方を助言し、さらに、職員評価で数値化して、改善を図る会議を設けました。両者とも、実態を観察し課題を把握することや、インフォーマルな場での職員との積極的な対話も大切にしていました。

 校長としては、教頭、主幹教諭より報告を受けて適宜指導するとともに、学校便りでの発信を通して、保護者・地域との共有を進めました。

 1年間の取組を通して、職員から以下のような感想が上がり、キャリアに応じた組織参画が見られました。

○部会で話し合い様々な工夫をしたので、昨年度よりも徹底して取り組むことができた。(充実期)

○昨年度と比べて、部の動きが活発になったことを実感した。来年度も改善を図りたいという展望をもつことができた。(深化期)

○学校全体を見るようになり、推進担当者をやったかいがあった。役に立ててうれしかった。(基礎期)

○次年度の取組を精選する必要がある。(充実期)

 まだ取組は半ばですが、年度当初に比べ掃除時間は静かになり、靴箱も格段にきれいになりました。職員の中に、さらなる協働の組織文化が構築されてきたと感じています。

 しばらく続きそうなコロナ禍にあっても、児童、職員ともに、着実に前進していく学校経営に努力していきたいと思います。

 

 

Profile
松尾 友子 まつお・ともこ
 昭和36年生まれ。福岡教育大学卒、専門は算数科。平成24年4月福岡市立西高宮小学校教頭、平成27年4月福岡市立今津小学校長を経て、平成30年4月より現職。福岡市小学校算数教育研究会会長、福岡県公立学校等女性管理職会会長。趣味はジャズピアノを聞くこと。
●大切にしていることば
 人を変えるには、まず自分から

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