AI時代「教師」考 [第3回]「AI教師」が誕生したとき、生き残れるか?

トピック教育課題

2021.12.22

すぐそこまで来ている「AI教師」の誕生

 「AI教師」というと、単に「効率よく知識を教えるだけ」と考えられることが多い。そして、多くの人々は「そんな人間味のない教師に良い教育ができるわけない」と考えているかもしれない。しかし、以上二つのプロジェクト結果を丁寧に検討してみると、「様々な工夫により、これからの教育に対してそれなりの貢献が可能なのではないか?」と思えてくる。そして、必ずしも「人間味がない」とは断定できないと思えてくる。

 AI研究者は「創造的な仕事をするAI」や「人間と同じような感性(センス)を持つAI」の研究開発に日夜努力を続けている。例えば近年、小説を書くAI(ロボット)や絵画を描くAI(ロボット)が話題になっている1。松原仁(東京大学)が率いる「きまぐれ人工知能プロジェクト作家ですのよ」では、2012年から「コンピュータで星新一を超える」を目標としてショートショート(短編小説)の自動生成プロジェクトを始動している。実際にSF小説家の星新一が執筆したショートショート全編をAIに分析させ、その分析結果を基にした新たな作品を創作させている。2016年の第3回日経「星新一賞」(日本経済新聞社主催)に4作品を応募し、その一部の作品が第1次審査を通過した(佐藤2016)。登場人物の設定や話の筋、文章の「部品」に相当するものは人間が用意し、AIがそれをもとに小説を自動的に生成したという。SF作家の長谷敏司は「きちんとした小説になっており驚いた。100点満点で60点くらいの出来で、今後が楽しみ」と述べたという2

[注]
1 「AIに芸術的な絵画を描かせる研究」としては、例えば以下のサイトで紹介されている。
https://ainow.ai/2020/04/01/193272/(最終閲覧日2021年3月11日)
2 「きまぐれ人工知能プロジェクト作家ですのよ」ホームページ
https://www.fun.ac.jp/~kimagure_ai/index.html(最終閲覧日2021年3月11日)

 さらに「相手の気持ちを読み取るAI(ロボット)」はもうすでに、かなりの完成度まで開発が進んでいる。最新のAIは、人間の顔の表情を「画像解析」技術により詳細に分析することが可能だし、過去に学習した顔の表情に関するビッグデータを用いて「相手の気持ち」を推察することができる3。逆に、そのようなデータを用いれば、ロボットの顔に「優しい表情」を作り出すことなど簡単にできてしまう。間もなく、「相手が優しい人間だと思っていたら、実はAIが搭載されたロボットだった」ということが日常的に起こるかもしれない(渡部2021)。

[注]
3 世界最大級の顔画像データベース「人の表情・感情を認識するAIソリューションAffectiva」のホームページ
https://www.affectiva.jp/(最終閲覧日2021年3月11日)

 そして、AIが浸透した社会の中で育ちスマホが身体の一部になっている近未来の子どもたちは「AI教師」に対して、私たち大人とはまったく異なった感じ方をするかもしれない。「AI先生は私の学力や苦手なところをよく理解してくれている」「私の気持ちにより添っていろいろと教えてくれる」、そして「私をいじめた相手をきちんと叱ってくれる」……そんな風に感じて、近未来の子どもたちは「AI教師を好意的・積極的に受け入れるかもしれない」と、私は考えている。

 

 

[引用・参考文献]
・佐藤理史『コンピュータが小説を書く日─AI作家に「賞」は取れるか』日本経済新聞出版、2016年
・植木克美「熟達教師の「経験知」をWebで若手教師に伝える」渡部信一編『AI時代の教師・授業・生きる力』ミネルヴァ書房、2020年
・渡部信一『AI×データ時代の「教育」戦略』大修館書店、2021年

 

Profile
渡部 信一 わたべ・しんいち
 1957年、仙台市生まれ。東北大学大学院教育学研究科博士課程前期修了。博士(教育学)。福岡教育大学助教授、東北大学大学院教育情報学研究部教授及び同研究部長・教育部長(5期・10年)などを経て、現在、東北大学大学院教育学研究科教授。主な著書に『鉄腕アトムと晋平君─ロボット研究の進化と自閉症児の発達─』『ロボット化する子どもたち─「学び」の認知科学─』『AIに負けない「教育」』などがある。

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