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田村 学の新課程往来

田村学

田村 学の新課程往来[第3回]「見方・考え方」について考える

NEW授業づくりと評価

2019.09.16

田村学の新課程往来
[第3回]「見方・考え方」について考える

國學院大學教授
田村 学

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.3 2019年7月

「見方・考え方」の生成過程

 今回は、学習指導要領改訂のキーワード「見方・考え方」について考えを記します。

 平成26年の大臣諮問の段階で「主体的・協働的に学ぶ学習(いわゆる『アクティブ・ラーニング』)」とされていた記述は、「深い学びの過程」「対話的な学びの過程」「主体的な学びの過程」となり、最終的には「主体的・対話的で深い学び」と表現されるようになります。ここには、前向きに取り組み、自ら考え判断する姿を期待して「主体的な学び」を記していると考えることができます。また、様々な考えをもつ、多くの人との対話の価値として「対話的な学び」が記されていると考えることができます。

 この二つの学びは極めて重要であり、授業において実現すべき学びと考えるべきです。しかしながら、いくら前向きであったとしても、対話が活発に行われたとしても、その学びが教科等の目標や内容に向かっていなければ、その学びには疑問符が付くことになります。その学びが這い回り高まりを見せるものでなければ、期待する学びとは言えないはずです。ここに「深い学び」が位置付けられた価値があるのです。この「深い学び」を示すことによって、教科等の固有性や本質を視野に入れた質の高い学びを目指すことが明確になったと考えることができます。

 さらには、この「深い学び」を明確にするために「見方・考え方」が示されることになります。中央教育審議会の答申には、次のように表現されています。

 「アクティブ・ラーニング」の視点については、深まりを欠くと表面的な活動に陥ってしまうといった失敗事例も報告されており、「深い学び」の視点は極めて重要である。学びの「深まり」の鍵となるものとして、全ての教科等で整理されているのが、第5章3.において述べた各教科等の特質に応じた「見方・考え方」である。

 この「見方・考え方」については、答申の第5章で次のように記されています。

 その過程においては、“どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくのか”という、物事を捉える視点や考え方も鍛えられていく。こうした視点や考え方には、教科等それぞれの学習の特質が現れるところであり、(略)こうした教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方が「見方・考え方」であり、各教科等の学習の中で働くだけではなく、大人になって生活していくに当たっても重要な働きをするものとなる。

 また、次のような記述もあります。

「見方・考え方」には教科等ごとの特質があり、各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものとして、教科等の教育と社会とをつなぐものである。

 その上で、『初等教育資料』(平成29年11月号)において、文部科学省教育課程課は次のように述べています。

 今回の学習指導要領改訂では、育成を目指す資質・能力は三つの柱に沿って各教科等で整理されており、「見方・考え方」それ自体は資質・能力には含まれるものではない。すなわち、資質・能力を育成していく上で活用すべき視点・考え方であり、例えば、今後検討を深めていく学習評価の仕組みにおいても、評価の対象となるのはあくまでも資質・能力であり、「見方・考え方」それ自体を評価の対象項目とすることは予定されていない。

教科等の本質としての「見方・考え方」

 そもそも「見方・考え方」は、教科等の本質、その中核です。したがって、「見方・考え方を働かせる」ことは、教科等固有の学びが実現することであり、「見方・考え方」は教科等固有の学び、または、その有り様と考えるべきでしょう。各教科等には、それぞれの学びの様相があるはずです。ズバリ一言で、その教科等の存在意義や存在価値を示す固有の学びや有り様を「見方・考え方」と考えていくべきです。各教科等の固有の学びを端的に示してみるならば、例えば、国語科であれば、言葉や文章に目を向けて、言葉の意味を問い直し意味付けること。社会科であれば、社会事象に目を向けて、社会の機能を追究すること。算数科や数学科であれば、数理に目を向けて、論理的に考えること。理科であれば、自然事象に目を向けて、科学的に探究すること、などとすることができます。

 総合的な学習の時間で、稲作をしながら食糧生産について探究していく子供の学びを例に考えてみましょう。稲の生育過程を記録し、気温や日照条件などと関係付けて科学的に探究することは理科の見方・考え方を活用しています。栽培品種の地域的な広がりを地形や物流などと関連付けて社会の機能を追究することは社会科。米のもつ独自の栄養価を自分の食生活に生かそうとすることは家庭科。同じ事物や現象でも、各教科等の見方・考え方を働かせることで、多様に事象を捉え、幅広く認識し、豊かに関わることにつながります。私たちは、日々の暮らしや生活の中において、各教科等の見方・考え方を働かせていくのです。

「見方・考え方」と資質・能力の育成

 こうした教科等固有の学びの有り様こそが、教科等の本質的な意義の中核をなすものと考えることができます。だからこそ、教科目標の冒頭に示す必要があり、教科等に固有の学びが実現されるために、「見方・考え方を働かせる」ことが求められているのです。そして、そのことこそが、各教科等で示している資質・能力の育成につながるのです。

 この「見方・考え方」の「見方」とは、どのように対象を捉えるかといった教科等固有の対象を捉える視点とすることができます。一方、「見方・考え方」の「考え方」とは、どのように対象と関わり、どのように対象に迫るかといった教科等固有のアプローチの仕方やプロセスとすることができます。言い方を変えれば、「見方・考え方」とは、各教科等の特質に基づいて対象を捉え、認識したり、働きかけたりする、各教科等に固有の学びの有り様と考えることができます。

 「見方・考え方」は、教科等の本質的な意義の中核です。微細に整理し、授業の分析や設計を試みるのではなく、骨太に捉え、学びを確かにイメージし構想することこそが重要なのです。

 

Profile
國學院大學教授
田村 学
たむら・まなぶ 1962年新潟県生まれ。新潟大学卒業。上越市立大手町小学校、上越教育大学附属小学校で生活科・総合的な学習の時間を実践、カリキュラム研究に取り組む。2005年4月より文部科学省へ転じ生活科・総合的な学習の時間担当の教科調査官、15年より視学官、17年より現職。主著書に『思考ツールの授業』(小学館)、『授業を磨く』(東洋館)、『平成29年改訂小学校教育課程実践講座総合的な学習の時間』(ぎょうせい)など。

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國學院大學教授

1962年新潟県生まれ。新潟大学卒業。上越市立大手町小学校、上越教育大学附属小学校で生活科・総合的な学習の時間を実践、カリキュラム研究に取り組む。2005年4月より文部科学省へ転じ生活科・総合的な学習の時間担当の教科調査官、15年より視学官、17年より現職。主著書に『思考ツールの授業』(小学館)、『授業を磨く』(東洋館)、『平成29年改訂小学校教育課程実践講座総合的な学習の時間』(ぎょうせい)など。

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