絶対満足できる!新しい英語授業

菅正隆

新教育課程実践講座Ⅰ 絶対満足できる!新しい英語授業[第2回]教科を意識した外国語 “We Can’t!” にしないために 小学校5年生の事例から

トピック教育課題

2019.09.22

授業を充実させるためのポイント

1.「外国語活動」とは異なる「外国語」の授業

 “We can!”のテキストを見ると分かるように、中学年の“Let’s Try!”とは大きく異なり、英語の語彙や表現が至るところに表記されている。“Let’s Try!”レベルの子供たちは、それらの表記を記号程度の認識で見ていることも多かったと思われる。しかし、5年生からは、この文字や語彙、表現にも抵抗感を感じさせないように触れておかなければならない。つまり、無視して進むわけにはいかないのである。そこで、最も大切なことは、音と文字、音と語彙、音と表現を一体に刷り込んでいくことが求められる。そのためには、チャンツが最も有効であるが、まずは、何度もその音を聞かせることが大切である。そして、子供たちには、常に指導者側の音を真似て繰り返すようにすることである。時に、飽きているような場合には、極端な発音やイントネーションで、子供たちの興味・関心を引くことも考えられる。例えば、“I go home.”を川平慈英のように、極端に“I go~~~~~~~home.”などと真似てもよい。物真似で英語発音をするのも面白いものである。かなりのテクニックが必要ではあるが。

 

2.外国語の評価を考える

 移行期間中の2年間は、指導要録の「外国語活動」(5、6年)の項に、従来どおり、文章表記で評価を書いていくが、移行期間ということもあり、評定の要素を入れていくことも考えられる。

 例えば、一例としてUnit4のp.26-27を参考に考えてみたい。通常、総合的に評価を下すことになるが、分かりやすいようにここを参考に説明したい。もし仮に、目標を「自分の一日の生活について言うことができる」とした場合、“I get up at six.”から“Igo to bed at ten.”までの表現を理解し(input)、自分の場合に当てはめて、時間についてもある程度相手に伝わるように話す(output)ことが求められ、それができれば「十分満足できる」3がつき、ところどころ間違っても、なんとか相手に伝わるようであれば、「おおむね満足できる」2となり、知識にも乏しく、相手に伝えるまでには身に付いていない場合には、「努力を要する」1となる。しかし、ここでよく考えていただきたい。目標が「自分の一日の生活について言うことができる」とかなり高く設定されている。もしこれが、「一日の生活の表現を知っている」であれば、知識・技能を問うており、inputの部分だけを評価することになる。また、「一日の生活の表現を使おうとしている」となれば、主体的に学びに向かう態度を目標としているため、評価もそれに合わせる形となる。

 つまり、目標設定を誤ると、子供たちにとっては高いハードルとなり、越えられない目標となることが考えられる。同時に、指導者側にも、越えられない目標を立てた責任、その目標まで子供たちを導けずにいた指導力の責任が降りかかってくる。これが、中学校及び高等学校の外国語科で求められているCAN-DOリストである。このCAN-DOリストは、小学校の外国語科でも求められるようになると思われる。

 つまり、領域であろうと教科であろうと、最終到達目標が学習指導要領に示されているものである以上、学校が、そして担当者が子供たちを適切に見取り、適切な指導と適切な評価ロードマップを作っていくことが求められる。

 

(参考)菅正隆編著『小学校外国語“We Can! 1”の授業&評価プラン』明治図書出版、2018年_

 

Profile
大阪樟蔭女子大学教授
菅 正隆
かん・まさたか 岩手県北上市生まれ。大阪府立高校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官並びに国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て現職。調査官時代には小学校外国語活動の導入、学習指導要領作成等を行う。

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岩手県北上市生まれ。大阪府立高校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官並びに国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て現職。調査官時代には小学校外国語活動の導入、学習指導要領作成等を行う。

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