シリーズ・学びを変える新しい学習評価
【新刊紹介】「小学校 外国語」 パフォーマンス評価を重要視する―『シリーズ・学びを変える新しい学習評価 理論・実践編2 各教科等の学びと新しい学習評価』より
授業づくりと評価
2019.12.14
(株)ぎょうせいはこのほど、新しい指導要録にもとづく学習評価が、新学習指導要領の完全実施と同じく、小学校は2020年度、中学校は2021年度スタートすることを受け、『2019年改訂指導要録対応 シリーズ・学びを変える新しい学習評価』(全5巻)を一斉刊行いたしました。
ここでは、特に『シリーズ・学びを変える新しい学習評価 理論・実践編2 各教科等の学びと新しい学習評価』第8章 各教科の学習評価のポイント から内容の一部を抜粋してお届けいたします。(編集部)
第8章 各教科の学習評価のポイント
小学校 外国語 パフォーマンス評価を重要視する
(1)外国語科の指導のポイント
小学校における外国語は、これまで高学年で行われてきた領域としての外国語活動に代わり、教科として初めて導入されるものである。したがって、指導においては、外国語活動を進化、発展させる必要がある。さらに、取り扱う指導領域は、中学年で行われる外国語活動での「聞くこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」に「読むこと」「書くこと」が加えられ、5領域を取り扱うことになる。この点だけに注目すると、指導の困難さを感じるかもしれない。しかし、ここがポイントである。高学年では子どもが最も抵抗を感じる「書くこと」や「読むこと」の導入期であることから、無理をせず、楽しく書く、楽しく読む、そして「英語を書いてみたい」「英語を読んでみたい」と感じさせるような初歩的で情意面に訴えるような指導が求められる。そのために、外国語活動の「聞くこと」や「話すこと」が子どもに楽しく受け入れられ、英語そのものに抵抗感を抱かせずに高学年に進級させることが重要である。このことから、学校内での連携が重要になってくる。外国語活動段階で英語嫌いや苦手意識を持たせると、高学年で気持ちをリセットさせることは難しく、以後、英語への関心を持たせることも、苦手意識を払拭することもできずに、英語嫌いを量産することになる。
そこで、今一度確認したい。外国語活動ではコミュニケーションを図る素地を育て、外国語では基礎を育てることが求められる。知識偏重型の授業や教師主導型の授業ではなく、子ども自らが考える活動や体験を通して、コミュニケーション能力の向上を図ることである。そして、これからの英語教育の図(下)のように、校種ごとに連携を図っていくことが重要になる。
(2)外国語科の学習評価のポイント
外国語は教科となり、評価もこれまでの文章表記から、3段階の評定で表すことになる。これにより保護者や子どもたちの関心もおのずと高くなる。評価に対する期待を裏切らないためにも、普段の指導と一致した評価規準を作成し、様々な活動を通して適切に評価していかなければならない。つまり、評価は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で整理し、どの観点を中心に指導し、それに基づいて、どのような評価をするかといった指導と評価の一体化を常に意識しておく必要がある。また、これまでの中・高等学校の英語教育においては、多くの場合、単語や文法などの知識を問うテスト問題で評価を下していたが、今回の学習指導要領では、思考できる子ども、考えられる子どもを育成するために、「思考・判断・表現」の観点を重視した指導が求められ、そのための言語活動を様々設定して評価していくことが必要になる。また、英語に対する苦手意識を持たせないように、個人内評価(児童一人一人のよい点や可能性、進歩状況についての評価)も加味していくことが大切である。
(3)外国語科の評価活動の工夫
小学校においては、評価を行うために、評価対象となるペーパー試験などを行うことは適切ではない。例えば、単語テストや英作文のテストなどは小学生には不向きである。
そこで、「聞くこと」「話すこと」は、学習指導要領の観点からも、実際に子どもたちに活動させて、英語の表現が使えるようになっているのか、積極的に話そうとしているのかなどを見取っていくことが必要になる。このような活動をパフォーマンス活動と呼び、インタビューテストやスピーチ、ショー・アンド・テル、演劇などがそれに当たる。この活動で子どもたちの言語運用能力を判断したり、向上度や積極性などを評価していく。これをパフォーマンス評価と呼ぶ。パフォーマンス活動は、ペーパー試験のように評価の拠り所にはなるが、評価の証拠としては残らない。ある子どもに、「努力を要する」と評価した場合、保護者に「なぜそのような評価になったのか」と尋ねられた場合にどうするか。そこで、それに対応するため、そして、教師自らが評価の確認をするために、パフォーマンス活動は常にビデオに撮って保存しておくことを勧めたい。また、「聞くこと」においては、リスニングテストも可能である。英語を聞いて適切な内容のイラストを選ぶ問題などは子どもたちの聞く力を容易に判断することができる。
一方、「書くこと」は実際に英語を書かせて判断していくことになるが、過度に正確さばかりを求めると、英語嫌いにさせてしまいかねない。子どもにとって「書くこと」は、他の領域よりもハードルが高いことから、楽しく書く状況を作り出すことが重要である。リズミカルに書かせたり、音楽を流しながら書かせるなどの工夫も必要になる。
もちろん、どの活動においても、教師の励ましや褒めの言葉が能力向上や良い評価につながることは明らかなことである。
(菅 正隆)