教師生活が楽しくラクになる魔法の作戦本部 [第3回] 「子ども好き」でなくてもいい!

トピック教育課題

2023.01.17

目次

    教師生活が楽しくラクになる魔法の作戦本部
    [第3回] 「子ども好き」でなくてもいい!

    明治大学教授 
    諸富祥彦

    『教育実践ライブラリ』Vol.3 2022年9

     私は、これまで多くの先生方の悩みをお聞きしてきました。「教師を支える会」という会の代表として、月に1回ほど開催するサポートグループで悩みをお聞きしてきましたし、かつての教え子から悩みを聞かされることもあります。

     比較的若い先生方からの悩みで意外と多いものの一つに、「実は、私、子どものことが好きでないのに、教師になってしまったんです」というものがあります。

     「特に子ども好きでない私、子どもたちとかかわっていてもそれほどかわいいと思えない私が、教師を続けているのは、よくないことではないか。悪い影響を与えてしまっているのではないか」

     「私なんかが教師になってしまったばかりに、ほんとうに子ども好きな人が教師になれていないはずだ。ほんとうは、そんな子ども好きな人に教師になってもらったほうが、クラスの生徒たちにとっても、幸せなはずだ」

     「親から勧められて、教育学部に入ってしまったから、そして、なんだか同級生たちと同じように教員採用試験を受けたら、受かってしまったから、教師になっている。そんな私なんかが、教師を続けていて、いいのだろうか」

     こんなふうに罪悪感を抱きながら、教師をしているのです。

     そんな若い先生に、いつもお伝えしているのは「それでいいんですよ」「子どもを好きでない人が、教師をしていても、いいんですよ」という言葉です。

     「教師であるのならば、すべての子どもを好きでなくてはならない」ーーこれは、現実に即していない、非合理的な考えです。論理療法というカウンセリングの手法では、これを「イラショナル・ビリーフ」(非合理的な思い込み)と呼びます。

     人間の悩み・苦しみの大半は、この「イラショナル・ビリーフ」へのとらわれから生まれてくるのだから、これを粉砕せよ、そうしたとらわれから自分を解放して、「ラショナル・ビリーフ」と呼ばれる理にかなった考えを身に付けることで、悩みは解消する、と考えます。

     たしかに「教師であれば、どの子どものことも、好きになれるならば、なったほうがいい」

     これは事実でしょう。

     しかし「教師たるもの、すべての子どもを好きにならなければならない」とか、「すべての子どもを好きになれないのであれば、教師失格だ。教師を続けている資格はない」などと考えるならば、それは行き過ぎた考えです。完全主義的な偏った考えです。

     実際、もう何十年もやってきて生徒からも保護者からも信頼の厚い教師が「実は私、もともとは子ども好きでなかったんです」と言うのを何度も聞いたことがあります。

     大切なのは、プロフェッショナルな教師として、仕事をきちんとこなすこと。子どもを好きになることではないのです。

     

     

    Profile
    諸富祥彦 もろとみ・よしひこ
     明治大学文学部教授。教育学博士。日本トランスパーソナル学会会長、日本教育カウンセラー協会理事、日本カウンセリング学会認定カウンセラー会理事、日本生徒指導学会理事。気づきと学びの心理学研究会アウエアネスにおいて年に7回、カウンセリングのワークショップ(体験的研修会)を行っている。教師を支える会代表、現場教師の作戦参謀。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラー、ガイダンスカウンセラー、カウンセリング心理士スーパーバイザー、学校心理士スーパーバイザーなどの資格を持つ。単著に『教師が使えるカウンセリングテクニック80』(図書文化社)、『いい教師の条件』(SB新書)、『教師の悩み』(ワニブックスPLUS新書)、『教師の資質』(朝日新書)ほか多数。テレビ・ラジオ出演多数。ホームページ:https://morotomi.net/を参照。『速解チャート付き 教師とSCのためのカウンセリング・テクニック』全5巻(ぎょうせい)好評販売中。

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