特別寄稿 地域と学校による協働活動のさらなる深化を 地域住民の学びにも好ましい影響を与えることの浸透を

トピック教育課題

2021.06.14

地域の状況を踏まえ学校と地域による協働の深化を––まとめに代えて

 学校と地域の連携・協働関係の構築を目指す取組が、本稿で経過を追い取組の概要について述べた約10数年間を見ても実に様々な形で展開され、少なくとも体制の整備が着実に進みつつあるかに見えることは前述した。

 一方で、学校存立の基盤である地域社会の状況は極めて厳しい。例えば、少子高齢化と人口減少は止まることなく進行しており、当然のことながら都道府県・市町村の多くは税収減となり、学校教育を含む行政サービスの切り下げに直結。行政サービスのレベルが低く、暮らしにくい地域は転入先の候補地とはなりにくく、逆により良い行政サービスを求める現住民の流出を招き、更なる税収減という、文字通り負の連鎖となる。

 これは、決して特定の地域の状況などではなく、今や全国各地でごく普通に見られる地域の姿であり、本稿の冒頭で述べた深刻な学校数減少の背景だとも考えられる。

 こうした地域の厳しすぎる状況下で、私たちはいかに健やかで心豊かに生きるか。そして、大人の責任として、未来ある子供たちに充実した学校教育を受けさせるため、私たちは地域で何をすべきか、何ができるのか。確信の持てる答えは出せそうもない。

 けれども、あえて本稿のテーマである学校と地域の協働関係をさらに深化させる必要性について改めて論じ、本稿の締め括りとしたい。

(1)教育課題解決には地域と学校の連携・協働が不可欠の再確認を
 近年、文科省が学校教育の中で特に力を入れて取り組むことを求めている課題は「不登校」や「いじめ」、「生きる力」と「課題解決型学習」、「社会に開かれた教育課程」など数多い。そして、文科省はこれら課題のすべてについて、様々な表現ながら解決のためには地域との連携・協働が欠かせないことを繰り返し説いている。

 一例をあげれば、文科省のホームページにある「学校と地域でつくる学びの未来」では、「社会に開かれた教育課程の実現に向けて」とのタイトルで次のように述べている。

 「“より良い学校教育を通じてより良い社会をつくる”という目標を学校と社会が共有し、連携・協働しながら、新しい時代に求められている資質・能力を子供たちに育む『社会に開かれた教育課程』の実現に向けて、地域と学校の連携・協働の推進が重要」と。

 この学校と地域の協働の重要性を、学校と地域住民等が改めて確認しておきたい。

(2)地域住民等を学校との協働活動に誘う努力が必要––学区拡大のカベ
 学校と地域の協働と言っても、学校側の担い手は教職員だが、地域側の活動者は制度化された数少ない有償の外部人材を除く大半の人々が地域住民等の無償ボランティアであり、この基本は今後も大きく変わることはないだろう。

 地域住民等が学校と地域の連携協働活動に参加するキッカケやその思いは様々だろう。保護者として、子供の卒業後もPTA活動の延長として、あるいは、子供を介した関係はないが、自らの有する専門的な経験や知識を活かす活動を依頼されたから、など。

 しかし、活動時間など様々な制約があっても、自発的に、あるいは学校等からの依頼を受けて活動に踏み出す決定的な理由や想いは何だろう。私は、やはり「地域の核として大事な学校」「我がマチの学校」という想いがスタート地点で、そうした学校のために自分にできることは貢献したいという想いが一番ではないかと考える。

 そして、こうした地域住民等の学校に対する想いが、冒頭に述べたように多くの地域で急速に進行する学区拡大により強まるとは思われない。それだけに、今や疑う余地なく重要だと考えられる学校と地域の連携・協働の深化に対する危機感がいっそう募る。

 今、取組を急ぐべきは、学校と地域との連携・協働関係を構築するため、地域住民等の役割が決定的に重要であることに対する地域住民の理解をさらに深めることだ。

 さらに地域住民等のモチベーションを高める手立ての一つとして、地域住民等による連携・協働を図る活動は決して単なる手伝いなどではなく、活動を通じて自らも様々なこと学び、その学びの成果を活用して次の活動へつなげる、地域住民にとって実のある生涯学習の一環であるとの理解を深めることなどが考えられるのではないか。

 もちろん、こうした取組が成果をあげるためには、活動のパートナーである教職員等のキメ細かな配慮が行き届いた、日頃の対応が大切になることは言うまでもないだろう。

 

 

Profile
たかはし・こう 青森中央学院大学経営法学部教授。青森県立高校長、県総合社会教育センター所長等を経て現職。中央教育審議会生涯学習分科会委員、CSマイスター等を歴任。単著として『学校支援地域本部をつくる』『小中一貫教育の新たな展開』『少子化に対応した学校教育充実の処方箋』(いずれも、ぎょうせい)等。

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