絶対満足できる!新しい英語授業

菅正隆

新教育課程実践講座Ⅰ 絶対満足できる!新しい英語授業[第2回]教科を意識した外国語 “We Can’t!” にしないために 小学校5年生の事例から

トピック教育課題

2019.09.22

新教育課程 実践講座Ⅰ
絶対満足できる!新しい英語授業

[第2回]教科を意識した外国語 “We Can’t!”にしないために
小学校5年生の事例から

大阪樟蔭女子大学教授
菅 正隆

『リーダーズ・ライブラリ』Vol.2 2018年6月

 新学習指導要領では、2020年度から第5学年及び第6学年において、教科としての外国語が導入されることとなった。これを受けて、全国各地では、4月から文部科学省配布のテキスト“We can! 1”と“Hi,friends! 1”(5年生)、“We can! 2”と“Hi, friends! 2”(6年生)を使って授業が行われている。しかし、様々なところで問題が生じている。笑える話だが、“Hi, friends!”が配布されていないと困惑する先生(テキストは合本になっており、“We can! 1”の後に“Hi, friends! 1”が続く)、5年生で初めて英語を学ぶ子供たちに対して、スタートから“We can! 1”を使い、ちんぷんかんぷんになっている子供たち、内容が難しすぎて指導ができないと嘆く先生方など、まるで、吉本新喜劇の一場面を見ているようである。これは、事前にテキスト内容を分析してカリキュラムを作成してこなかった学校や、テキストの内容を現場に周知徹底してこなかった教育委員会にも問題はある。また、様々な策を講じずに、現場に投げた文部科学省にも問題はある。しかし、そうも言ってはいられない。誰が悪いと騒ぎたてるだけでは問題は解決しない。目の前の子供たちに、いかに教科としての外国語を体験させ、様々な能力を身に付けさせて中学校に送り出していくかである。この2年間の移行期間に、教育現場の混乱から、英語嫌いを数多く輩出するなど、決して許されないことである。

 また、全国各地には、国からの加配としての外国語専科教員が置かれている。この使い方もまちまちである。特に目につくのは、英語の免許状を持った大学新卒者を専科教員(期限付き講師)としている場合がある。これは、いかがなものかと思う。教育現場の右も左も、子供の理解もできていない教員一年目には荷が重すぎる。しかも、ほかの先生方は、「ラッキー」とばかり、その先生におんぶに抱っこである。ひどい場合には、その新任に外国語活動や外国語を全て任せ、教室の隅でテストの採点に余念がない。

 つまり、外国語活動・外国語に対する意識が学校も教育委員会も、ましてや、国も高くはないということである。そのツケは必ず子供たちが背負うことになる。

 では、第5学年及び第6学年では、どうすべきであろうか。まずは、今の5年生及び6年生がどのようなテキスト・教科書を使って英語を学ぶことになるのか。以下をご覧いただきたい。

 これから分かるように、5年生も6年生も、中学校に入学すると、今の学習指導要領に則って、現行の教科書を使い、アルファベットの文字やbe動詞から学ぶことになる。したがって、この2年間は、あまり知識を詰め込んだり、評定を考えた評価に大きく軸足を置いたりしない方がよい。それよりも、中学校との橋渡しとして、「読むこと」や「書くこと」への抵抗感を無くし、「読んでみたい」「書いてみたい」と思う子供たちを育てることである。

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菅正隆

大阪樟蔭女子大学教授

岩手県北上市生まれ。大阪府立高校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官並びに国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て現職。調査官時代には小学校外国語活動の導入、学習指導要領作成等を行う。

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