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トラブルの芽を摘む管理職の直覚

中山大嘉俊

トラブルの芽を摘む管理職の直覚 [第10回] 「はい。でも、もう少しだけ…」

NEW学校マネジメント

2019.10.07

トラブルの芽を摘む管理職の直覚

[第10回] 「はい。でも、もう少しだけ…」

大阪市立堀江小学校長
中山大嘉俊

『リーダーズ・ライブラリ 』Vol.10

「はい。でも、もう少しだけ…」

 文部科学省はこの12月、教員の時間外勤務の上限を「月45時間、年360時間」と初の数値目標を示しました。同省ではこの上限を小学校教員の8割強、中学校教員の9割弱が超しているとしています。長時間勤務は、コンプライアンス上の問題、過労死やメンタルヘルス不全といった健康障害、モラール・モチベーションの低下など様々な面で弊害が出るといわれています。ワーク・ライフ・バランスをより意識して働くことも含めて働き方への私たち自身の意識改革や長時間勤務の是正は「待ったなし」の状況にあります。

 その一方で、「削減が望ましいのは百も承知だが無理」という声があります。新学習指導要領への対応も含めて業務量が増え続けている「ビルド&ビルド」の実態や教職員の分業化も進まない状況があるのに、学力や体力をはじめ教育活動全般に渡って結果を出さなければならないという学校の総合力の向上も求められているからです。企業でいう“生産性の向上”であり、長時間勤務の削減と学校力の向上という二兎を追うことになります。このことをふまえた上で、長時間勤務の是正を校長が校内外に宣言することが第一歩です。単なる強制ではなく、教職員一人一人のムリ・ムダな働き方を正していくこと、管理職のマネジメントの見直しも含め組織全体として実効性のある対策を立てて本気で取り組むこと、そして子供の姿を通して保護者や地域の理解を得ていくことが鍵です。

自分自身の状況を知る

 まず、校内で実態調査をするなどして教職員個々の時間外勤務の実態を把握します。前年度や各月の比較もしながら、削減についての個人目標の設定ができるようにします。

 そして、勤務の全体状況を、個々の教職員の能力・仕事の仕方等と管理職のマネジメントも含めてその教職員が置かれている状況から次のように整理して「見える化」します。

①どういった教職員が …仕事に不慣れ、こだわりがある、進め方や優先順位が分からない、ムダがある、事務処理能力が低い、「時間内に」という意識が低い、同僚を気にして帰りづらい、締め切り間際に仕事をする、独りよがり、がむしゃら、等

②どういった環境の下で …資料作成など仕事量が多い、提出物の締切にゆとりがない、長時間の会議が多い、連絡調整に時間がかかる、残業の長さを評価する、不必要な仕事まで振られる、できる教員に仕事が集中する、管理職自身の労働時間が長い、等

教職員個々へのアプローチ

 アンケート集計などは、1クラス分でも欠けると全体集計や分析ができません。分掌業務では同僚と関連する仕事がほとんどです。締切間際の残業が当たり前になっている教職員には、小さな締切を設ける、締切日ではなく開始日を意識して仕上げるよう指導します。学年主任が仕事を抱え込んでいる場合には、人に仕事を任せて育てることも主任の役割であることを自覚させ具体を話し合います。同僚が遅くまで働いているので帰りづらいといったことには、定時に仕事を終えるのが普通だという雰囲気をつくることも必要です。

 ところで、若手教員は、教材研究に追われているだけでなく、例えば、子供と遊ぶ、日記やノート指導を毎日するなど、自分の思い描く理想に近付くために無理をしがちです。その結果、残業が多くなってしまいます。こういう時期も大切ですが、時間の使い方を考えさせるとともに、度を過ぎた残業は過重労働防止の視点からストップをかけます。

組織的な取組の流れ

 最初は校長主導でも、教職員の主体的な取組になるようにプロジェクト(以下、PJ)をつくるなどボトム・アップに配慮しながら、概ね次の流れで環境改善等に取り組みます。

①削減に向けた取組事項の洗い出し …管理職、教職員(個、学年、PJ、全体)で“長時間”の原因や無駄を検討し、すべきこと、できることを洗い出す。

②具体的な取組及び改善策の検討 …PJを検討組織として、長時間勤務の是正に向けた具体的な取組及びその改善策を検討する。

③数値目標の設定 …削減の具体的数値目標(全体と個)を立てて実行する。

④検証・改善へのアクション …実践を通して、どの程度改善できたか検証する。個々の教職員と取組やその結果等について面談する。

 次のような取組や改善案の検討にはブレインストーミング等も取り入れるようにします。

•教育活動の焦点化
…学校行事や取組の優先順位の決定と選別、廃止、統合

•仕事の割振りと配分
…仕事量の平準化、各校務分掌や学年内の教員への配分の見直し、若い教職員を育てるという観点からの仕事の切り分け

•会議の見直し
…テーマや内容の事前の周知、開始時刻・就業時間内の終了の厳守、話し合う必要の有無(議事と資料の選別)、資料を読み上げる時間の省略

•仕事の効率化
…探すムダの排除(作成データ等の一覧表の作成、保存の工夫)、マニュアルの作成、作業環境の改善(印刷機や丁合機の整備、整理整頓)、外部の応援

•長時間勤務の是正に向けた仕組みづくり
…長期休業中の会議や研修 など

 本校では、毎週水曜日に「子どもとの日(会議・討議会等一切なし)」を設けたことが教職員には好評でした。上述の取組で時間外勤務は全体では漸減しているものの2極化がみられ、長時間労働の教員には産業医との面接を指示しています。また、何より管理職自身の働き方改革が進まずに範を示せていないことを反省しています。

 

Profile
大阪市立堀江小学校長
中山大嘉俊
なかやま・たかとし 大阪市立小学校に40年間勤務。教頭、総括指導主事等を経て校長に。首席指導主事を挟み現任校は3校目。幼稚園長兼務。大阪教育大学連合教職大学院修了。スクールリーダー研究会所属。

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大阪市立堀江小学校長

大阪市立小学校に40年間勤務。教頭、総括指導主事等を経て校長に。首席指導主事を挟み現任校は3校目。幼稚園長兼務。大阪教育大学連合教職大学院修了。スクールリーダー研究会所属。(2019年3月時点)

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