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令和の時代のカリキュラムデザイン[第2回]ICT機器を活用した個別最適な学びと協働的な学びを補完的に生かす

授業づくりと評価

2021.10.29

令和の時代のカリキュラムデザイン 
[第2回]ICT機器を活用した個別最適な学びと協働的な学びを補完的に生かす

島根県海士町立海士小学校教頭
福島大介

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.2 2021年6月

急速に本格化していくICTの活用

 令和2年度より新学習指導要領がスタートした。新学習指導要領は「コンテンツベース」から「コンピテンシーベース」に転換した歴史的な改訂と言われている。それを追いかけるかのように「GIGAスクール構想」が発表され、各自治体ではICT機器や環境面での整備が急ピッチで行われた。

 本町には、全校児童数60人弱の小学校が2校あり、本校は複式学級を有する小規模校である。そんな小さな島には、平成28年にiPadが20台弱導入され、それに伴い校内ネットワークの無線化整備も進みだした。少子高齢化、離島というへき地であるが故の課題もあり、教育に携わる者の中では、iPadを活用した学びの可能性への期待を高くもつ者もいた。当時、隠岐國学習センター(公営塾)スタッフの方に行っていただいた教職員研修を受け、私自身もその活用に魅力を感じた。そんな際に「AI型教材 Qubena」の存在を聞いた海士町教育委員会スタッフからお話をいただき、平成30年度末に千代田区立麴町中学校、COMPASS社への視察訪問を経て、町内小中学校の特定の学年において試験的に導入し、町内の全小中学校に導入していくかどうかを検証していくことになった。

 AI型教材 Qubenaとはご存知のとおり、問題を解くとアプリ内で自動採点される。正答だと次の問題が出題され、誤答の場合は、AIがその間違いからどの問題にさかのぼればよいかを判断し、その子の学びに合った問題を即座に出題してくれる優れもので、個別最適化された学びが期待できる。

個別最適化された学びを支えるICTの活用の模索(令和元年度)

 翌年の令和元年度、各校2学年を対象として試験導入が進んだ。iPadも10数台追加され、4年生以上の学年で1人1台の使用が可能となり成果検証のために定期的な授業見学及び検証の話し合いを、各校担当学年担任、教育コーディネーター、そして島前ふるさと魅力化財団よりスタッフ(以下、「魅力化スタッフ」)を派遣していただいてチームを組んで取り組んでいくこととなった。統括や全面的なバックアップは海士町教育委員会が行った。

 当時3・4年、5・6年が複式学級であった本校では、それぞれ4年生、6年生の2学年にQubenaを導入し、児童の演習量と児童の反応、教師の手ごたえを模索していくことになった。

 定期的な校内のチームミーティングでは、教師のやってみた手ごたえと、魅力化スタッフがQubenaマネージャーから児童個々のQubena実施時間と回答数を割り出した客観的なデータを見ながら取組を振り返った。当面の課題は2学年でQubenaを実施する時間を何とか45分の中に作ることであった。4年生では、学習の終末の場面にQubenaの時間を位置づけた学習の流れを提示した。複式学級においては、教師が直接指導を行うことができない時間があるためガイド学習を取り入れている。「ガイド」役の児童が学習を進めていくうえで、Qubenaが学習の中に位置づけられたことを意識しながら学習を進めることができるようになっていった。5・6年学級では、教師の直接指導をそれぞれの学年で行うために「ずらし」の授業構成を行っている。教師の直接指導を導入時に受ける学年は終末に実施し、受けない学年はその時間に前時の復習を兼ねてQubenaを活用していくスタイルを確立させた。また、Qubenaに設定されている基礎・基本問題は全員達成しようと学年の目標を設定し、クリアできたら緑色で表示されるという仕組みを利用し、オールグリーン作戦と名付けて、その達成に向けて皆で取り組んだ。

 ICT機器を活用すると、初めは物珍しさもあって意欲的にQubenaを使って演習問題に取り組む様子が見られたが、全児童が意欲的に取り組むことができるかというとそうでもない。物珍しい段階を過ぎると、集中が続かず、手がとまってしまう児童が見られだすのは想像できるであろう。オールグリーン作戦で、みんなでがんばって取り組んでいこうという機運を高めることは、学力的な面や集中力持続などの個人差へも有効であった。加えて取り組んだ学習履歴を週のまとめとして掲示し、児童に示していったことも意欲向上に繋がっていった。

 4年生のある児童は、個別の支援が必要な児童であるが、Qubenaに取り組んだことで、演習量をたくさん積み、正答率も上がったこと、また教科書で学習したことと結びついたことを実感したことから、算数の学習が楽しいと言うようになった。

 このように学習履歴を積み上げていくと、普段の学習内で行う問題演習の量は10問程度であるが、Qubenaは同じ時間で普段の3倍の演習量をこなしていることがわかった。町で実施した学力テスト(令和元年度1学期、3学期実施、上表参照)でも両学年ともに主に技能、知識・理解面において点数の向上が見られた。

 結果的にではあるが、同じ問題量を教員がすべて行おうとすると、どれほど大変なことか予想ができるであろう。個別最適化は教師の準備にかかった時間を他の児童への支援や学習準備に費やすことにも繋がった。

協働的な学びを支えるICTの活用(令和2年度)

 令和2年度は、GIGAスクール構想を受け、1人1台のICT端末配付に向けて準備を進めていく必要がでてきた。そこで、町の推進チームでの目標を「GIGAスクール構想に向けたICT機器のスムーズな導入」として、導入する端末、導入するアプリの検討が始まった。町内の各校で随時アプリの活用を試みながらも、本校ではドリル型アプリ、隣接校では協働学習支援アプリを活用した授業公開を行い、活用の様子やアプリの良さを見極めていくこととなった。

 コロナウイルス感染防止のため、外部との関わりが制限された時期には、本校3・4年生の総合的な学習の時間では、オンラインでの学習に挑戦し、説明を受けたり、質問をしたりと学習を補填することにICT機器が活躍した。学習のまとめには一人一人が興味を持って調べたことのまとめを大型テレビに映し出し、iPadを操作してグループ内で発表した。

 2学期半ばになると、3年生でもiPadを使いたいとのニーズがあり、不足分を隠岐國学習センターからお借りして期間限定での1人1台環境が整った。国語科の学習を中心に「MetaMoji ClassRoom」を活用し、物語の組み立てを考える際や例をあげて書く活動において紙面のワークシートを配付するのと同じように、配付されたPDFファイルのワークシートにスタイラスペンで書き込み、テレビ画面を通して皆で共有し考えを伝え合ったり、話し合ったりする活動を行った。

 1月には、「ロイロノート」の教職員研修会が町教育委員会主催で実施され、初歩的な操作等について研修を深めた。研修の最後には各教科で3学期に活用できそうなことを参加者に考えてもらうプログラムもあったため、この研修を皮切りに本校でもロイロノートの活用が進んでいった。5・6年生では、朝の会や帰りの会でニュースやがんばったことなどの共有、ノートに書いた算数科の学習のまとめや国語科での音読の動画を報告、総合や学活では話し合いにも活用した。算数科の公開授業では、ロイロノートを使ってミニテストの計算問題を配付し、児童が実施したミニテストを教員に提出するという活動をiPadで行った。その後5年生は、正多角形をかくというプログラム作りをPyonkeeというアプリで行った。6年生は、走る順番の組み合わせを、樹形図を用いて考え合い、まとめた後にQubenaで「並べ方」の問題に取り組んだ。ICT機器の活用をイメージするには非常に提案性のある公開授業であった。3・4年生は、引き続き総合的な学習の時間でロイロノートを活用し、発表に向けて思考を整理したり、発表資料を入力したりする活動に取り組んだ。

これからがスタート(令和3年度〜)

 このように本校や本町で取り組んできたことを振り返ってみると、ICT機器の活用という面に関しては、個別最適な学びと協働的な学びは少し切り分けて考えることが必要だとわかった。協働的な学習には、例えばQubenaのようなアプリは不向きな要素が大きいと感じる。むしろこれまで培ってきたペアやグループ学習、またはそれに特化したロイロノートやMetaMoji ClassRoomのような他のアプリを活用した方が効果的である。そこはうまく切り分けて、Qubenaは短時間で普段の何倍もの演習量が確保できる便利な教材と捉え、「短時間学習や日々の学習時間の中にわずか5分でも演習の時間を取り入れる」または「家庭学習において宿題で出すドリルの代わりに活用する」といった使い方ができるように環境を整えていきたい。手探りではあるが、ICT機器を活用し、個別最適な学びや協働的な学びの実践を深めていこうとすると、その準備や授業後の評価等に係る時間が削減され、教師側の時間を生み出すことができたことも思わぬ副産物であった。

 令和3年度を迎え、本校や町内小中学校では全校児童・生徒へのiPadの配付が終わろうとしている。町の推進チームや海士町教育委員会の協力のおかげで個別最適な学びや協働的な学びを支えるアプリも準備していただいている。今後は、ICTを活用した授業実践を深めていくとともに家庭学習での活用を模索し、家庭と連携した効果的な活用を探っていく1年にしていきたい。

 

 

個別最適な学びと協働的な学びを補完的に生かす

島根県立大学教授 齊藤一弥

 海士町は町全体で時代の流れをしっかりと受け止め、より最適な教育環境の構築に進んで取り組んでいる。ICTの活用に関しては、町教育委員会がリードしながら5年前からタブレットの端末を導入するとともに、AI教材の導入にも積極的に取り組むなど、個別最適な学びの実現に向けた意識が高く、これよって個々の課題把握及びその改善に注力した指導を実現し、成績向上など一定の成果をあげてきている。

 また、昨年度からはICT機器を生かすために「ロイロノート」等を活用した指導方法を取り入れ、子供の協働的な学びの充実にも関心をもってきている。

 このように実践を通して、個別最適な学びと協働的な学びにおけるICTを用いることのよさの確認と課題の発見を行い、その改善方法を見出し実践する、いわゆるPDCAサイクルを短期間で機能させて、チャレンジを繰り返すことは大切なことである。双方の学びの目的を明確にすることによって、互いを補完的に生かしていくことを模索していることに大きな価値がある。

 今後、実践を試行錯誤的に積み重ねていく中で、より確かな指導方法が見えてくるはずである。今後の実践研究に期待したい。

 

 

Profile
齊藤 一弥 さいとう・かずや
 横浜国立大学大学院修了。横浜市教育委員会首席指導主事、指導部指導主事室長、横浜市立小学校長を経て、平成29年度より高知県教育委員会事務局学力向上総括専門官、令和3年4月から高知県教育委員会事務局教育課程推進専門官。文部科学省中央教育審議会教育課程部会算数・数学ワーキンググループ委員。近著に『数学的な授業を創る』(東洋館出版社)。

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