ぎょうせい「学びのある」学校づくりへの羅針盤 スクールリーダーのための実務情報サイト

学校改革の新定石Ⅱ

西留安雄

学校改革の新定石Ⅱ[第1回]通知表を見直そう

NEWトピック教育課題

2019.08.20

学校改革の新定石Ⅱ
[第1回]通知表を見直そう

新教育課程ライブラリII Vol.1 2017年1月

 通知表は誰のためにあるのだろう。子供の成長を支えるためだけではなく、教師自身が自らの指導を振り返るためにもあるのではないか。子供が「もらって良かった」、教師は「渡して良かった」と思えるようなものこそが目指す通知表である。ところが、通知表の記載内容は、あくまでも子供の責任とし、具体的な改善策を示さない教師がいる。難解な用語で記述したり、一担任の判断だけで出す教師もいる。そこで改善策を示すことにする。

◎子供の学校での様子を、具体的に家庭に知らせる通知表にする

◎子供の励みとなり、次のステップに繋げるような通知表にする

◎担任任せにせず、管理職が積極的に関わる通知表にする

これからの通知表

 通知表を受け取る子供や保護者の気持ちを考えたい。そのために担任は、改善策を具体的に記述するとよい。子供や保護者と一緒になり、課題解決を図ることが重要だからだ。また、これまでの通知表は、その時期の結果を判断し記入しただけのものであるので、その後に成果が出たらデータを修正して渡すようにするとよい。“敗者復活”の方法だ。

 小学校と中学校とで通知表の在り方の整合性を図ることも重要だ。かつて中学校に進学した子供が小学校の評価との違いにとまどう場面を多く見てきた。小学校の「すばらしい、すばらしい」「成果だけを記入する記述」の評価と、中学校の「数値を基準にした評価」に、子供や保護者がとまどう姿を見て複雑な思いがしてきたからだ。

 通知表を配布する時期も検討するとよい。これまでの終業式の後に配布する方法は、質問ができないような状態となっている。そこで、かつての勤務校では、終業式の1週間前には通知表を配るようにした。通知表を渡してから1週間の猶予を置き、質問にじっくり応えるようにした。そのため担任には緊張感があった。データの裏付けには気を遣っていた。こうした方法が本当の学校常識ではないだろうか。

成果・課題・改善策からの所見記述

 これまでのほめ言葉だけでの所見記述では、「あ、そうか」で終わる。励ましとはならない。そこで、もらって良かったという所見記述にするためには、校内研究のワークショップ手法を使うと良い。成果・課題・改善策の3点から記述すれば、子供を多面的に見られるようになるからだ。どの子にも課題がある。そのことについての改善策を書くと、子供や保護者に更なる目標ができる。

〇低学年記述例(成果課題・改善策
 入学当初は、自分から友達にかかわることができませんでしたが、ペア学習や異学年交流を通じて徐々に積極的になり、今ではいろいろな場面で友達と協力することが多くなりました。作文に苦手意識があり、「知らせたいな、見せたいな」の学習で金魚の観察をしたときは、「何を書けばわからない。」と言っていました。そこで、色や形など観察の視点を教えました。後期は、毎日学びの交換便を書くことで、書くことの経験を積み重ねさせます。

〇中学年記述例(成果課題・改善策
 「わり算の筆算」の学習では、朝のドリルや放課後学習で繰り返し練習をすることで、計算を素早く正確に行うことができるようになりました。責任感が強く教室の清掃に熱心に取り組んでいますが、真剣さからか友達に厳しく言って嫌な思いをさせることがありました。これからは、仲良く手際よく仕事ができるように、言い方をほんの少し変えていけるように見守っていきます。

〇高学年記述例(成果課題・改善策
 学習したことを色分けしながら丁寧にノートにまとめポイントを押さえて書けました。ノートコンクールでは惜しくも入賞できませんでしたが、理解力が確実にアップしてきています。〇〇委員会では仕事を忘れてしまうことがあり、委員会の役割や高学年としての自覚と責任感について指導しました。後期は、副委員長として委員長を助け、進んで仕事に取り組むように励ましていきます。

管理職の関わり

 記述した通知表を管理職が印を押すだけでは、「見ていない」ことと同じだ。そこで、担任が記述する所見は、校長が下書きの段階から積極的に関わるようにするとよい。かつての勤務校は、2学期制であったため、夏期休業日に前期の所見書きを義務付けた。後期は、冬季休業日とした。

 所見のチェックに当たっては、前述したような記述となっているか、子供の人権を重んじる記述となっているか等を重視した。下書きは、鉛筆やパソコンを利用させた。担任によっては、全面的に書き直しをさせたりする場合もあったからだ。

 通知表を子供に渡す1か月前には、ほとんど完成していたので教師もゆとりがあった。中には、「なぜ、こんなに早い時期に作成するのか」と疑問をもつ教師もいたが、学校の仕組みとして確立していたので、それが当たり前と思う教師が多かった。それが結局的には、教師の普段の仕事にゆとりをもたせていた。なお、指導要録も2月には提出させた。多忙な3月には、教師が仕事に追われるので、それを避けたかったからだ。3月1日からは、新しい年度の出発の月にしたい思いもあった。

 

Profile
西留安雄
にしどめ・やすお 東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。大岱小では校長在任中に当時学力困難校といわれた同校を都内トップ校に育てた。現在、高知県・熊本県など各地の学力向上の指導に当たり、授業・校務の一体改革を唱える。主著に『学びを起こす授業改革』『どの学校でもできる!学力向上の処方箋』など。

この記事をシェアする

特集 中教審答申を読む(1)─改訂の基本的方向

新教育課程ライブラリIIVol.1

2017年1月 発売

ご購入はこちら

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

西留安雄

西留安雄

清瀬富士見幼稚園長

東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。

閉じる