教頭・副校長のための時間が増える! 仕事のワザ[第1回]校長と教頭・副校長が一枚岩になると時間が生まれる

学校マネジメント

2021.09.09

教頭・副校長のための時間が増える! 仕事のワザ
[第1回]校長と教頭・副校長が一枚岩になると時間が生まれる

岐阜聖徳学園大学教授 
玉置 崇

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.1 2021年4月

まずは自己紹介から

 今回から「教頭・副校長のための時間が増える! 仕事のワザ」を6回にわたって紹介します。私自身ですが、市の中心校で教頭職を6年間にわたって務めました。この学校の校長は、校長会長を始め様々な教育機関での要職を担う伝統校であり、そのため校長の出張が多い学校でした。また、平成10年度に校舎が新設され、各教室にネットワークでつながっているコンピュータが設置された、当時としてはとても斬新な学校でした。したがって、視察者が多く、その対応も大変でした。

 学校規模も大きく、例年800人近い生徒がいて、外国人生徒数も市内一でした。当然、教職員数も多く、10日も直接会話をしていない教員がいることにふと気づき、「教頭=教員の頭(かしら)」と考えていた自分としては、コミュニケーション不足を反省したことも少なくありません。さらに校区も広く、区長の方々からお叱りを含めて様々な助言をいただくことが多々ありました。

 こうした学校事情の中で、業務の無駄を省き、効率的に仕事を進め、教職員や保護者や地域の方々とコミュケーションを図ってきた経験をもとに、教頭・副校長の皆さんにお役に立つ仕事のワザを提供していきます。どうぞご期待ください。

学校管理職は二人しかいない

 学校は企業とは違い、校長と教頭・副校長の二人の管理職しかいません。したがって、校長と教頭・副校長の間に溝があっては、学校運営はうまくはいきません。立場的には、校長の考えに従うべきですが、自分自身が気持ちよく働くためには、ストレスが生じる従い方であっては、管理職は一枚岩になれません。一枚岩になると、次に実例を示すように時間が生まれてきます。ストレスが生じない校長との連携の方法を、経験からお伝えします。

校長に学校経営で一番大切にしたいことは何かを聞く

 連携をとるためには、校長が学校経営にあたってどのようなことを大切にしたいと考えているかをきちんと聞くことです。聞いておくことで、自身が教職員や保護者から質問を受けたときの対応の指針とすることができます。つまり、教頭・副校長として判断を求められたときに、「校長ならこう決断するだろうな」と想像できなくてはいけません。一枚岩であるというのは、校長に聞いても、教頭・副校長に聞いても、ほぼ同様な返答があるということです。

 そのためにも、新年度早い時期に校長に聞いておくことです。最初に仕えた校長は、そのときに「春風以化(しゅんぷういか)」という言葉を示されました。「伝えるべきこと、助言すべきこと、指導すべきことなどは遠慮せず行い、子どもたち、教職員、保護者が、学校から出るときには、とても良い時間だったという思いが持てること、つまり、心の中には自分を包み込む温かい春風が吹いている、そのような思いをもってもらえる学校にしよう」、このようなことを言われました。そして、「私はいろいろな役職があって、不在なことも多い。春風以化を心して対応してくれれば、私にいちいち判断を求める必要はない。責任は私がとるので、思う存分やってください」と付け加えられました。

 実にありがたい言葉でした。校長をないがしろにするわけにはいきませんので、何かと校長に伝え、判断を仰ぐあまり、時間が経ってしまい、そのことで苦情が出ることがありませんか。あなたが判断すればよいとのお墨付きがあれば、仕事はとてもやりやすくなります。時間が生まれます。こうした言葉を引き出したのは、校長の思いを教頭・副校長として具現化したいという姿勢を示したからです。多くの校長は、自身が教頭・副校長であったときに、自分に決裁権限があれば……と思ったことが何度もあるはずですので、「あなたに任せる」という言葉を上手に引き出してください。

業務報告はメールで

 いくら校長が任せたと言っても、報告は必要です。ただし、その時間をわざわざ作り出すことはお互いに忙しい身ですから、避けた方が良策です。

 そのために私がとった手段は、メールで簡単に報告することです。箇条書きで項目名のみ記した(例○先生は痛風疾病、□区長から通学状況の苦情、△校長から電話あり)こともあります。校長は「何かと忘れてしまう年齢になっているので、この方がありがたい。口頭で伝えてもらうより記録に残っていい」と言いました。自分の業務の整理にもなります。

 そのうちに、心の底からこの教頭には任せられると感じたのでしょう。「メール報告はよほどのことがなければいいよ。だから、あなたが伝えに来るときは、大変なことが起こったと思うことにするからね」と笑って言われました。管理職として、一枚岩になったという感覚を覚えています。

 

 

Profile
玉置 崇 たまおき・たかし
 1956年生まれ。愛知県公立小中学校教諭、愛知教育大学附属名古屋中学校教官、教頭、校長、愛知県教育委員会主査、教育事務所長などを経験。文部科学省「統合型校務支援システム導入実証研究事業委員長」「新時代の学びにおける先端技術導入実証事業委員」などを歴任。「学校経営」「ミドルリーダー」「授業づくり」などの講演多数。著書:『先生と先生を目指す人の最強バイブルまるごと教師論』(EDUCOM・2020年)、『先生のための話し方の技術』(明治図書・2021年)など多数。

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