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スクールリーダーの資料室 「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)〔抜粋〕

NEWトピック教育課題

2021.06.07

4. 「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性

○ 家庭の経済状況や地域差、本人の特性等にかかわらず、全ての子供たちの知・徳・体を一体的に育むため、これまで日本型学校教育が果たしてきた、①学習機会と学力の保障、②社会の形成者としての全人的な発達・成長の保障、③安全・安心な居場所・セーフティネットとしての身体的、精神的な健康の保障、という3つの保障を学校教育の本質的な役割として重視し、これを継承していくことが必要である。

○ その上で、「令和の日本型学校教育」を、社会構造の変化や感染症・災害等をも乗り越えて発展するものとし、「全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学び」を実現するためには、今後、以下の方向性で改革を進める必要がある。

○ その際、学校現場に対して新しい業務を次から次へと付加するという姿勢であってはならない。学校現場が力を存分に発揮できるよう、学校や教師がすべき業務・役割・指導の範囲・内容・量を、精選・縮減・重点化するとともに、教職員定数、専門スタッフの拡充等の人的資源、ICT環境や学校施設の整備等の物的資源を十分に供給・支援することが、国に求められる役割である。

○ また、学校だけではなく地域住民等と連携・協働し、学校と地域が相互にパートナーとして、一体となって子供たちの成長を支えていくことが必要である。その際、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)と地域学校協働活動を一体的に実施することが重要である。

○ さらに、一斉授業か個別学習か、履修主義か修得主義か、デジタルかアナログか、遠隔・オンラインか対面・オフラインかといった、いわゆる「二項対立」の陥穽に陥らないことに留意すべきである。どちらかだけを選ぶのではなく、教育の質の向上のために、発達の段階や学習場面等により、どちらの良さも適切に組み合わせて生かしていくという考え方に立つべきである。

○ なお、本答申で提言する新たな施策について、文部科学省を中心に実施していくに当たっては、第3期教育振興基本計画で掲げられているように、各施策を効果的かつ効率的に実施し、目標の達成状況を客観的に点検し、その結果を対外的にも明らかしつつその後の施策へ反映していくことなどにより、教育政策のPDCAサイクルを着実に推進していくことが求められる。中央教育審議会においても、初等中等教育分科会を中心に、必要な検証を実施していく。

(1)学校教育の質と多様性、包摂性を高め、教育の機会均等を実現する

○ 新しい時代を生きる子供たちに必要となる資質・能力をより一層確実に育むため、子供たちの基礎学力を保障してその才能を十分に伸ばし、また社会性等を育むことができるよう、学校教育の質を高めることが重要である。その際、インクルーシブ教育システムの理念の構築等により、様々な背景により多様な教育的ニーズのある子供たちに対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であり、実態として学校教育の外に置かれることのないようにするべきである。特に、憲法や教育基本法に基づき、全ての児童生徒に対し、社会において自立的に生きる基礎や、国家や社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的とする義務教育段階においては、このことが強く求められる。

○ このため、学校に十分な人的配置を実現し、1人1台端末や先端技術を活用しつつ、生徒指導上の課題の増加、外国人児童生徒数の増加、通常の学級に在籍する発達障害のある児童生徒、子供の貧困の問題等により多様化する子供たちに対応して個別最適な学びを実現しながら、学校の多様性と包摂性を高めることが必要である。その際、現状の学校教育における個の確立と異質な他者との対話を促すことに弱さがあるとの指摘も踏まえ、一人一人の内的なニーズや自発性に応じた多様化を軸にした学校文化となり、子供たちの個性が生きるよう、個別化と協働化を適切に組み合わせた学習を実施していくべきである。

○ 性同一性障害や性的指向・性自認(性同一性)に悩みを抱える子供がいるとの指摘もある。こうした子供が、安心して学校で学べるようにするため、性同一性障害や性的指向・性自認(性同一性)について、研修を通じて教職員への正しい理解を促進し、その正しい理解を基に、学校における適切な教育相談の実施等を促すことが重要である。

○ また、ICTの活用や関係機関との連携を含め、現に学校教育に馴染めないでいる子供に対して実質的に学びの機会を保障していくとともに、離島、中山間地域等の地理的条件にかかわらず、教育の質と機会均等を確保することが重要である。

○ このような取組を含め、憲法第14条及び第26条教育基本法第4条の規定に基づく教育の機会均等を真の意味で実現していくことが必要である。なお、ここでいう機会均等とは、教育水準を下げる方向での均等を図るものではなく、教育水準を上げる方向で均等を実現すべきであることは言うまでもない。

○ 例えば、新型コロナウイルス感染症による学校の臨時休業期間において、一部では「全ての家庭にICT環境が整っていないので、学びの保障のためにICTは活用しない」という判断がなされたという事例や、域内の一部の学校がICTを活用した取組を実施しようとしても他の学校が対応できない場合には、域内全体としてICTの活用を控えてしまった事例もあるが、このように消極的な配慮ではなく、「ICT環境が整っている家庭を対象にまず実施し、そうでない家庭をどう支援するか考える」という積極的な配慮を行うといったように、教育水準の向上に向けた機会均等であるべきである。

○ また、国内外の学力調査では、家庭の社会経済的背景が児童生徒の学力に影響を与えている状況が確認されている。学力格差を是正するためには、社会経済的指標の低い層を幼少期から支援することが重要である。このため、国は、家庭の経済事情に左右されることなく、誰もが希望する質の高い教育を受けられるよう、幼児期から高等教育段階までの切れ目のない形での教育の無償化・負担軽減や、教育の質の向上のための施策を着実に実施することが求められる。

(2)連携・分担による学校マネジメントを実現する

○ 学校が様々な課題に対処し、学校における働き方改革を推進するためには、従来型のマネジメントの下、学校の有するリソースだけで対処するには限界がある。今般の新型コロナウイルス感染症への対応を契機とした業務の見直しも含め、校長のリーダーシップの下、組織として教育活動に取り組む体制を整備することが必要である。その際、校長を中心に学校組織のマネジメント力の強化を図るとともに、学校内、あるいは学校外との関係で、「連携と分担」による学校マネジメントを実現することが重要となる。

○ 学校内においては、教師とは異なる知見を持つ外部人材や、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の専門スタッフなど、多様な人材が指導に携わることができる学校を実現することが求められる。また、事務職員が校務運営に参画する機会を一層拡大し、主体的・積極的に財務・総務等に通じる専門職としての役割を果たすことが期待される。さらに、教師同士の関係においても、校長のリーダーシップの下、教師が担う業務の適正化や、校内の各種委員会の整理・統合等の学校の組織体制の在り方を見直すこと、主幹教諭、指導教諭をはじめ、経験豊富で専門性の高いミドルリーダーとなる教師がリーダーシップを発揮できるような組織運営を促進することを通じて、教師が子供としっかりと向き合い、教師本来の業務に専門性を発揮できるようにするとともに、学級担任、教科担任、養護教諭、栄養教諭や部活動顧問等の役割を適切に分担し、学校組織全体としての総合力を発揮していくことが求められる。

○ また、子供たちの教育は、学校・家庭・地域がそれぞれの役割と責任を果たすとともに、相互に連携・協働してこそ効果が上がるものであり、以下のような取組を通じて、地域全体で子供たちの成長を支えていく環境を整えていくことが必要である。

・コミュニティ・スクールの設置が努力義務であることを踏まえ、また、地域学校協働本部の整備により、保護者や地域住民等の学校運営への参加・参画を得ながら、学校運営を行う体制の構築

・家庭生活や社会環境の変化によって家庭の教育機能の低下も指摘される中、幼児教育段階はもとより、義務教育段階を含め、子育てに悩みや不安を抱える保護者に対して、身近な子育て経験者等による学習機会の提供や相談体制の整備など、地域の実情に応じた家庭教育支援に関する取組の推進

○ その他、学校が家庭や地域社会と連携することで、社会とつながる協働的な学びを実現するとともに、働き方改革の観点からも、保護者やPTA、地域住民、児童相談所等の福祉機関、NPO、地域スポーツクラブ、図書館・公民館等の社会教育施設など地域の関係機関と学校との連携・協働を進め、学校・家庭・地域の役割分担を文部科学省が前面に立って強力に推進することで、多様性のあるチームによる学校とし、「自立」した学校を実現することが必要である。

○ その実現に向けては、教育課程と関連付けることが求められており、新学習指導要領を踏まえ、教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図ること(カリキュラム・マネジメント)が重要である。

(3)これまでの実践とICTとの最適な組合せを実現する

○ 新たなICT環境や先端技術を効果的に活用することにより、以下のようなことに寄与することが可能となると考えられる。

・新学習指導要領の着実な実施(例えば、児童生徒自身による端末の自由な発想での活用を「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善に生かすこと、学びと社会をつなげることにより「社会に開かれた教育課程」を実現すること、プログラミング的思考、情報モラル等に関する資質・能力も含む情報活用能力を教科等横断的に育成すること)

・学びにおける時間・距離などの制約を取り払うこと(例えば、遠隔教育により、学びの幅が広がる、多様な考えに触れる機会が充実する、様々な状況の子供たちの学習機会が確保されるなど、場面に応じた学びの支援を行うこと)

・全ての子供たちの可能性を引き出す、個別に最適な学びや支援(例えば、子供の学習状況に応じた教材等の提供により、知識・技能の習得等に効果的な学びを行うこと、子供の学習や生活、学校健康診断結果を含む心身の健康状況等に関する様々な情報を把握・分析し、抱える問題を早期発見・解決すること、障害のある子供たちにとっての情報保障やコミュニケーションツールとなること)

・可視化が難しかった学びの知見の共有やこれまでにない知見の生成(例えば、教育データの収集・分析により、各教師の実践知や暗黙知の可視化・定式化や新たな知見を生成すること、経験的な仮説の検証や個々の子供の効果的な学習方法等を特定すること)

・学校における働き方改革の推進(例えば、教材研究・教材作成等の授業準備にかかる時間・労力を削減すること、書類作成や会議等を効率的・効果的に実施すること、遠隔技術を活用して教員研修や各種会議を実施すること)

・災害や感染症等の発生等による学校の臨時休業等の緊急時における教育活動の継続(例えば、同時双方向型のオンライン指導を通じた家庭学習や、オンラインを活用して学校・教師・子供同士のつながりを維持すること)

○ 令和時代における学校の「スタンダード」として、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善に資するよう、GIGAスクール構想により児童生徒1人1台端末環境と高速大容量の通信ネットワーク環境が実現されることを最大限生かし、端末を日常的に活用するとともに、教師が対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育とを使いこなす(ハイブリッド化)など、これまでの実践とICTとを最適に組み合わせることで、学校教育における様々な課題を解決し、教育の質の向上につなげていくことが必要である。

○ なお、ICTはこれからの学校教育に必要不可欠なものであり、基盤的なツールとして最大限活用していく必要があるが、その活用自体が目的でないことに留意が必要である。

○ AI技術が高度に発達するSociety5.0時代にこそ、教師による対面指導や子供同士による学び合い、地域社会での多様な体験活動の重要性がより一層高まっていくものであり、教師には、ICTも活用しながら、協働的な学びを実現し、多様な他者と共に問題の発見や解決に挑む資質・能力を育成することが求められる。

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