解決!ライブラちゃんのこれって常識?学校のあれこれ
解決!ライブラちゃんのこれって常識? 学校のあれこれ 会社ではないのにどうして学校「経営」と言うの?[後編]
トピック教育課題
2020.02.07
解決!ライブラちゃんの
これって常識? 学校のあれこれ
会社ではないのにどうして学校「経営」と言うの?[後編]
(『学校教育・実践ライブラリ』Vol.7 2019年11月)
ライブラちゃんは、校長先生が「ガッコウケイエイ」という言葉を何度も口にするのを耳にし、「なぜ、会社でもないのに『ケイエイ』というんだろう」と思い、学校経営に詳しい天笠茂・千葉大学特任教授を訪ねました。そこでは、「ガッコウケイエイ」にまつわる、深い話を聞くことになりました。「学校経営」という言葉が大正時代からあったという話、お上主導から、現場が自立する志をもって「学校経営」という言葉を生み出した話。難しいけれど、大変勉強になったライブラちゃん。後編では、現代に話を移し、令和の時代に求められる校長像などを聞きました。
校長の在任期間
前回は、「学校経営」という言葉がいつごろ登場したのかについて、その経緯とともに見てきました。今回は、現代の学校経営者群像を見ていきながら、これからの学校経営について考えてみたいと思います。
一つ着目してみたいのは、校長がどれだけの期間、その学校に在職したかということです。現在は、おおむね2、3年で他の学校に転任するというのが人事の原則として定着していますが、その中にあって、長く1校で校長を務めるケースが見られます。そして、そうしたケースでは、しばしば一つのことを為す、あるいは何か大きな成果を 上げるといった校長がいます。そこには、その校長に確かなマネジメントがあるという評価があり、そのために結果、長く在任するということがあります。もちろん、2、3年で異動する校長に力量がないということではありません。ただ、一つの足跡を残す校長には、長い在任期間をもつ人たちがいるということです。
時代とキャッチボールをした校長たち
ここでは、記憶に留めたい二人の校長を紹介します。一人は、京都市立御所南小学校の村上美智子校長です。1996年から12年間、同校で校長を務められました。この間、文部省(当時)の研究開発学校の指定を受けて、「総合的な学習」の研究を進める一方、2002年には文部科学省より「新しいタイプの学校運営に関する実践研究」の指定も受けてコミュニティ・スクールの研究に取り組みました。さらには、小中一貫教育を進める中で独自の教科「読解科」を創設するなど、現代的教育課題に果敢に取り組んだ校長です。その取組は、「総合的な学習の時間」の創設や、コミュニティ・スクールの運営手法、読解力の育成といった現在の学習指導要領や学校経営に大きな影響を与えました。また、村上氏は、教頭をはじめ教職員を積極的に市内外の視察や研究会に派遣するなど、ミドルリーダーの育成にも力を注ぎました。まさに、現在に至る時代の扉を開けた校長と言えるでしょう。
もう一人は、広島県呉市立五番町小学校の長岡利生校長です。1999年から8年間、同校の校長として、1中2小による小中一貫教育の研究を牽引した方です。現在、小中一貫教育では一般的な形となった4・3・2制を創案したのも、この校長の元であったわけです。子どもの発達過程を見据えながら、丁寧な実証研究を行い、小中一貫教育はカリキュラムの一貫であることを提案した方でもあります。そして、その原動力となった小中一貫教育コーディネーターといった新たな人材を生み出しました。現在の小中一貫教育はほぼ、ここの研究開発が原型となっているといっても過言ではありません。
村上氏はトップリーダー型、長岡氏は調整型といった違いはありますが、共通しているのは、時代の要請を受け、自らのマネジメント力や構想力によってインパクトのある提案を行った点で、時代とキャッチボールをした校長と言えるでしょう。
もちろん両氏とも、もともと長い在任期間を約束されていたわけではありません。自身のポリシーを実現していきながら、1年1年の積み重ねによって、結果的に長い在任期間となったわけですが、このように一つのことを為す、一時代を築くということのためには、長い期間を必要とするのかもしれませんね。
―素晴らしい人たちですね。
令和時代が求める校長像とは
そうですね。端的に言えば、世の中とのつながりに目配せできる校長でしょうか。さらには、教師の目も世の中に向けていけることが求められると思います。
平成の時代にはコミュニティ・スクールや地域学校協働本部が求められました。それは裏を返せば、学校が社会とのつながりが弱くなってきたということです。それを取り戻すというのが令和の時代の課題だと思います。つまり、これからの校長には、コミュニティ・スクールを動かせるマネジメント力が求められるということです。「社会に開かれた教育課程」が言われる中、それをどれだけイメージ豊かにもってグランドデザインを描き、学校のリーダーたり得ることがきるか、それがポイントとなると思います。
社会が求めるリーダーとして、これからの校長には頑張ってもらいたいですね。
Profile
天笠 茂 先生
昭和25年生。筑波大学大学院博士課程単位取得退学。千葉大学教授を経て平成28年より現職。専門は学校経営学、教育経営学など。中央教育審議会をはじめ各種委員等を務める。主著に『学校経営の戦略と手法』など。