ミドルリーダーが創るこれからの学校
ミドルリーダーが創るこれからの学校 最終回 ミドルリーダーの経験と成長
トピック教育課題
2019.07.23
ミドルリーダー育成の基本
ミドルリーダーの経験と成長について、「仕事を通した学習」の重要性をふまえて、ミドルリーダーを含むスクールリーダーの育成について問題提起しておきたい(大脇康弘「教育指導職の育成をめぐる動向と論点―スクールリーダーの経験と学習―」東アジア教員養成国際共同研究プロジェクト編『「東アジア的教師」の今』東京学芸大学出版会、2015年)。
(1)スクールリーダーの基礎的能力と適性を持つ人材をプールし、選定する
スクールリーダーを「やりがいと見通し」を持てる職種・職位として教師が認知することが基本であり、そのために教育政策が学校を信頼し支援することが必要不可欠である。特に、校長・教頭の働く姿こそが大きな影響力を持つのである。
(2)スクールリーダーとしての役割意識と学校づくりの視野を持つ
教師の問題関心は一般に狭く、学級を拠点に学年・教科、校務分掌レベルに止まり、学校全体の視野、地域における学校という視点から問題を見つめ取り組むことは少ない。この教師の問題関心を広げ深めるためには、研修、セミナー、講座などの学習機会が重要となる。そこで理論的に問題を見つめると共に、事例演習を通して教育政策担当者やスクールリーダーの確かな実践に触れることは、学習を促す契機となる。
(3)スクールリーダーに必要な専門スキル、対人スキル、認識スキルの基礎を学習する
経験を通した学習がスキルの育成に大きな意味をもつので、個人の能力・適性・キャリアをふまえて、チームをまとめたり、学校づくりを推進する役割を担うことに挑戦させる。それを踏み台にして、能力を高めたり、組織リーダーとしてのやりがいを経験して、スクールリーダーへの関心と意欲を引き出すのである。上司や先輩による助言や支援の体制を整えることが求められる。
(4)若手教員の育成を担当し、人材育成の経験を積む
先輩教員として、若手教員や新任教員を指導し助言することは、それまでの自分の経験を振り返り整理する貴重な機会になり、また、若手教員を指導する経験を通して、自らの対人能力を高めることになる。
(5)教育実践や学校づくり実践を整理し、再構成するための学習機会を設ける
実践中心の日常を離れて、大学院、研究会で本格的な学習を行う機会を設けることが教師の発達に効果的であり、育成支援策が期待される。
このように、スクールリーダーとして成長するための「思い」と「つながり」、「挑戦、振り返り、楽しみ」を経験できる実践でつながる教員集団を創り出すこと、これこそがスクールリーダーが育つ文化的土壌となる。そして、その実践経験を意味づけ、スクールリーダーとしての視野を広げ、能力を高める学習機会が制度化されることを期待したい。連載の第9回で紹介した、大学と教育委員会の連携協力によるスクールリーダー・フォーラムの取組み、ラウンドテーブルの「語り・聴く」活動は参考となる。
Profile
大阪教育大学連合教職大学院教授
大脇康弘
おおわき・やすひろ 教育経営学・教師教育学専攻。大学・教育委員会の連携事業としてスクールリーダー・フォーラム事業を組織し、日本教育経営学会実践研究賞を受賞。『学校をエンパワーメントする評価』『「東アジア的教師」の今』『学校を変える授業を創る』など。