中央教育審議会「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」
学校マネジメント
2019.08.19
中央教育審議会「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」
平成27年12月21日(抄)
2.「チームとしての学校」の在り方
これからの学校が教育課程の改善等を実現し、複雑化・多様化した課題を解決していくためには、学校の組織としての在り方や、学校の組織文化に基づく業務の在り方などを見直し、「チームとしての学校」を作り上げていくことが大切である。
そのため、現在、配置されている教員に加えて、多様な専門性を持つ職員の配置を進めるとともに、教員と多様な専門性を持つ職員が一つのチームとして、それぞれの専門性を生かして、連携・分担することができるよう、管理職のリーダーシップや校務の在り方、教職員の働き方の見直しを行うことが必要である。また、「チームとしての学校」が成果を上げるためには、必要な教職員の配置と、学校や教職員のマネジメント、組織文化等の改革に一体的に取り組まなければならない。
「チームとしての学校」像
校長のリーダーシップの下、カリキュラム、日々の教育活動、学校の資源が一体的にマネジメントされ、教職員や学校内の多様な人材が、それぞれの専門性を生かして能力を発揮し、子供たちに必要な資質・能力を確実に身に付けさせることができる学校
今後、「チームとしての学校」を実現するためには、次の3つの視点に沿って検討を行い、学校のマネジメントモデルの転換を図っていくことが必要である。
①専門性に基づくチーム体制の構築
まず、教員が教育に関する専門性を共通の基盤として持ちつつ、それぞれ独自の得意分野を生かし、学校の中で、学習指導や生徒指導など様々な教育活動を「チームとして」担い、子供に必要な資質・能力を育むことができるよう指導体制を充実していくことが重要である。
あわせて、心理や福祉等の専門スタッフを学校の教育活動の中に位置付け、教員との間での連携・分担の在り方を整備するなど専門スタッフが専門性や経験を発揮できる環境を充実していくことが必要である。
②学校のマネジメント機能の強化
教職員や専門スタッフ等の多職種で組織される学校がチームとして機能するよう、管理職の処遇の改善など、管理職に優れた人材を確保するための取組を国、教育委員会が一体となって推進するとともに、学校のマネジメントの在り方等について検討を行い、校長がリーダーシップを発揮できるような体制の整備や、学校内の分掌や委員会等の活動を調整して、学校の教育目標の下に学校全体を動かしていく機能の強化等を進める。
また、主幹教諭の配置を促進し、その活用を進めるとともに、事務職員の資質・能力の向上や事務体制の整備等の方策を講じることにより、学校の事務機能を強化することが必要である。
③教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備
教職員や専門スタッフ等の多職種で組織される学校において、教職員一人一人が力を発揮し、更に伸ばしていけるよう、教育委員会や校長等は、「学び続ける教員像」の考え方も踏まえ、学校の組織文化も含めて、見直しを検討し、人材育成や業務改善等の取組を進める。
また、教育委員会は、教職員が安心して教育活動に取り組むことができるよう、学校事故や訴訟への対応について、教職員を支援する体制を強化していくことが求められる。
(1)「チームとしての学校」を実現するための3つの視点
「チームとしての学校」を実現するためには、次の3つの視点に沿って施策を講じていくことが重要である。なお、本答申は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等を対象としているが、学校種や、学校、児童生徒等の状況によって、学校のマネジメント体制や専門スタッフの配置など「チームとしての学校」の具体的な在り方は異なってくることから、それぞれの実態等を踏まえた検討を行うことが必要である。
①専門性に基づくチーム体制の構築
(チーム体制の構築)
我が国の学校の教員は、従来から、教育に関する専門性を共通の基盤として持ちつつ、それぞれ独自の得意分野を生かし、学校の中で、学習指導や生徒指導等の様々な教育活動の場面で「チームとして」連携・分担し、成果を上げてきた。
一方、近年は、学校の多忙化等が指摘される中、教員が孤立化しているという指摘もある。今後、教員の資質・能力を上げていくためには、それぞれの学校において、教員集団の資質・能力の向上に取り組むことが重要であり、教員が「チームとして」教育活動に取り組むことが求められている。
そのためにも、まず、教員が学校や子供たちの実態を踏まえ、学習指導や生徒指導等に取り組むことができるよう、指導体制の充実が必要である。加えて、心理や福祉等の専門スタッフについて、学校の職員として、職務内容等を明確化し、質の確保と配置の充実を進めるべきである。
その際、多様な専門性や経験を有する専門スタッフ等が学校の教育活動に参画することとなることから、教員も専門スタッフも「チームとしての学校」の一員として、目的を共有し、取組の方向性をそろえることが今まで以上に求められる。
あわせて、関係者間の情報共有が重要となることから、相互に十分なコミュニケーションを取ることができるようにする必要がある。ICT機器等も活用し、共有すればよいもの、相談することが必要なものなど、情報の重要性等を勘案して、コミュニケーションの充実に取り組んでいくべきである。
チーム体制を構築していくに当たっては、それぞれの職務内容、権限と責任を明確化することによって、チームを構成する個々人がそれぞれの立場・役割を認識し、当事者意識を持ち学校の課題への対応や業務の効率的・効果的な実施に取り組んでいくことが重要である。
(学校における協働の文化)
また、「チームとしての学校」を支える文化を創り出していくことも重要である。多様な経験や専門性を持った人材を学校教育で生かしていくためには、教員が、子供たちの状況を総合的に把握して指導を行い、成果をあげている面にも配慮しながら、教員が担うべき業務や役割を見直し、多職種による協働の文化を学校に取り入れていくことが大切である。
例えば、養護教諭や栄養教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、看護師等などの数が少ない、少数職種が孤立しないよう、学校全体で意識改革を行い、専門性や立場の異なる人材をチームの一員として受け入れることがあげられる。
さらに、学校教育に参画する専門スタッフにも、子供の教育を共に担っていくチームの一員であるという意識が求められるとともに、学校の仕組みや教員の文化等に関する理解が必要であり、教育委員会等は、事前の研修等も含め、しっかりとした支援を行う必要がある。
(「チームとしての学校」の範囲)
「チームとしての学校」の範囲については、学校は、校長の監督の下、組織として責任ある教育を提供することが必要であることから、少なくとも校務分掌上、職務内容や権限等を明確に位置付けることができるなど、校長の指揮監督の下、責任を持って教育活動に関わる者とするべきである。
その上で、本審議会の答申「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方や今後の推進方策について」において、提言されているように、学校と地域はパートナーとして相互に連携・協働していくことが重要であることから、今後、コミュニティ・スクールや地域学校協働本部(これまでの学校支援地域本部等の体制を発展させた学校と地域がパートナーとして連携・協働する体制)等の仕組みによって、地域コーディネーター、地域住民等の参画により、学校支援活動、放課後の教育活動、安全・安心な居場所づくり等を通じて、社会総掛かりでの教育を実現していくことが必要である。
(教職員や専門スタッフの人材の確保)
「チームとしての学校」の具体的な在り方は、学校種や学校の規模、学校が置かれている地域の状況等によって異なってくるものと考えられるが、「チームとしての学校」を実現するに当たっては、専門スタッフに係る人材を確保する必要がある。
教員については、教員免許制度や研修制度によって質の確保を図るとともに、全国に一定水準の教職員が配置されるよう、学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法(人材確保法)に基づく優遇措置や義務教育費国庫負担制度、学級編制及び教職員定数の標準に関する制度等が設けられている。
専門スタッフの参画を進めるに当たっても、全国的に格差が生じることのないよう、計画的に配置を促進するとともに、専門スタッフが日常的・継続的に児童生徒と関わることができるよう、十分な体制と処遇の確保も必要である。
また、都市部と中山間部では、必要とされる人材や地域人材の状況等も異なることから、保護者や地域の期待等も踏まえ、優先順位をつけて配置していくことが重要である。
さらに、学校や地域の実態によっては、外国の言語や文化的な背景を理解できるような専門スタッフの養成や活用も求められている。