学校改革の新定石Ⅱ
学校改革の新定石Ⅱ[第8回]地域人材を生かす
トピック教育課題
2019.08.27
学校改革の新定石Ⅱ
[第8回]地域人材を生かす
中央教育審議会答申は、平成27年12月に「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」をとりまとめた。その中心は、「地域とともにある学校への転換」である。
こうした答申を受けるまでもなく、これまで多くの学校が学校運営協議会制度を導入し、「コミニュティ・スクール」として学校の活性化を行ってきた。地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを明確にするためである。こうした主旨は多くの学校に浸透しているが、まだまだ課題がある。教育は学校だけが担うという考え方が教師に残っているからだ。コミニュティ・スクール制度は導入しているが、教育活動の中心を地域が担うまでには至っていないのが現実だ。
コミニュティ・スクールへの校長の方針
かつての勤務校で地域の教育力を入れることに苦労したことがある。地域の方の「子供の見守り」「花壇整備」「土曜日の教育活動」「放課後子供教室」……。こうした内容には、多くの教師が賛成したが、肝心の授業や行事の補助に難色を示す教師がいた。また、学校(教師)がお世話になったら、返礼をするという当たり前の考え方を持つ教師が少なかった。こうした考えを変えるために、校長として次のような方針を出した。
〇地域との連携
・学校が多くの方にお世話になっていることを忘れてはならない。
・全体への奉仕者であるので、年2回以上の奉仕活動をする。
・教師だけで学校を動かさず、地域の方・保護者・中学生を学校運営スタッフに入れる。
〇具体的な連携内容
・地域の青少年に関する行事に、教師がボランティアとして参加する。
・運動会・学習発表会・合唱コンクール等の行事では、教師は子どもの側から離れない。そのため、中学生・保護者・地域の方にボランティアとして入ってもらう。
・サマースクールや補習活動では、中学生・保護者・地域の方に丸付けボランティアとして入っていただく。
読書選手権大会(学校評議員を中心とした外部委託行事)
かつての勤務校では読書の時間を設定していたが現実は子供たちの本離れがあった。本にまったく親しんでいない子供がいたのも確かだ。そこで年に1冊でもよいから本を読んで欲しいと考え、クイズ形式の読書選手権を開催した。卒業までに、6冊の本だけでも読んで欲しいとの願いがあった。なお、運営を外部人材に委託した。学校評議員、PTA、地域の方が運営の中心となった。スタッフは外部人材であるので教師にはゆとりがあった。教育は学校だけで担っているのではないという考えを教師に持たせたいことも開催の理由の一つであった。
ねらいは、「本に親しみ、進んで読書に取り組む」であった。読書を通して、異学年との交流をするとした。当日の仕事内容(準備物、担当者)は、①司会進行(学校評議員)、②放送(地域の方)、③ステージ設営(学校評議員)、④○×クイズ問題(PTA)、⑤問題作成(連絡員の子供と学校評議員)、⑥問題読み上げ、(学校評議員)、⑦児童管理(担任)、⑧表彰(学校評議員)、⑨開会閉会式挨拶(学校評議員)等である。
読書選手権を外部の方に委託したため、学校理解が深まり、外部人材の学校参観からスタッフとしての参加という流れに変わった。本に親しむ子が増えたことも成果だが、外部人材を学校に入れることへの教師の抵抗感をなくせたことが一番大きかった。
サマースクール(中学生・保護者・地域の方がスタッフ)
ねらいを、「友達、教師、ボランティアとのふれあいを通して、よりよく人とかかわり合おうとする態度を育む」とした。7月21日から8月19日までの約1か月間行った。スタッフは、主に中学生・保護者・地域の方だ。子供たちは、主に自分の課題を解決するために12会場に分かれ参加した。中学生・保護者・地域の方がスタッフであったため、子供たちは教師と違う一面を見せた。教師には、サマースクールを担当させなかったため、ゆとりがあったと思う。
運動会(中学生・地域の方がスタッフ)
ねらいの一つに「保護者・地域と連携して運動会を楽しく盛り上げる場とする」ことを掲げた。中学生と地域ボランティアが係活動を行うようにした。そのため、運動会の企画会議に中学生・地域・保護者を参加させた。昼食や反省会も中学生・地域・保護者とともに行った。
教師はいずれ転勤や退職があり、その地域から去る。地域の方や保護者は、ずっと住み続ける故郷である。そう考えれば、地域や保護者が学校の教育活動のスタッフとして入ることは至極、当然のことだ。これまでの学校や教師が何もかも担うことは止めるとよい。地域の人材を活用することは、教育活動の充実に繋がるので、ぜひ検討していただきたい。
Profile
西留安雄
にしどめ・やすお 東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。大岱小では校長在任中に当時学力困難校といわれた同校を都内トップ校に育てた。現在、高知県・熊本県など各地の学力向上の指導に当たり、授業・校務の一体改革を唱える。主著に『学びを起こす授業改革』『どの学校でもできる!学力向上の処方箋』など。新刊『アクティブな学びを創る授業改革』が好評刊行中。