直言 SDGs×学校経営 ~ニューノーマル時代のビジョンと実践~  [第3回]SDGsは学校図書館から

トピック教育課題

2022.12.20

直言 SDGs×学校経営 ~ニューノーマル時代のビジョンと実践~
[第3回]SDGsは学校図書館から

学校法人湘南学園学園長 
住田昌治

『教育実践ライブラリ』Vol.3 2022年9

学校図書館をSDGs情報センターに

 2020年秋、横浜でESDに関心を持って学校図書館を整えている学校図書館司書がつながり合い、学校図書館をSDGsの情報センターにするために、ノウハウを共有する動きが始まりました。コロナ禍で学校同士の交流はおろか、学校内での図書館の開設や図書の貸し出しも危ぶまれる時期でしたから、Facebookを活用してオンライングループを結成して交流することになりました。ESDに高い関心を持って取り組まれてきた横浜市立中学校の学校図書館司書の方に管理者として発信源となっていただきました。情報交換をしながらSDGsを拡げていくために、まずユネスコスクールやESD推進校に発信して仲間を増やしていきました。教科書にも明記されたSDGs、子どもも教職員もSDGsにたどり着くきっかけづくりに、学校図書館は大きな役割を果たします。

SDGsにたどり着く

 学校図書館は子どもたちが利用することが多いのですが、小学校では「図書の時間」や各教科や生活・総合の調べ学習などでも利用されるので、自ずと先生たちもよく足を運びます。その場所に「SDGsコーナー」やSDGsのポスター・ロゴ・アイコン、SDGs関連資料等を掲示しておくことで、たびたびSDGsを目にするようになります。子どもたちから質問を受けたり、相談に乗ったりしているうちに先生たちも自然にSDGsを学ぶことになります。「SDGsにたどり着く」という表現をしたのは、スタート時には「SDGsとは何か?」と真っ向から向き合うのではなく、子どもたちとやり取りをしている学びの中からSDGsとのつながりに気づいてもらうことが大切だと考えたからです。

 「SDGsコーナー」には、SDGsの各ゴールのアイコンと色紙でコーナーを作り、そこにゴールに関わる本を並べます。司書や先生がやらなくても、図書委員会や学年の子どもにやってもらってもいいです。本は新しく購入しなくても、すでに学校図書館にあるものも多いです。もしかすると、これまで学校図書館にある本のほとんどが並べられてしまうかもしれません。必要であれば、徐々にSDGsに関係する本を購入するようにしていくといいです。

 本を読んだ子どもには、その本の紹介ポスターを書いてもらって掲示するといいです。子どもたち同士が本の紹介をしたり、お勧めしたりすることは、これまでもされてきたことですから、SDGsの本についても関心を持って、さらに調べたり、考え話し合ったり、行動に移したりできるようになるといいです。

SDGsコーナー・SDGsの学びをつくる

 前任校では、本のほかにも、SDGsの掲示物や「ヤシノミ洗剤」、エコラベルのついた身近なアイテムなど、授業で使った資料なども展示してありました。そして、自分のSDGs行動の傾向が測れる「SDGsサーベイ」が紹介されていて、ipadでアクセスできるようになっていました。最近では、新聞や雑誌記事もSDGsを取り上げたものが多いですし、「FSC®認証」されたものを事務室で購入しているほか、「地産地消」「フェアトレード」「食品ロス」「マイクロプラスチック」の説明や取組も盛んに行われていますので、多くの資料が学校にはあると思います。

 最近、Facebookグループ「SDGsは学校図書館から」に投稿された記事には、「新聞×SDGs×本、新聞読んでる?というテーマで、時事問題やSDGsに関連する新聞記事を紹介するポスターを職員室前のESD掲示板に定期的に掲示する予定です。計画としては、①生徒たちに新聞に関心を持ってもらう。②先生方にも新聞(図書館も)使えるぞ、と思ってもらう。③道徳や委員会活動のSDGsの学びとコラボレーションして、図書館の本の利用を促進する。④授業支援につながるといいな〜」と、計画が紹介されていました。学校図書館司書が学校のESD推進の要としてSDGs実現に向けた学びにつないでいます。まさに「SDGsは学校図書館から」です。

 さらに、現在勤めている湘南学園中学校高等学校の図書館では、図書委員会の生徒たちが学校図書館司書とともに「まんがでSDGs‼︎」という冊子をつくって多くの学校に配布してきました。「はじめに」には、このようなことが書かれています。

 私たちの学校、湘南学園中学校高等学校はESDに取り組むユネスコスクールとして、国連が掲げるSDGsを理解するための様々な取り組みを行っています。その過程でたくさんの知識を得ることはもちろん大切ですが、最も重要なのは、様々な問題を他人事ではなく、自分事として捉えることです。しかし、まだ人生経験が少ない私達にはそれらを身近に感じられるような機会があまり多くありません。どうしたら様々な問題をもっと身近に感じることができるのか?そこで思いついたのが、まんがの活用です。―中略―今まで何気なく読んでいたまんがを、SDGs的な視点をもって見つめなおしてもらえたら幸いです。

(湘南学園中高図書委員会)

学校図書館とは…SDGsに出会える場。行動のきっかけにも

 横浜のみならず、全国各地の学校図書館が取組や考え方、事例を紹介し合い、SDGsを共通言語につなぎ拡げていくことができたら素敵なことだと思います。ここから生まれたつながりから、それぞれの独自性を保ちながら、決して競い合うことなく、ともに成長していくことが期待されます。

 

 

Profile
住田昌治 すみた・まさはる
 学校法人湘南学園学園長。島根県浜田市出身。2010〜2017年度横浜市立永田台小学校校長。2018〜2021年度横浜市立日枝小学校校長。2022年度より現職。ホールスクールアプローチでESD/SDGsを推進。「円たくん」開発者。ユネスコスクールやESD・SDGsの他、学校組織マネジメント・リーダーシップや働き方等の研修講師や講演を行い、カラフルで元気な学校づくり、自律自走する組織づくりで知られる。日本持続発展教育(ESD)推進フォーラム理事、日本国際理解教育学会会員、かながわユネスコスクールネットワーク会長、埼玉県所沢市ESD調査研究協議会指導者、横浜市ESD推進協議会アドバイザー、オンライン「みらい塾」講師。著書に『「カラフルな学校づくり」〜ESD実践と校長マインド~』(学文社、2019)、『「任せる」マネジメント』(学陽書房、2020)、『若手が育つ「指示ゼロ」学校づくり』(明治図書、2022)。共著『校長の覚悟』『ポスト・コロナの学校を描く』(ともに教育開発研究所、2020)、『ポスト・コロナ時代の新しい学校のマネジメント』(学事出版、2020)、『教育実践ライブラリ』連載、日本教育新聞連載他、多くの教育雑誌や新聞等で記事掲載。

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