リーダーのためのマナーアップ講座
リーダーのためのマナーアップ講座[第2回] 第二印象UPの方法
トピック教育課題
2020.10.06
リーダーのためのマナーアップ講座[第2回]
第二印象UPの方法
人財育成トレーナー
美月 あきこ
(『新教育ライブラリ Premier』Vol.2 2020年8月)
「第一印象」は取り戻せる?
ビジネスの世界では、歴史を例え話などに用いることがよくあります。その中で、「三国志」は、みなさん、よくご存知ではないでしょうか?三国志を例え話に持ってくる上司や取引先なども、少なくないかと思います。その三国志の英雄として広く知られているのが、劉備玄徳(りゅうびげんとく)です。そして、この劉備に仕えた天才軍師として今に伝わるのが、諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)です。
しかし、劉備の下には、もう一人の天才軍師の存在があったことをご存知でしょうか?
その天才軍師の名は、龐統士元(ほうとうしげん)といいます。龐統は、諸葛亮の推挙で参軍したのですが、あまりに粗末な身なりと冴えない見た目であったことから、劉備に与えた第一印象が非常に悪く、諸葛亮と双璧をなすほどの才覚がありながら、結果的に地方の小役人に配されることになりました。
このように、第一印象が悪かったというだけで、不遇の人生を強いられてしまうことは、今も昔も、洋の東西を問わず、実際にあるのです。
人は、パッと見の第一印象で、相手を判断する性質を持っています。人間ならではの特性なのですから、これに文句を言っても仕方がありません。
この、第一印象が一瞬で決まる原理のことを、アメリカのコンサルタントの間では「ワンクラップの法則」と呼んでいます。
ワンクラップの法則に則れば、たしかに、第一印象が仕事や人生の行く末を決める大きな要素になることは間違いありません。ですが、第一印象で失敗したからといって、取り返しがつかないわけでもないのです。
第一印象の悪さから、実力を発揮することすらできずにいた龐統ですが、諸葛亮のとりなしで、劉備と度々接する機会が与えられました。すると、劉備も次第に龐統を認めるようになり、最終的には軍の要職である副軍師に登用されたといいます。
龐統が不遇から抜け出せた理由。それは、「第二印象」が功を奏したからだと考えられます。
得する「第二印象」
初対面では特段の印象を持たなかった、あるいは、あまり良い印象を抱かなかったものの、その後、もう一度会ってじっくり話してみると、とても素敵な人だと思った。優秀だと感じた。人は見た目じゃない、と反省した。そんなご経験、ありませんか?
これが、「第二印象」と呼ばれるものです。
第一印象は、見た目から、ほんの6秒の間に決定付けられると言われています。対して、第二印象は、時間をかけて、その人の性格や考え方、つまりは「中身」に触れていき、人となりを判断されるものです。
前述の龐統の話を考えてみると、たしかに、第一印象は重要です。しかし、第一印象が良かったとしても、会話をしてみたら内容が薄かったり、つまらなかったりして、第二印象が良くないと、相手が抱いているイメージが悪くなる可能性があります。会話や食事の中で、相手に「性格が悪い」と思われたら、第二印象は大失敗ということになってしまいます。
反対に、第一印象があまり良くなかったとしても、第二印象が良かったら、相手は見直してくれるでしょう。第一印象よりも第二印象の方がインパクトは弱くても、じわじわと効いてくる分、第二印象が良い方が得をします。
第一印象を良くするよう、準備をしておくことは大切です。しかし、第一印象がうまくいかなかったからといって、悲観する必要はありません。第二印象で取り戻すことができるのです。
ちなみに、第一印象が悪くて、第二印象まで悪かったら……。これでは、「印象の悪い人」というラベリングをされてしまい、以降、その印象を払拭するのは並大抵のことではなくなってしまいます。
第二印象UPの三種の神器
第二印象を決定付けるのは「人としての中身」なのですが、「自信が無い!」という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、第二印象をUPするための、3つの方法をお伝えします。それは、「姿勢」「表情」「声」です。
猫背など、姿勢が悪いと、暗い印象を持たれがちです。おヘソの下にある「丹田」を意識しながら、できるだけ背筋を伸ばすようにしてみてください。この時、目線の位置を高くすることがポイントです。世の中で活躍されている方々を思い浮かべてみましょう。みなさん、遠く向こうまで見渡すような目の動きをしています。こうした姿勢を取ることで、エネルギーレベルの高い人物=重要人物のオーラを醸し出すことができます。
次に、表情です。口角を上げて、頬の位置も上げるようにしましょう。成功者のインタビューなどを見ると、必ず口角が上がっていて、頬も上がり、目がキラキラとしています。「成功者は余裕があるから、そういう表情ができる」という見方もあります。ですが、慣れるまでは少々無理やりになるかもしれませんが、表情はつくることもできますよね。「余裕があるから微笑む」のではなく、「微笑むことが余裕を生む」のです。
姿勢を正し、表情に気を付けると、自然と声が大きくなります。この3つが重なると、相手に「自信」を印象付けることができます。
声は、一本調子ではなく、メリハリをつけることが大切です。重要なことを話す際には、ポーズを入れて低めの声で。また、信頼を与えたい時にも、声は低くします。夜の時間帯のニュースキャスターの声はどうでしょうか? 低めで、落ち着いた声ですよね。大きな声といっても、キャンキャンとした高い声では、信頼感が失われかねません。声量がありながらも、時に高めに、時に低く、メリハリをつけて使い分けましょう。
Profile
人財育成トレーナー
美月 あきこ(みづき・あきこ)
大学卒業後、日本航空入社。国際線客室乗務員として17年間国際線に乗務。人財育成トレーナーとして接客研修・コンサルティング業務に携わる。
著書にベストセラーとなった『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』『1分でうちとけ30分以上会話が続く話し方』『15秒で口説く エレベーターピッチの達人』など、韓国、中国、台湾、シンガポールなどで翻訳語版を多数出版。
All About ビジネスマナーガイド。日本経済新聞『マナーのツボ』連載。