Q&A どうなる! どうする? GIGAスクール[第4回] 協働的な学びを生む1人1台端末活用

トピック教育課題

2022.01.31

Q&A どうなる! どうする? GIGAスクール[第4回] 
協働的な学びを生む1人1台端末活用

[回答者]金沢学院大学講師 山口眞希

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.4 2021年11月

 

Q

1人1台端末を活用した場合、子ども同士のコミュニケーションが生まれないのではないかと不安です。協働的な学習にも1人1台端末を活用できますか?

 

A

1人1台端末を活用して子ども同士を「つなぐ」

 1人1台端末が整備されたからといって、個別に使うことだけを進めるものではありません。他者を尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越えていく資質・能力を育成するためにも、「対話」や「協働」は非常に大切なキーワードです。文部科学省中央教育審議会(2021)が取りまとめた答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」においても、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させていくことが必要と述べられています。一人一人が個別学習でしっかり考えを持ったうえで、対話や協働によって考えを広め、深めていくといった学習活動において、ICTの強みを生かしながら、子ども同士を「つなぐ」授業が期待されます。

1人1台端末を活用した協働学習の例

 1人1台端末を活用した協働学習を5つのパターンで整理してみました(図1)。


図1

①端末に考えや作品を提示して発表する・話し合う
 自分の端末に考えを書き出したものや、保存しておいた資料や画像などを大型モニターに提示したり、友達に画面を示したりして、自分の考えや作品をグループや学級全体に発表します(図2)。友達の意見が明確に可視化されるため、それをもとに感じたことを伝え合ったり、話し合ったりするなど対話が生まれます。


図2

②画面共有で多様な考えを知る
 学習支援システムを活用すると、全員の端末画面が個々の端末に配信されます。これまでは友達のノートを見せてもらわなければ知ることができなかった学びの過程を、自分の手元でじっくり見ることができるのです。一人では問題に向き合うことが難しい子どもたちが、他の人の問題解決のプロセスを知ることで、将来一人でできるようになるための見通しやヒントを得ることにもつながります。そして、多くの友達の考えを一度に知ることができ、得られた多様な意見をもとに自分の考えを見直したり、比較したりして自分の考えを再構築することができます。

③共同編集する
 共同編集機能を使うと、複数人で同時にファイル編集が可能になります。グループメンバーが同じ画面を見ながらそれぞれの考えを出し、試行錯誤する過程で、他の人と話し合いながら考えを深めることができます。また、共同編集できるスライド上に、ベン図やピラミッドチャートなどの思考ツールを作成し、話し合いながら分類することで、情報の整理・分析を円滑に進めることが可能になります。

④協働制作する
 ICTの持つ強みの一つに動画、写真、音声などデジタルデータを使って豊かに表現できることがあります。学習のまとめとしてデジタルリーフレットやデジタルマップ、動画、プレゼンなどをグループで分担して制作することもおすすめです。アナログと違ってやり直しが簡単なため、内容吟味に時間をかけることができるうえ、データとして保存できるので、メールで送信したりWebページで公開したりするなど、様々な発信方法を選択することができます。一人でも制作はできますが、あえて協働で行うことによって、対話をしながら粘り強く合意形成する力を育成するねらいがあります。学習のまとめとしてこのような協働制作活動を入れると、学習の定着や学び直しにもつながります。

⑤学校の壁を越えて学習する
 ICTを活用すると、時間的・空間的制約を超えて世界中の人とリアルタイムでつながることができます。Web会議システムやクラウド上にクラスを作成する学習支援ツールを活用し、遠隔地や海外の学校、学校外の人と意見交換をしたり、情報共有・情報発信を行ったりすることが可能になります。異なる考えや文化にリアルタイムに触れたり、専門家の話を聞いたりすることにより、多様なものの見方を身につけることができるでしょう。

協働を生み出すしかけを

 このように1人1台端末は対話や協働を支える効果的なツールになりますが、「みんなの考えを知りたい」「みんなと話し合いたい」と思わせる必要感のある課題設定や、話し合いの目標共有、協働して学ぶよさを価値づける教師の言葉かけといった授業のしかけが大切なことは言うまでもありません。また、対話・協働は、それ自体が目的ではなく、その過程を通して授業のねらいに迫り、自分の考えを深化させることが目的です。そのためにも、協働・個別・一斉学習を組み合わせ、協働が確実に個々の成長につながるような授業設計を考えたいものです。

 

 

Profile
金沢学院大学講師
山口 眞希 やまぐち・まき
 石川県公立小学校教員として20年勤務後、2020年より現職。専門は教育工学・情報教育。現在は、石川県教育委員会「GIGAスクール構想の実現に向けた教員のICT活用指導力強化事業」推進チーム委員、(公社)教科書研究センター「デジタル教科書に関する調査研究」委員、NHK教育番組委員、NHK「GIGAスクール時代のNHK for School活用研究プロジェクト」研究アドバイザー、日本教育情報化振興会「情報活用能力の授業力育成事業」委員などを務める。主な著書に『新時代の教職入門』(共著)がある。

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